61:勃発、骨肉の争い
初投稿です。
――『帝国魔導騎士団・大本部』。
その本拠地たる古城の一室に、黒髪の男が書類を手にして座していた。
「――ふむ……」
彼の名はクロード・フォン・ブラックモア。
数多の魔導騎士たちを束ねる、騎士団長である。
「――これは……これは……」
書類を睨むのは右目のみ。彼の左目は、古き十字傷により潰れていた。
されど、右の眼光を光らせるだけで、あらゆる敵は恐怖に凍り付いてしまうだろう。
鋼のごとく鍛え上げられた彼の長身を前にした瞬間、知性なき獣すらもが“戦えば命はない”と悟り身を引くだろう。
そう――彼こそは元最強の騎士。
現在は加齢により最強の座は『白刃のアイリス』に譲ったものの、それでも圧倒的な実戦経験からなる戦闘技術は、他の追随を許さないだろう。
まさに英傑。歴戦の勇者。
老いてなお強く、逞しく。
そして規律を重んじる誠実ささえも併せ持ったこの男は、あらゆる騎士から尊敬を集める立場にあった。
「――むぅぅ……」
そんな男は、今。
英雄・クロウの人相絵の描かれた書類を見て、一人唸っていた。
なぜなら……。
「――クロウ・タイタス、十七歳……!(やッべぇぇえええええええええええええええッ!!!!!!?!?!?!!?!? コイツの顔立ちッ、十七年前に遠征先でワンナイト決めた女の子とソックリじゃぁあああああああああんッッッ!?!?!?!?!)」
……ここに来て、まさかの隠し子問題が発覚したのである――!
「――ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……!?(えええええええええええええええええええええええッッッ!?!?!? しかも黒髪って俺と同じだしッ、これどう考えても俺の子じゃぁんんんんんんんんんんッッッ!?!?!?!?)」
彫像のような顔付きのままガッタンガッタン震えるブラックモア。
ちなみにコイツ、既婚者で子持ち。しかも一代武家貴族の当主である。
そんな男が――さらに言えば『規律を重んじる黒鋼の騎士』と讃えられてきた彼が、“実は出張先でイイ感じの雰囲気になった村娘に『下半身の黒鋼』をブチ込んじゃいました♡”とバレれば、どうなるか。
「――あわわわわわわわ……!(おッ、終わりだぁぁああああー------ッ!? 俺ッ、武家貴族に生まれてから五十年近く頑張り続けてきたのにッッッ!!! いつもキリッッッとした顔して、遊びたい欲とかスケベ心とか周囲に隠してきたのにぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!?!?!?)」
本当にあの時は玉々がムラムラ――もとい、たまたまムラムラしてただけなんだ、凛々しい女性でたまたまドストライクだったんだと、ブラックモアは誰にともなく内心で言い訳する。
もちろんそんなことをしても無駄だ。周囲にバレる危険が消え去るわけがなかった。
「――うぅぅううう……!(しかも『クロウ』ってオイ……! 明らかに俺の『クロード』の名前意識してんじゃんッ!? あの時の娘さんめちゃくちゃ俺のこと好きじゃん!? うわぁっ正直嬉しいわありがとうっ――って礼言ってる場合じゃねえ! 俺と同じ黒髪だし目元は俺に似てキツい感じだし、勘の良いヤツにはバレるよコレッ!? あーどーするってばよ……!? もしも対面することになったら……!)」
血の繋がりのある相手だ。しかもクロウは龍を討つほどの騎士であるため、当然直感力にも優れているだろう。
となれば。もしも顔を合わせることになったら。
「――ぬんッッッ!!!!!!!(バレてしまうかもしれない! 俺がッ!!!!! 父なのだとッ!!!!!!!!!)」
……頭を抱えるブラックモア。
万が一にも会わないよう、仮病を使って引きこもるか――とも考えるが、今は国が大変な時期だ。自分勝手な理由で職場を離れるわけにはいかないと、浮気チ〇ポしたくせに無駄に善良な精神がその選択を阻んでしまう。
「――ぬぬぬぬぬ……!(ど~する~!? どうにか彼と会わないようにするには……!?)」
かくしてブラックモアが悩んでいた――その時。
『アポも取らず失礼しますっ! 二級騎士の、ヴィータ・フォン・カームブルです!』
扉の外から可愛らしい少女の声が。
「――ぬ!(ヴィータ……ああ、ロリなのにおっぱいが大きいあの! つい反応しそうになっちゃうんだよなぁ~手を出したらアウトなのに!)」
(クソみたいなことを考えながら)姿勢を正すブラックモア。
そうして彼は咳ばらいを一つすると、すぐさま真面目な『黒鋼の騎士』モードに入った。
そして、
「――うむ、入るがよい」
キリッッッとした顔で威厳たっぷりボイスで招き入れる。
はて、一体ヴィータ嬢は何の用なのか。
サインをもらいに来たんだったらバリバリ書いちゃうんだが、と思っていると。
「では入らせていただきます! ――さぁ、クロウさんも」
「――ぬんッッッ!?(ブッッッッッ!?!?!?!?!?!?!?)」
……ヴィータに続いて入室してきたのは、なんと例のクロウ・タイタスだった……!
ついさっきまで“会ったらヤベーよなー……”と考えていた存在の登場に、ブラックモアは失神しそうになってしまう。
なお。
「失礼します。六級騎士、クロウ・タイタスです(ってうっわぁああああ!? これが団長ッ!? なんか目がクワッとしてるし『ぬんッ』とか叫んだし、怖そうなオッサンだってばよぉおおおおお!!! クロウくん厳しいオトナ苦手~!!!!!!)」
……息子のクロウ(※直感力:最低ランク)は、彼が父だと一切気付かず“怒られないよういつもよりキリッとしよ!”程度のことしか考えてない模様。アホである。
かくして、
「――お前が、英雄・クロウか……(ひぇえええええッ!? めちゃくちゃキレ者な顔付きしてるよぉ~!? 絶対直感力SSSSSランクだー! こ、こうなったらバレないよう、いつもより厳しめな表情して顔の印象変えよ……!)」
「アナタが、ブラックモア騎士団長殿ですか……(ひぇえええええッ!? 鬼みたいな表情してくるよこの人ッ!? 俺が英雄とか呼ばれてるから『調子に乗るなよ』って怒ってるのかな!? ならもっとキリリッとした表情して真面目アピールしよ!)」
「――ほう、凄まじいオーラだ……(ひぇえええええッ!? 顔付きがもっと鋭くなったよッ!? これやっぱり勘付いてる感じ!? う、うぉおおおもっと表情引き締めるぞ俺ぇえええー---ッッッ!!!!!!)」
「アナタこそ、恐ろしいほど凄まじい……(ひぇええええええッ!? もっと表情ヤバくなったよぉおおおおおッ!? こ、こうなったらさらに全力のキリリッ顔でッ!!!!!)」
以下、勘違いから顔面険しさ無限上昇ループを始める二人。アホである。
そんなゴミすぎる内情も知らず、側に立っていたヴィータは腰を抜かして「二人ともなんという圧力ッ!? これが、現代の英雄と古き勇者の対面の場……ッ!?」と勘違いしている模様。
「――ともかく、よろしく頼むぞクロウよ……(こんな厳しそうな子供に親バレしたくねぇ~!)」
「えぇ……こちらこそお願いします、団長(こんな厳しそうなオッサンに怒られたくねぇ~!)」
こうしてヴィータの家の問題を語り合いながら、カス親子の無駄すぎる心理戦が始まったのだった……!
ここまでありがとうございました!
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』
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