【96本目】赤い闇-スターリンの冷たい大地で-(2019年・ポーランド・ウクライナ・英)
バーナード・ショーなんかも映像の世紀で「ソ連では誰もが友人でいられる!この地は希望の地!」とか言ってたなぁ……まあ同番組ではその直後に強制労働の映像が流れるわけだけど。
【感想】
あまりの衝撃作だったので緊急レビューです。
ちなみに初上映日は8月14日ですが19日に鑑賞しても余裕で埋まってました(ソーシャルディスタンスモードとはいえ)
1970年代の【大統領の陰謀】に始まり、【ペンタゴン・ペーパーズ-最高機密文書-】や【スポットライト-世紀のスクープ-】のような、闇に包まれた壮絶な真実をつかむために報道関係者が悪戦苦闘して報道に持ち込む、というたぐいの映画が定期的に上映され、話題となりますね。
賛否両論あるものの我が国の【新聞記者】もこの類でしょう。
ですが時として、記者たちが上記の映画の主人公たちのように真実を明かそうとしても、理解されることなく終わるという事例も残念ながら存在するようです。
その事実を明らかにした映画こそ、この【赤い闇】であるといえます。
舞台は1930年代、つまり恐慌下のヨーロッパ。
英国記者の主人公は、世界経済が逼迫した状況下でも勢いを失わないソ連経済に秘められた秘密を探ろうと、単身ソ連へと赴きます。
そこで発見したとてつもない闇を目撃してしまった主人公が、連合国に向けてソ連経済の欺瞞を明かそうとする、というのがストーリーラインになっています。
まあ米英とソ連は後の大戦で連合国として協力することになるので、明るい結末にならない、というのは勘のいいひとならあらすじ見た時点で予測できるのですが、中盤以降の展開はひたすら陰鬱です。ハリウッド的な円満解決なんて兆しすら見せてくれない、主人公の末路もバッドエンドそのものでただただどんよりさせられる映画です。
ただこの映画のキモは、そういう八方塞がりな状況であっても主人公が希望を捨てずにもがけるだけもがこうとしていた、その姿勢にあると思ってるんですよね。左遷されようが、周囲から笑われようが、親ソ派のピュリッツァー受賞記者が大出世しようが、くじけることはあっても終盤までソ連の闇を明かそうとした姿勢こそ、この映画の真の見どころだと思います。
陰鬱だけど、ただそれだけの映画だとは思ってほしくない、というのが個人的な意見です。
主人公の努力は直接報われたとは言い難いものの、主人公と面識のあったある作家に影響を与える、という形で後世へと受け継がれます(物語もその作家のモノローグ、というていで進む)。その作家はSF好きなら誰もが知っている超有名作家であり、この作家は劇中で主人公の活動に影響を受けた結果、彼の代表作にしてディストピア小説の傑作を紡ぎ出します。主人公の勝ち目のない戦いが、思わぬ形で実を結ぶことになる物語、とも言えるでしょう。
エンディングで【ホドロモール(1930年代に起こったウクライナの飢饉)で死亡した数百万の人々に捧ぐ】という字幕が流れますけど、僕には真実を伝えようとした結果不幸な運命をたどった数々のジャーナリストたちに捧げられた映画でもあるな、と思えました。
【好きなシーン】
ホラー映画一歩手前じゃないですかあのユーゾフカ(スターリノ)の光景。
気が付いたら無理やり働かされてるわ、子供から盗難に合うわ、入った家屋で老夫婦が死んでるわ、樹皮で飢えをしのぐわ……序盤だけでもトラウマ級の映像が続きます。
でもって極めつけに子供のいる家屋に入ったシーン。
お料理を振舞われた主人公が
「この肉はどこから?」と質問したところ
「お兄ちゃんよ」と要領を得ない回答が返ってきて、
「どういうこと? お兄さんは猟師なの?」と聞いても今一つ真相がつかめない、という状況でとりあえず外出てみたら、成人男性らしき死体が転がってて全部察する、主人公吐き散らかして出ていく……という壮絶さ。見る人によっては一生実話映画が見れなくなるレベルのエグイシーンだったといえます。
こういう描写があるからこそ、主人公がその闇を祖国で必死で訴えるその姿にえげつない説得力が生まれるわけでもあるんですが。
あとデュランティは徹頭徹尾悪役として描かれますけど、全裸になってアヘンパーティーやってたことまで暴露されるのは流石にかわいそうにも思いました。政治一切関係ないしw




