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【89本目】ムーラン・ルージュ(2001年・米)

アブサンって外国語だったのか……ずっと水島新司のあの漫画のイメージだった。




【感想】


 【映像の世紀】第1集なんかでもものすごい力込めて振り返られますけど、19世紀末から第一次世界大戦勃発までの時期(いわゆる【ベル・エポック】)までのフランスは、後の時代でものすごくエネルギッシュな時代だった、という振り返られ方をされることがよくあります。


 フランスが帝国主義によって国力を増していた時期であったこと、セザンヌやモネなどの文化人たちが集結していたこと、現代と近代の狭間の時代であること、などが理由として挙げられます。




 その時代のパリを、時代考証などを敢えて無視してエネルギッシュさを強調して描写した映画が、この【ムーラン・ルージュ】です。




 当時のパリで最も有名な娼館の、【狂乱の宴】という言葉がぴったり似合う盛況ぶりを描いたこの映画は、インパクトも絶大だったのか、2001年のアカデミー賞で作品賞を含む8部門にノミネート、うち美術賞と衣装デザイン賞の2部門を受賞しました。




 【ベル・エポック】期のパリはこれ以前これ以後にも何度も映画化されており(最近だとアニメ映画【ディリリとパリの時間旅行】)、娼館ムーラン・ルージュを舞台とした映画も【赤い風車】などがありますが、本作は同時期のパリ市民が持ち合わせていた相反する二つの感情を最大限強調したという点で、個性的な映画だったといえます。




 この映画の前半くらいで、ニコール・キッドマン演じるヒロインのサティーンはマリリン・モンローの【ダイヤモンドは女の親友】を歌うことで、娼婦として【金で愛を売る】人生観を語ります。


 対して、ユアン・マクレガー演じる主人公のクリスチャンは、エルトン・ジョンの【僕の歌は君の歌】を歌うことで、ボヘミアン(自由奔放な芸術家)として【金で買えない愛を求める】人生観を語ります。




 同時期のパリ(ことにムーラン・ルージュのあるモンマルトル周辺)には、正にサティーンのような金こそすべての人生と、クリスチャンのような愛こそすべての人生という全く相反する価値観が、共存していたわけです。


 ラーマン監督は【ロミオとジュリエット】なんかでも、ベタベタな恋愛ドラマを大胆な演出で見せる、という手法を得意とする映画監督ですが、この【ムーラン・ルージュ】も、シナリオだけで言えば格差を超えた恋愛という手垢のつきまくったジャンルです。


 ムーラン・ルージュという狂乱の宴の世界を舞台にして、【世紀の変わり目のパリに存在した二つの価値観】という視点から主人公とヒロインの恋愛を描くことで、このベタベタな恋愛ドラマは、ハイテンションでビビッドな物語へとへんかしているのです。




 そのほか、ビビッドな配色の衣装に包まれたミュージカルシーンは映像だけでも見ごたえがありますが、やはり1900年を舞台にした物語でありながら【サウンド・オブ・ミュージック】に始まり、マリリンモンロー、エルトンジョン、スティング、マドンナ、クイーンなど20世紀の楽曲を使っている、という豪快な時代背景の無視ぶりはいっそ痛快ですね。


 バズ・ラーマン監督によると時代設定を無視して上演当時の流行歌を歌う、というのはミュージカルの最盛期ではよくあることだったそうですが、1900年という20世紀前夜を舞台にしながら、劇中の様々な名曲によって20世紀という時代を振り返ることのできる映画が、2001年の上映、というのが、この映画でも特に洒落の効いた要素と言えます。




【好きなシーン】


  お笑いオタクとしては、M-1グランプリで毎回出囃子として流れるFatboy Slimの【Because we can】は反応せずにはいられませんね。お笑いファンの人ならM-1きっかけでこの映画のタイトルだけ知ってる、って人も多いんじゃないでしょうか?


 カンカンに合わせてカンカンカーン!!って歌ってるだけなのでこれといった歌詞とか内容はない曲なんですが、M-1で流れたときも一瞬で覚えられるような曲なので、この映画の【勢い】みたいなのをまず序盤で見せつけるには最高の一極になっています。


 あとこの時代背景と全く合わない曲が冒頭でBGMとして流れることで、視覚的にも情報量の多いダンスシーンと併せて観客は【あ、リアリティは重視せず誇張表現で描く映画なんだな】と勢いで思えるわけで、そう考えるとM-1のみならずこの映画を象徴する曲といえるかもしれません。




 あと、後半のヒロインの命が風前の灯火となっている事態でオーナーのボーカルでQUEENの【Show must go on】が歌われるシーンは、原曲を知っているからこそ泣けるシーンですね。


 同曲がフレディ・マーキュリーの死ぬ1か月半前にリリースされた楽曲であることを考えると、ヒロインの境遇が当時エイズに侵されながらもこの曲の収録に全力で挑んでくれたフレディと重なるんです……

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