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【87本目】サンライズ(1927年・米)

【感想】


 漫画の神様手塚治虫が【のらくろ】の田川水泡から影響を受けたように、ジャンルのパイオニアと言われる人物でも、若い頃に影響を受けた人物がいます。サスペンス映画の神様、ヒッチコックの場合は、ドイツ出身の映画監督F・W・ムルナウでした。そのムルナウが、1927年にハリウッドでメガホンを取ったドラマ映画が、この【サンライズ】です。


 記念すべき第1回アカデミー賞で芸術作品賞(当時は作品賞とは別)を含めた3部門を受賞した映画でもあります。




 監督を務めたムルナウは、当時ドイツの映画でも流行していた表現主義(これ系映画の有名どころは【カリガリ博士】とか【メトロポリス】とか)を代表する監督の一人です。1922年には【吸血鬼ノスフェラトゥ】(要するにドラキュラ)なんてホラー映画を製作したりもしていますけど、ロケーション撮影とか凝ったカメラワークとかで、当時のハリウッド映画とは全く異なる技法の映画を数多く世に出しています。




 当時としては画期的すぎるカメラワークやサイレントだからこそ真に迫った役者の演技に息をのむこと請け合いの映画ですけど、ただ気を付けておいてほしいのは、序盤・中盤・終盤で全く別の映画になっています。




 序盤でいかにも後のヒッチコック映画でありそうな愛憎が絡んでの殺人が行われて、うわぁ、サイレント映画の時代にこのストーリーは攻めてるなぁ!とか思いながら見てたんです。




 ただなぜか中盤に入って、ラブラブカップルのイチャイチャデートムービーが始まるんですよねw別にそこだけでも当時の都会の風俗みたいなのが読み取れて楽しいんですが、なんというか序盤を考えるとあまりにもテンションが違い過ぎて、初めて見た人は面食らうかもしれません。




 そういった気分がジェットコースターになるようなあれこれを乗り越えて、終盤では主人公の夫婦に生死にかかわる試練が起こりながらもなんとか幸せなハッピーエンドへと着地していきますが、序盤と中盤で尋常じゃない作風の変化を見せておきながら、ラストはスッキリした終わり方へと帰結していくという、エンターテイメント的にも完成度の高い一本ですね。古い作品ですが、今見ても十分楽しめると思います。




 ただ序盤が暗いことを考えると、顎のヒゲもまったく剃ってなくて明らかに精神的に不安定そうな夫のキャラ造型があまりにもリアルで秀逸ですね。そう考えると中盤のデートムービーでやや唐突に思える散髪屋でヒゲを剃るシーンも、不安定な精神からの脱却、という意味が込められているのかもしれない。




【好きなシーン】


 表現主義を代表する監督なだけあって、いろいろな場所で視覚的におっ?と思わせる視覚効果がちりばめられていますね。


 ただやはりヒッチコックが影響を受けただけあって、精神が不安定な男性の想像が映像として具現化しているところで気合が入った映像表現が見られますね。とくに主人公夫婦の夫が、不倫相手に妻の殺害を持ち掛けられた時の一瞬だけ映る、妻をボートから突き落として溺れ死なせるイメージ映像や、街から来た不倫相手に「Come to the city!!」(字幕でめちゃくちゃ強調される)と誘惑されるときに流れる喧噪的な街のイメージなどが印象的です。




 あと地味に好きなのが、不仲だった夫婦が偶然見知らぬ人の結婚式が行われている教会に入り、神父の新郎に対する言葉に夫が涙を流して改心のきっかけとするシーンですね。人間、どんなところでどんな人に影響を与えているかが、本人にもわからない時だってあるんだ……

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