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【84本目】28日後……(2002年・英)

カクヨムに上げたときは緊急事態宣言始まったくらいの時でした。

【感想】


 都会なのに人影のほぼない写真が流れてきますね、最近は特に。


 この映画の序盤のあの風景を思い出した方も多いでしょう。


 ということで【トレインスポッティング】【スラムドッグ$ミリオネア】のダニー・ボイル監督によるこのゾンビ映画をレビューしていきます。


 若干不謹慎かもしれないけど、まあ現実にゾンビが出てきたわけではないですし。




 ゾンビ映画と言えば、死んだ目のゾンビたちが群れを成して襲い掛かってくるイメージがありますけど、この映画で描かれるのはゾンビのパンデミックが起きた【後】の世界です。




 日本では今年公開された映画【1917】なんかでは、第一次大戦の戦闘直後の様子を映すことで、直接戦闘シーンを描かずとも【あ、恐ろしいことが起こったんだな】と思わせる、という手法を取っていましたが、この映画の冒頭での謎の感染症(原因が動物保護団体ってのがまた……w)と、序盤に映される人っ子一人いない、ただゴミが舞い散るだけのロンドンを観れば、直接ゾンビの惨劇を描かなくても(むしろ、だからこそ)観客たちは惨劇のイメージを喚起させられるつくりになっています。


 同年に公開されたゾンビ映画【バイオハザード】が予算3300万ドルなのにたいして【28日後……】は800万ドルと低予算ですが、正しく低予算という制約を逆に生かした表現方法だと思います。


 あの無人の状況によって、ただゾンビがどこから襲ってくるかわからない怖さだけではなくて、文明社会にいながら他者と接触できないこと自体の怖さも演出してるんですよね。


 


 でまあゾンビものではありがちですが、映画ではストーリーが進むにつれて、主人公たちの敵がゾンビだけでなく別の人間たちでもあった、という展開へとシフトしていきます。


 終盤では転がり込んだ生き残りの集団がとんでもない闇を抱えた組織であることが明らかとなり、そいつらを倒して逃亡するためにゾンビの力を利用してしまう、と言う敵味方の構図が根底から崩れる展開となります。


 ただこの映画のいいところは、主人公のその行為は生きるためにやむを得ずにやったことであって責められる行為ではない、という論調でストーリーが進むという点です。


 ギャング映画だと人を殺して回った主人公が最後蜂の巣になって死ぬ、なんて展開がありがちですけど、この映画の終盤で主人公は人を殺すものの、そのことで劇中で制裁を受けることなく映画は結末を迎えます。


 ゾンビが跋扈するような状況では、自分たちが生き抜くため、愛する者を守るために他の人間を殺したとしても、決して間違った行為ではないという、この映画なりの優しいメッセージみたいなものが垣間見える脚本になってるのが、すごいこっちまで救われた気分になる映画なんです。




【キャラについて】


 セリーナのスタンスがすっごい好きなんですよね……


 血を浴びて感染が確定した人間なら仲間であっても即撲殺するけど、そんないつ殺し殺されるかわからない関係だからこそ、主人公・ジムやハンナ、フランクとの一瞬一瞬の関係も大事にしている、という立ち位置が。


 で、中盤以降ジムへの感情を自覚しつつも、殺せなくなるからという理由で親密になれない、という葛藤が随所に見られるのもポイントですね。




 後半にウイルスよりも恐ろしい人間の負の側面を描く存在でありながら、自身の暴力衝動ではなく部下たちに救いを与える、という利他的な目的(口実だったかもだけど)で彼らに女性を提供しようとしていたヘンリー少佐の行動理念も、色んな見方ができて面白い部分ですね。




【好きなシーン】


 誰もいないロンドンやジムの両親の決断、中盤のスーパーマーケットでのつかの間の癒しなど細かい点を挙げると枚挙にいとまがないですが、やはり一番印象的だったのはあまりにも突然に訪れたハンナとフランクの別れの場面ですかねー。あんな突然であっけなさすぎる別れで辛うじて「愛してる」の言葉を娘に継げることができたフランクの父性愛は感涙もんです。




 あと水が足りなくなったあげくの「このイギリスで、雨が恋しくなるようなことがあるとは……」というセリフもお国柄が出てて好きです。

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