【81本目】マスク(1994年・米)
実写版【アラジン】でジーニーがこの映画の変身イプキスみたいになるのを期待してた。60点くらいだった。
【感想】
前のレビューでも何回か書いてますが、ここ最近【なりたい自分】と【本当の自分】のギャップを描いた映画について妙に魅かれます(こないだ見た【ふたりのJ・T・リロイ】もそれ関連の映画だった)。
その関係性は映画によって様々です。【トータル・リコール】は記憶を失った男がなろうとしていた【本当の自分】に裏切られる物語であり、【マトリックス】は【なりたい自分=本当の自分だった】という救済を映画の中で与え、【アバター】は【本当の自分(本来の自分)を捨ててでもなりたい自分に変わる】ことの素晴らしさを訴え、そして去年公開された【ロケットマン】は本当の自分を放棄してなりたい自分に突き進んだ挙句精神を病んだ男の物語でした。
観客の欲望を上映時間の間だけ満たすことが映画の魅力の一つである以上、【なりたい自分と本当の自分】という問題はある意味映画誕生以来(下手したらそれ以前)から映画における重要なテーマだったと言えます。
そういう問題を最近ずーっとぼんやり考えてて、「あ、そういやこんな映画あったな」ってふと思って見直したのが、この【マスク】でした。
ジム・キャリーがコメディ俳優としてスターダムにのし上がったきっかけとなったこの映画は、大ヒットの後続編製作、アニメ化、ゲーム化といろんな面で人気を博した映画で、アカデミー視覚効果賞やゴールデングローブ主演男優賞ミュージカル・コメディ部門などの栄誉ある賞にもノミネートされている映画です。
さてこのタイトル、ジム・キャリー演じる主人公がマスクをかぶって変身するから、というだけではなく、社会生活の中で仮面をかぶって生きる人々への暗喩が込められています。
物語の冒頭で主人公・イプキスは不器用さ故に社会の中でうまく仮面をかぶれずに失敗する光景が何度も挿入されます。
そんな彼が、圧倒的なパワーと自分の欲望を思いっきり開放するマスクをかぶって変身するのがこの映画のキモになっています。
物語では仮面をかぶったイプキスがひたすら欲望のままに暴走する映像がひたすらハイテンションで展開されますが、一方で仮面を外した後の彼は仮面をかぶったときの暴走が自分に破滅をもたらすことも語っています。
またヒロイン・ティナ(演:キャメロン・ディアス)は仮面をかぶった自分ではなく、素の自分と向き合ってくれたという理由で、主人公イプキス(変身状態ではなく素)に魅かれます。
最終的にイプキスは素の自分を愛してくれるティナと結ばれ、仮面の力とも決別するという結末で幕を閉じます。
【なりたい自分】を突き詰め過ぎると、暴走しすぎて色々見失うから、【本当の自分】のままで歩んで行こう、そうすればきっと誰かが見てくれる、というテーマの見え隠れした物語で、くしくもれっきとした伝記映画の【ロケットマン】と通ずる要素のある物語でした。
【本当の自分】のままでヒロインと添い遂げるハッピーエンドは人によっては理想論だしご都合主義だ!!と考える方もいるかもしれません。しかし誰もがすぐには【なりたい自分】になれず、エルトン・ジョンほどのスターでも【なりたい自分】を突き詰め過ぎて精神を病むご時世、まずは【本当の自分】と向き合っていくことが幸せへの近道、と訴えてくれる【マスク】のような映画は、ある意味地に足の着いた生き方というか、生きやすい生き方を教えてくれるような気がします。
【キャラについて】
同年公開の【Mr.ダマー】や【エース・ベンチュラ】、あとは【バットマンフォーエバー】のリドラーなんかに比べると、この映画で素のジム・キャリー演じるイプキスはびっくりするぐらい控えめな男性ですね。
逆に仮面かぶっている方が、エースベンチュラやリドラー的なおなじみのハイテンションなジムキャリーって感じ。
ジムは鬱病を患っていた過去もあったりして、根っこはまじめな人なんかな?って思えてくるエピソードも色々ある俳優ですが、彼がよくやるハイテンションな役どころがこの映画の変身時のような仮面をかぶった姿であって、この映画のイプキスこそが素のジム、という風に考えてしまうのは深読みでしょうか?
あとキャメロン・ディアスはこの映画がデビュー作ですけど、この映画ではめちゃくちゃ現実離れした美貌を見せてくれますね。変身したイプキスのアニメーション的な動きが魅力となるこの映画ですが、そのカートゥーンキャラと一緒にジャズダンスを踊っていてもなんら浮くことがないというのが凄い。
【好きなシーン】
目ん玉飛び出すとか、落下してペシャンコとかのカートゥーンアニメ的表現をそのまま実写で再現してるシーン全般が好きですね。
実写世界の中で浮かないようにカートゥーン的アクションをやってのけるCG技術と、それを違和感なく動きや声、表情で演じ切るジム・キャリーの演技力にはただただ脱帽です。
この映画よりちょっと前に実写世界の中でカートゥーンキャラが動き回る【ロジャー・ラビット】なんてのがありましたが、あちらがあくまでアニメーションとして動いていたのに対して(それでも凄かったけど)、こちらは完全にカートゥーンの動きをCGによって三次元の世界に落とし込むことに成功していましたね。
あと2回目見ると、監視カメラ映像でカートゥーン的な動きで金を奪いまくる変身イプキスの映像を刑事が真剣に見ている映像がかなりシュールでしたw




