表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/142

【75本目】ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011年・米)

 オスカー少年とアパート入り口の警備員の距離感滅茶苦茶好きなのは自分だけ?




【感想】


 2011年と言えば我々にとっては311の日でしょうけど、アメリカにとっては911テロから10年の歳月が流れた日でもありました。この年のかの国では9月11日にオバマ大統領夫妻、ブッシュ元大統領夫妻なども出席する追悼セレモニーが行われたり、レディー・ガガがMTVの特番で当時を振り返ったりなんかして、色んな人が色んな形で当時の惨劇を振り返っています。そんな年の年末に公開されたのが、ジョナサン・サフラン・フォアの小説を原作とした、この【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い】です。




 10年と言う歳月は一見長いようでありながら、惨劇のトラウマを癒すには短すぎる歳月でもあります(今やってる【Fukushima50】もそういう批判たまに見る)。


 そういう理由でか、911テロを題材としたこの映画は公開当時大きな賛否を巻き起こしました。しかし2011年のアカデミー賞、放送映画批評家協会賞では作品賞にノミネートされており、一定の評価を得ている作品でもあります。




 さてこの映画、911テロを題材にした、とは言いつつも、911テロのあの旅客機激突やビル倒壊の光景を直接描いたわけではありません。描かれているのは911で父親を失った少年が、父親の残した秘密を探るためにニューヨーク中を旅する物語です。事件自体ではなく事件の前後を映すことで、却って事件の影響を間接的ながら印象的に伝えるスタイルですね。




 【ニュー・シネマ・パラダイス】のラストシーンとかを見ても感じることですが、この映画ではたとえ大切な人が死んだとしても、大切な人が残したものと触れ合えれば、疑似的にとはいえその人に会って会話することができる、というメッセージがテーマの一つとなっています。




 小学生くらいの少年である主人公・オスカーがニューヨーク内の様々なところを行き来し、様々な人々と出会う物語なので、ある種夏休みの自由研究の様相を呈しているのですが、自由研究のようにニューヨークそれ自体を知ろうとしたのではなく、あくまで父親の残した秘密を探すために異常な行動力を見せた結果にすぎません。そのようにして、悪く言えば病的な執着を続けるオスカー少年が、やがて事件を忘れようとしている母親と衝突してしまうことになります。




 結局物語の後半で、オスカーの秘密を巡る旅はあっさりすぎるくらいあっさりした結末を迎えることになります。そのあっさりすぎた結果にオスカーは自暴自棄になりかけますが、その彼の前に、再び母親がもう一人の親として寄り添う、という終盤の場面は、【過去】を失った少年が【現在】と向き合い始める光景のようで目頭を熱くさせられました。


 そんな彼にご褒美が与えられるかのように、棚ぼた的に【過去】が見つかるラストシーンも然り。




【キャラについて】


 上記の通り少年がニューヨークの様々な場所に出歩き、様々な人々と出会うのがこの話のキモとなっているわけですが、上記にも示した通り、それは進んでニューヨークを知ろうとしているのではなく、父親の残した秘密を探ろうとして結果的に出歩いているにすぎません。


 たった一人の父親の秘密を知りたいがためにニューヨークのあちこちを行き来していますが、結果的にたどり着くことになる場所や人々には、むしろオスカーは煩わしく感じているように思えます。


 多種多様な人々が密着して生活しているニューヨーク、そのど真ん中に生きる少年の状況を意味した言葉こそ、【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い】だったのかもしれません。




【好きなシーン】


 中盤でオスカーと間借り人が交わす矛盾語法合戦は、間借り人がその間だけでもオスカー少年の父親代わりになれたことを表していてすごいほっこりさせられる場面です。


 うまく言い表せないですけど、【二人だけで共有する言語】って滅茶苦茶二人だけの絆みたいなのを感じられてすごい自分の性癖(?)に刺さるんですよね(【仮面ライダーフォーゼ】のあの握手も好み)。




 そして鍵の秘密のちっぽけすぎる正体がわかった瞬間のオスカーが、叫びながら疾走していき、しまいに狂ったようにこれまでの自由研究(自由研究じゃないけど)をぶっ壊すシーンはちょっと痛々しくもわかりすぎましたね。


 物語の主人公になったと錯覚していた人間が、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない【つまらない現実】を突きつけられた様を見ているような気がして。




 そしてラストの母子の会話は、オスカーと母親二人だけの会話というだけではなく、お互いがお互いの語る言葉の中に父親を見出してるところが涙腺に来ます。この映画ではあの場面と、ラストシーンのブランコの下のアレが、【ニュー・シネマ・パラダイス】のあのキスシーンに相当するオブジェクトでしたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ