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【74本目】ロード・トゥ・パーディション(2002年・米)

 ベースが子連れ狼らしいんだけど子供が車運転してるのもそういうこと……?




【感想】


 最近公開された【1917】なんかもそうですけど、サム・メンデス監督の手掛ける映画は人間の闇の心理にスポットを当てたどことなく薄暗い雰囲気が魅力となっています。その作風はデビュー作にしてアカデミー作品賞受賞映画、【アメリカン・ビューティー】の頃から変わっていません。


 その中でも特に深い闇を背負った映画こそ、彼の監督第2作である【ロード・トゥ・パーディション】と言えるでしょう。




 一見見落としそうになりますが、タイトルは【ロード・トゥ・パー『テ』ィション】ではなく【ロード・トゥ・パー『デ』ィション】です(自分はガチで10年位間違えてたと思う)。【パーディション(perdition)】は【地獄】を指す英語であり(hellと違い、キリスト教で言う永遠に続く地獄)、もうタイトルからして嫌な予感しかしない映画となっています。




 舞台は恐慌・禁酒法時代のイリノイ州を舞台としており、トム・ハンクス演じる主人公のマイク・サリヴァンはアイルランド系のギャング団のメンバーと、一見ギャング映画としてはベタベタな設定です。しかしベタだからこそ、殺される前に殺す、裏切られる前に裏切る世界の中で、どんどん心をすり減らしていく一人の殺し屋の物語が、この映画ではド直球で展開されています。


 マフィアとしての人生を地獄に例える映画はこれ以外にも香港映画【インファナル・アフェア】(原題は【無間道】=無間地獄)なんかがあったりしますが、あちらが潜伏警官と潜伏マフィアという搦め手で描いているのに対して、こちらはド直球でマフィアに生きる人間の地獄を描いております。




 ただこの映画のキモは、マイクが、息子のマイケルを自分と同じ地獄に落とすことを必死で防いだことにあるでしょう。妻と次男を殺され、唯一の肉親である長男を守るためにマフィア人生に付き合わせる、という正に【子連れ狼】的なストーリーがこの映画の特徴ですが、主人公は結局ラストまで地獄のマフィア人生から抜け出すことはできませんでした。しかし自分が泥をかぶってでも、息子が地獄の人生を歩むことを最後まで防ぎ切ったその愛情にこそ、【ロード・トゥ・パーディション】が単なるギャング映画ではない所以があるといっていいと思います。




 また主人公親子とは全く別の場所で、個人の感情とは関係なくマフィアの流儀を貫かねばならないボスの哀愁が描かれているのもポイントです。この映画ではポール・ニューマン演じる主人公の元親分が、実の息子を守るために息子同然の存在だったマイクを殺す、と言う決断を、とても苦悩しながら実行します。【ゴッドファーザーpart2】なんかでもマフィアのために兄弟すら切り捨てるマイケル・コルレオーネのボスとしての冷徹さが哀愁たっぷりに描かれてたりしますが、義理人情に厚い人間ってのは敵味方関係なくマフィアの世界では地獄の道を歩まざるを得ないんだな……って思わされます。




【キャラについて】


 主人公・マイク・サリヴァンは何人も殺めてきた腕利きの殺し屋(吹き替えじゃ江原さんの演技もいつも以上にドス利いてる)で、同時に家庭では優しい父親、というギャング映画ではベタな設定のキャラですが、息子には自分の素性を知られてる、というその一点で単なるベタなギャングとは一線を画しています。


 だから殺されないための指示を的確に下すし、いざって時に逃げるために車の運転を教えたりもする。息子を大事に思っているからこそ、甘やかさずに育ててるんですよね。




 一方で、敵役となるルーニー親子がサリヴァン親子とは対照的な親子関係なのも印象的です。


 007より全然前のダニエル・クレイグ演じるドラ息子のコナーはギャング団内では完全に足手まといにしかなってないんですが、その息子をそれでも親として守り抜く、言ってしまうと完全に甘やかしているジョン・ルーニーの姿勢は、マイクの息子に対するそれと綺麗なコントラストになっています。


 そういう意味では【アントマン】なんかと同じで、様々な親子関係(血縁、疑似問わず)を描くことで、親子という概念の複雑さを描写した映画と言えるのかもしれません。




 あとは、ジュード・ロウ演じるマグワイアのギャング的な冷酷さとはあんまり関係ないシリアルキラーぶりも好きです。




【好きなシーン】


 主人公の息子・マイケルは、ついこないだまで弟と雪合戦したり学校でケンカしてたような子供だったのに、家族を殺されて実はマフィアだった父親と逃亡人生をすることになるんですが、親子で家出した夜に、雪の積もった庭に自転車が雑に捨ておかれてたシーンは、早すぎる少年時代との決別って感じで観てて切なかったですね。


 息子のマイケルはその後のシーンではローティーンとは思えない肝の据わり方をしてるんですが、あの自転車と一緒に少年としての自分を家に捨て置いてきたんだな……ってのが丸わかりで哀愁漂うんです。


 【レオン】のマチルダも幼女なのに色気すごかったしな。




 後、マイケルが自動車運転の仕方をモタモタしながら覚えるくだりや、銀行強盗のくだり(特にマイケルの自動車がマイクを通り過ぎてって「おい行き過ぎ行き過ぎ!」ってなるとこw)が結構ユーモアたっぷりに描写されてて、あそこは重たく暗い映画の中では数少ない癒しでしたね。


 こういう鬱映画の中盤でこういうパートがあると、「あ、この後辛いこと起きるんだな」って感づいてしまって却って身構えてしまうんだけどw

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