【58本目】スパイダーマン:スパイダーバース(2018年・米)
同じスパイダー女子のグウェンが親切心から「あなた折角かわいいんだし、もうちょっと髪の毛整えたら?」と言って、ペニーも「考えとくよ、ありがと」と笑って答えるけど、実はペニーには亡き父親にボサボサ髪がかわいいと言われた過去があり、彼女にとって髪型を変えるのは父親との思い出を消すことを意味する、という秘密があった回
【感想】
僕の好きな特撮ヒーローの主題歌に、「心をすりむいても、おびえないで。もう君は、一人じゃない」「誰もが皆、ヒーローになれるよ。」という歌詞があるんです。もうかなり古い作品の歌ですが、どんな人間でもヒーローになれる素質と資格を持っている、というメッセージが込められた歌で、僕は今でもこの歌に勇気づけられることが多いです。
去年の春に公開された【スパイダーマン:スパイダーバース】は、正にその歌と同じメッセージと言うか、ソウルの込められた映画だったといっていいと思います。
2018年のアカデミー賞・長編アニメ映画部門を受賞(ディズニー以外の受賞は7年ぶり)したほか、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞のアニメ映画部門でも受賞、アニメ版アカデミー賞ことアニー賞でも長編作品賞を含めた8部門を受賞したオバケアニメ映画です。2018年はディズニーでも【シュガーラッシュ:オンライン】や【インクレディブル・ファミリー】などの人気作が上映されましたが、この年ばかりはディズニーもこの映画を製作したソニーらに及ばなかった、といっていいでしょう。
自分はスパイダーマンと言えばサム・ライミの【スパイダーマン】(これの広告でこのヒーローの存在知った気がする)からMCUの【スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム】までの実写映画と、あとちょっと東映版をかじった程度なので、アメコミとかアニメとかを観てきた人ほどスパイダーマンに触れてるわけじゃないんですけど、それでもスパイダーマン、という半世紀以上の歴史を持つ人気シリーズの集大成みたいなものを見せてくれた、という気分になりましたね。
日頃ピクサーのCGアニメ映画を観慣れている自分からしたら、とにかく背景にある哲学からして全く異なる絵面で衝撃シーンの連続でしたよ。その絵面で、一人の少年が出会いや別れを通じて自分だけの個性を見つけていく、というストーリーを見せつけられたらそりゃもうこちらとしてはまいりましたって感じです。
でも何より、主人公・マイルズの仲間との出会いを描くストーリーラインこそ、最も自分が心に響いた要素でした。
信頼できる大人の人は良く自分に自信が持てない人に対して、【新しい人間関係を築いて、新しい価値観に触れればいい】っていうアドバイスをしてくれるんですが、ちょっとした偶然で能力を持った普通の少年が、違う世界から来たヒーローとの出会いを経て自分なりに成長していくシナリオは、明らかに新しい世界を見、新しい仲間と触れ合い、新しい価値観を内包することで、自己を確立し、肯定していく若者の成長過程のメタファですよね。
そう考えるとなんか、自分が中学生くらいの頃にこの映画に出会いたかった、という気もしてきます。
【キャラについて】
序盤のマイルズが自分とダブるんですよね……自分も小学校卒業後に友達のいる地方の中学校じゃなくて中高一貫の進学校に入学した結果、友達らしい友達のいない青春時代をすごしたので。マイルズは最終的に自分なりのスパイダーマンという自己を確立しますけど、彼を見ていると自分も高校生くらいから映画見まくってレビュー書きまくってりゃよかったなーとか思います。今映画見まくれてるからそれでいいのかもだけど。
マイルズがかけだしヒーローの頃はおもちゃのスパイダーマンスーツを着用し、アーロンおじさんとの別れなどを乗り越えた後でオリジナルの黒いスーツを着用するさまは、一人の若者が他人との模倣を経て唯一無二の個性を確立する、という上記の戸は別の若者の成長過程を象徴しているようで爽快ですね。そうだよな、なりたい自分になれって言われて何になりたいかわからなかったら、とりあえず憧れの人を真似すりゃいいんだよなw
また、【誰でもみんなヒーローになれる】というテーマを掲げた作品なので、主要メンバー全員が一人だけでも主役張れそうな個性の強いメンバーばかりなのが印象強いですね。
また出てくるスパイダーマンが、
【元祖スパイダーマン→おっさんのスパイダーマン→女の子のスパイダーマン→色の無いスパイダーマン→ロボットのスパイダーマンとその親友の女子高生→スパイダーマンな豚】
と、話を追うにつれて個性が豊かになるというか、尖ってくるのも、飽きさせない絵面作りって感じで見ていて楽しいです。それらの濃いスパイダーマンたちとの出会いを経て、マイルズが自分なりのスパイダーマン(書いててゲシュタルト崩壊しそう)になる、という流れが美しすぎるんですよ。
【好きなシーン】
劇場とブルーレイとで2回見て、より印象的なのは、メイおばさんの基地で質問攻めにあったマイルズが陰口(?)叩かれて自信喪失するくだりですかね……
映画好きの自分は他の映画ファンの人と自分を比べて、【自分はこの人たちほど映画に詳しくない……】と落ち込んでしまう時が少なくないんですよ。だから仲間に出会ってまずやることが、仲間がいたことに喜ぶとかじゃなくて、【優秀な仲間と自分を比べて落ち込む】だったのが、内気な少年の描写としてあまりにもリアルというか、他人事に思えなすぎました。
そしてラストの【スタン・リー、スティーブ・ディッコへ。ありがとう、一人じゃないと教えてくれて。】はもう2019年全体でも上位に入るレベルの名カットかもしれません。親愛なる隣人ことスパイダーマンを故スタン・リー御大がどういうメッセージを込めてクリエイトしたのかを、一文で表した名文だと思います。




