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【27本目】クイズ・ショウ(1994年・米)

【感想】


 1994年の映画を対象とした第67回アカデミー賞は、歴代でも有数の激戦だったとたまに言われます。作品賞候補に【パルプ・フィクション】と【ショーシャンクの空に】があり、見事作品賞を受賞したのが【フォレスト・ガンプ】とくれば、その激戦ぶりもうかがえるというものです。それらの現代にも語り継がれる傑作と並んで作品賞候補に選出された映画が、名優ロバート・レッドフォードが監督を手掛けた【クイズ・ショウ】です。




 この映画には、【パルプ・フィクション】のようなインパクト絶大のバイオレンスもなければ、【ショーシャンクの空に】のように主人公が理不尽な暴力を受ける悲劇もありません。ただかつてアメリカのお茶の間で大人気を博したクイズ番組【21(トゥエンティーワン)】をテーマとしたのが、この映画です。ギャングの世界や刑務所の世界など映画映えしそうな非日常そのものな世界ではなく、一般人になじみのある【クイズ番組】をテーマにしている、という点で、こじらせ映画オタクとしては何か、反応するものがあるんですよね。




 この映画のテーマは【クイズ番組】であり、その番組の【ヤラセ問題】なわけですが、よく見るとその裏にある50年代アメリカの社会構造が垣間見えてくるところがミソです。


 というのは作品を通してみてみると、とにかく主人公の一人・ハービー(演:ジョン・タトゥーロ)の、もう一人の主人公・チャールズ・ヴァン=ドーレン(演:レイフ・ファインズ)を比べるととにかくいろんな格差が浮き彫りになってくるんです。


 物語の核となるクイズ番組のヤラセ問題も、そもそもパッとしないユダヤ系で労働者階級のハービーがクイズ王だと視聴率が上がらなかったことから始まる問題なわけで。一方上流階級でイケメン白人のチャールズがクイズ王になったところ視聴率爆上がりでスポンサーも大儲け、チャールズは一躍お茶の間のトップスターに。ハービーとチャールズのあまりにも違い過ぎるテレビ局と世間の扱いには、人種格差だの階級格差だのルックス格差だののいろんな不平等が透けて見えてきます。


 (ハービーのチャールズに対する被害妄想丸出しの嫉妬が完全にクラスの陽キャに対する陰キャのそれなのが、笑えると同時に身に覚えがありすぎてやりきれなくなってきます……w)




 映画評論家の川本三郎氏は「アメリカの黄金時代と言われた50年代にも存在した階層対立は、60年代に入って公民権運動やカウンターカルチャーという形で爆発する。【クイズ・ショウ】はその予兆を描いた映画」と語っています。


 この映画と同年にアカデミー作品賞を受賞した【フォレスト・ガンプ】は、アメリカの50年代~80年代を振り返って「20世紀は色々なことがあったけど、みんな頑張ってきたよね!」と20世紀末のアメリカ人の肩を優しくたたいてあげる映画でした。


 それに対して【クイズ・ショウ】は、黄金時代だったはずの50年代を描くことで、ノスタルジーにふける20世紀末のアメリカ人に「みんないい時代だって言うけど、そんなことなかっただろ!? こうこうこういう問題だって存在しただろ!?」と冷や水を浴びせる映画だった、と言えるのかもしれません。


 


 テーマがえげつなく地味なのと、決して後味の良い終わり方ではなかったために公開当時の興行収入は決して芳しい結果とは言えなませんでしたが、上記の通りアカデミー作品賞(他3部門)にノミネートされたうえ、同年のニューヨーク映画批評家協会賞(社会派映画が評価されやすい映画賞)の作品賞にも選ばれました。なのでライトな映画ファンを前にしてちょっと通ぶりたい時にはこの映画がおススメかもしれません。




【好きなシーン】


 もうとにかく冒頭のシーンが大・大・大好きでね……銀行の金庫がものものしく開いて、何か政府とか大企業がかかわる一大事業が始まるのかな?みたいなサスペンス映画的空気で始まったかと思ったら、出されたのはクイズの問題用紙で、向かう先はテレビ局という、意外な情景が一気にタイトルの【クイズ・ショウ】へと収束していくその見事さ。ここで一気に、名作を確信したかもしれません。




 あとラストのすべてを打ち明けたヴァン・ドーレンを前にしてマスコミが殺到するところ、まあ社会派ドラマ系映画ではよくある光景かもしれないけど、この映画であのオチだと【一般人がどんな選択しようが結局勝利するのはメディア】という救いようのない構図を描写しているようにも見えるのが重いです。




 でも何といっても、エンドクレジットで映ったあの人たちには背筋が凍りましたね……。諸悪の根源は回答者でもテレビ局でもなく……、っていうことが示唆された映像ですよね、アレ。

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