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【119本目】テルアビブ・オン・ファイア(2018年・イスラエル)

 最近上映されてるイスラエル映画【靴ひも】も見ておきたい。




【感想】


 【サウスパーク】とかで当然のようにビン・ラディンとか金正日がネタにされていたのを見て、おったまげた方は多いのではないでしょうか。


 不謹慎文化の強い日本ではあまり見られないですけど、海外の映画を見ていると解決困難な政治や社会事情をコメディで笑い飛ばそうというテーマの映画に時として出くわして驚くことがよくあります。




 そういう文化を、一触即発の国で家間関係を孕んでいる国内でやってのけた映画が、2018年の9月にイタリアで初上映されました。


 4回の戦争と2度の武装蜂起が勃発し、90年代の和平合意もほぼ形骸化、日韓で定期的に起こる緊張どころじゃない緊張を孕んでいるイスラエルとパレスチナの国家関係に、笑いの力と映像のダブルミーニングで向き合おうとしたのがこの【テルアビブ・オン・ファイア】なのです。




 物語は住まいはエルサレムだけど、職場はパレスチナ自治区内のTV局にある青年を主人公として始まります。TV局内で主人公は1960年代の中東戦争を描いた人気ドラマ(これの名前が【テルアビブ・オン・ファイア】)現場インターンとして働いていますが、とある日に主人公が出勤退勤時に必ず通る検問所の軍人と知り合う……というところから物語は始まります。


 そのドラマでは恋人のいるアラブ人のヒロインが、スパイとしてイスラエルの軍部に潜入してユダヤ人の将校に接近するという筋立てなのですが、スタッフの一人である主人公に検問官の軍人がスタッフにアイデアを口出しするようになります。ところがこのアイデアがスタッフにウケた結果、主人公は脚本執筆者の一人になります。アラブ人のドラマにユダヤ人の意見が取り入れられたことで、主人公の脚本家活動は図らずもイスラエル・パレスチナの民族問題自体と向き合うことになっていく、というのが、物語の軸となります。


 この映画を手掛けたサメフ・ゾアビ(1975年生まれ)は、映画を通じて中東問題と向き合うためには、敢えてコメディとして作った方が現実に対して正直に向き合える、というスタンスで【テルアビブ・オン・ファイア】に取り組んでいるそうです。




 この映画の主人公は、非モテだし母親と同居だしいかにも自分に自信のない青年として描かれ、物語上でも一回り年上のユダヤ人検問官と、叔父さんのプロデューサー含めたスタッフとの間で板挟みになります(=ユダヤ・アラブの狭間で揺れるパレスチナの若者のメタファ)。その辺の板挟みになりながらの脚本を書いていくさまがユーモアをもって描かれているのが見どころなわけですが、中東戦争のドラマを通して若者に歴史を理解させようとする叔父さんに【歴史が僕たちを助けてくれたのか?】と反論するシーン以降、主人公にも自分の意見を持ち始めます。自分を持ち始めた彼の作った終盤の決断とその実行には、歴史と支配のどちらにも与さない、という制作陣の中東を取り巻く現状への思いが現れていたように思います。




 またTVドラマで国際問題と向き合うことをテーマとした物語ですが、アラブ発祥の料理であるフムスという料理が、主人公と検問官とのやりとりで重要なキーワードとなります。国際問題に立ち向かうために、映像文化だけでなく食文化をも動員しているところに、スタッフの本気が感じられる映画です。


 (実際、反アラブ的なイスラエル人でもフムス好きは多いらしい)




【好きなシーン】


 基本馴染みのない国の映画ってのは歴史・ファンタジー映画よりは現代ドラマ映画の方がその国の【今】【俗】を知ることができるという点で好みなんですが、この映画では自分にとってテレビの向こう側の国でしかなかったイスラエル・パレスチナの情景が高い解像度で見られてすっごい新鮮でした。


 ヘブライ語の看板や、アラブ語で入力ソフト使ってしてる光景とか映っているだけで面白いです。


 アラブ式キスが波紋を呼ぶシーンなどで、そういった【俗】の習慣・社会問題を物語にうまく生かしているところも秀逸。




 ヒロインとイスラエル軍人が結ばれる、という主人公の提案にプロデューサーの叔父さんがありえない例えとして「オスロ合意の第2弾かよ!?」って関西芸人のツッコミみたいな反応を返したシーンも程よいブラックジョークって感じで好きです。

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