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【106本目】鬼手(2019年・韓)

 仲介者役の人すっぴんのコウメ太夫に似すぎだろ




【感想】


 つい最近ミニシアターで見てバチバチに面白かった映画でいきます。


 【パラサイト】や【神と共に】的なあっと驚く脚本で見せてくれることが多い韓国映画にしては珍しく、ド直球で王道を突き進む娯楽映画でした。


 【神の一手】の続編というていの映画ですが、前作が存在したという面影を全く感じさせないレベルで一本の作品として独立した脚本だったので、見ていなくても楽しめました。


 さてどういう映画かというと、幼い頃に両親を失い、姉も失った天涯孤独の少年が、過酷な修行を経て囲碁の名手となり、体や命を賭ける賭け囲碁によって自分を不幸にした人々に復讐していく、というのがストーリーラインです。


 【ヒカルの碁】+【カイジ】って感じの世界観ですね。




 まあつまり囲碁勝負を題材にした映画なんですけど、囲碁知らなくても囲碁素人目線でリアクションしてくれるキャラがいるので全く問題ないというか、個人的見解ですけど囲碁知らない方が楽しめるんじゃないかと思っています。


 でなきゃ流石に盤面を5秒で暗記する、手を口頭で言いながらの対局で勝つまで暗闇生活、血で滲んだ指で譜面を書いて考える、といった具合の人権無視スポ根訓練なんて見ても興味より違和感の方が勝ってしまうと思いますんで。




 まあそんな感じで、【カイジ】というか【男塾】とか【刃牙】かよ、って思わせてくれるような超人囲碁バトル(デスゲーム)を圧倒的な絵力とアングル、音響で魅せてくれるのがこの映画の見どころです。逆に言うとそれらの漫画が好きな人にはこの映画超おすすめです。


 まあ要するにリアルだとあり得ない設定の連続なので漫画やアニメでやる方が適当なのでは?と思わせる作風なんですが、そのありえない設定をノワール仕立ての演出や誇張しすぎとすら言える鬼気迫る演技で大真面目に見せてくれるので、半ば力技でこちらも没入させられる【強さ】みたいなものがあるんです。




 また何より、キャラクターの相関図が【主人公】【ラスボス】【師匠】【師匠の仇】【ライバル】【仲介役】といった風にびっくりするぐらい単純で、脚本に頭を一切使う必要がなかったのも長所の一つです。


 映画の登場人物って大体序盤だけでは設定しかわからなくて、物語上の役割までは読めないことが多いんですけど(だから後半で【ラスボスと見せかけていい人だった】【仲間と見せかけて黒幕だった】みたいな裏切りが起こる)、この映画の場合はすべてのキャラクターが最初にこちらが予想した通りのままに物語上の役割を全うしてくれることに痛快さがありました。


 絵力に全振りする分脚本は一切の複雑さをそぎ落としてる、とでも言いますか。


 


【好きなシーン】


 王道直球復讐劇ながら細かいシーンで編集の妙技が冴えてるんですよねこの映画。


 序盤の少年期主人公の家出で「あれ?主人公はお姉さんほっぽって家出したの?」と思わせた後で、後の回想で「実は囲碁名人に辱められて自殺してました」という事実が明らかになったり。


「『機械になれ』だなんて言ってる人をよく師匠と思えたな……」と思わせた後後半の回想で「すまん、お前は人間でいい」と優しい言葉をかけていたことが明らかになる、といった感じで。


 そうやって情報を小出しにすることで観客に微妙な違和感を覚えさせ、映画の展開自体に興味を持たせる、という制作陣の手腕が光る映画なんです。




 後グィスが孤独な生き地獄を一人孤独に突き進む主人公でありながら、なんだかんだ言って仕事仲間のトンを見捨てなかったり、命を賭ける覚悟の決まらなかった雑草の命を救ったりと、根っこのところで師匠のように悪人にはなりきれないところも好印象でした。

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