第3話
DSTD(異空間移転装置)を使えば使う程、雄馬の寿命が縮んでいくことを知っても尚、その場にいる誰にもどうすることができない現状、仲田の提案に頼る他なくなってしまった研究者達。その仲田の提案とは一体どのようなものなのか?!
俺は、今とある星の上に立っている。不思議なことに、宇宙服などを身にまとっているわけでもないのに、普通に歩き、普通に呼吸ができている。
仲田と神菜も一緒だ。なぜこの場所にいるのかというと、数日前に仲田が提案した得策を行う為の簡単な実験を行っているからだ。
一遡ること数日前一
仲田が実験の内容について話をした。
「まだ俺達の時代には、マキシムさん達のこの時代にあるような宇宙船はないです。今更なお願いなんですが、宇宙船をこちらの時代に送っていただけないでしょうか?」
「すまん、それは、この時代ならばできないこともないんだが、俺達だけの技術ではできない、政府の力も借りればできないこともないだろうが、君達にも話したと思うが、政府とは手を切って動いている為、それはできない。それに、その大きさのものを君達の時代に転送できたとしても、転送した後、誰かに発見されたとなれば、君たちの時代の政府が黙ってはいないだろう。」
「そんなことではないだろうかと思っていました。仮にそれができるなら、そもそもDSTDを使う理由が無いですもんね。それでなんですが、仲間は多ければ多い程良いと言いますし、、実験ついでといってはなんですが、僕たちの時代のキャシーさんを雄馬さんとDSTDの力で水星に探しに行きたいと考えました。それで、、もし可能なら、その世界に僕も一緒について行きたいんです。ダメでしょうか?」
それを聞いて特に意見はなかった為、俺はすぐに了承した。しかし、神菜が何かもの言いたそうにしていた。
「神菜、どうしたんだ?何か言いたいことがあるのか?」
「ええ、あの、、、私も一緒について行きたい!」
「ああ、分かったよ。きっと、ダメだと言っても君はついて来るんだろう?」
「もちろん!」
「おっさん達はどうしますか?」
「僕らはここで待つことにするよ。行ってもきっとややこしいことになりそうだし、何より、君達が新たに創ろうとしている未来に、既に、十分に関与し過ぎているが、これ以上関わり過ぎることもあまり良いこととは思えないし、できる限りは見守るに近い形で協力したい。」
「分かりました。じゃあ、俺達だけで行ってきます。」
俺がそう言い終えると、キャシーが突然声をあげた。
「待って下さい!」
「キャシーさん、どうしたんですか?」
「突然、ごめんなさい。もしかすると、それはとても危険なことかもしれません。」
「危険は承知な上です。DSTDを使うことは、その度に俺の寿命が削れているわけですし、、、それに、、」
「そうではないんです!そうではなくて、、その、、私の星の者達は、とても警戒心が強く、あまり他の星の者に姿を見せない習性があるんです。だから、ケイシーさん達と初めて会った時も、たまたま私が集落のような場所から離れて一人で歩いていて、他の星の者に襲われているところを助けていただいてからそのまま、水星で暮らす誰にも告げずに私は星を離れました。だから私の星の者達は私がケイシーさん達と今こうして一緒にいることも知りませんし、私はケイシーさんや皆さんのことを良く思えたけれど、その時、もし私の星の者達と同時に皆さんと出会っていたら、ケイシーさん達がどんな目に遭っていたかと思うと正直、、、恐ろしくて堪りません。それに、、、」
「それに、、なんですか?」
「……………。」
キャシーは何も答えずに、何か言葉を詰まらせたような表情を浮かべていた。
「なんであれ、俺達は行きます。ここで立ち止まっても何か変えられるわけではないし、他に何も良い方法がないなら、今見えていることからやるしかないんで。」
「分かりました。余計なことを言ってしまって、ごめんなさい。ただ、水星に行くのなら、これを持っていって下さい。」
そう言って、彼女が身につけていた透明で不思議な紋章のようなものものが刻まれたブレスレットを俺ではなく、キャシーは仲田の腕に取り付けて渡した。。そしてそのブレスレットは仲田の腕を通した瞬間ほんのり光を放ち続けた。
「それは、私の星では生まれた瞬間に、一人一人が自然にその腕に宿すhmsringと呼ばれるものです。その者が生まれて持った魂の形がそのリングに紋章として刻まれます。そしてそのリングはある人物に近づくまでは決して外すことができません。そのある人物が近づくと鼓動を打つようになり、近づけば近づくほど、その鼓動は速くなります。そしてその人物に接近するとリングは外せる様になり、その人物の腕に通すとほんのり光を放ち続けます。」
「ある人物というのは?」
「地球でいう、配偶者になるべき者を指します。互いに近づいた時にそういった現象が起こり、互いにリングを交換し合い共に暮らすというのが当たり前の様に水星では行われてきました。水星を出て初めて知ったのですが、地球では、浮気というものや心変わりというものなどがあるようですが、私達にはその概念がなく、hmsringがその目印とされているものの、hmsringが示す相手はそもそもの相性がほぼ100%に近い程、とても良いので、hmsringが仮に無かったとしても、離婚や浮気、心変わりという概念はやはり無く、その生涯を遂げるまで共に暮らすというのが私の星の者達の一般的な夫婦生活です。」
「つまり、キャシーさんにとっては、仲田がその人物だったってことですか?」
「そうなります。ケイシーさんにも皆さんにもこの話しをしたことがなかったですよね。黙っていて
、ごめんなさい。」
キャシーがそういうと、仲田は一人で何やら、少し顔を伏せて、照れている様子だった。その一方ケイシーは毅然として、とても嬉しそうに話した。
「何も謝ることなんてないよ。それを知ったところで俺の君に対する気持ちは何一つ変わらないよ。」
「ケイシー、、ありがとう、愛しているわ。」
俺は、その二人のやり取りを見て、なんだかむせそうになったが、それを堪えてキャシーの話を続けて聞いた。
「そして、私が生まれ育った星ではこんな言い伝えがあったんです。hmsringはこの世界、全宇宙の調和の為の小さな目印のようなものだと。その調和を乱せば、乱した分の何らかの代償を払わなければ、その調和を取り戻すことができない仕組みになっていると。私の星の者達はその言い伝えに忠実に、歴史を刻んできました。だけど、私の身にだけ、歴史上で一度も起こった事がないことが起きたの。それがケイシーさんとの出会いだった。私の知る限りでは、歴史上、一度も別の星の者と夫婦になった者がいないのはもちろん、hmsringが別の星の者に反応することも、この歴史上一度たりとも無かったとされています。だから、それが調和を乱すことなのかそうじゃないことなのかもわかりませんし、それを同じ星の者に確かめれば、もしかすると、ケイシーさんと私は引き離されてしまうかもしれないと思うと。相談しに行こうなんて気も起りませんでした。」
「キャシーそうだったのか、、、、今まで気が付いてやれなくて悪かった。そのことはこれから、一緒に解決していこう。」
「ありがとう。ケイシーさん、、。」
俺はまたしても二人のやりとりにむせそうになったが、気持ちを切り替えてキャシーに質問をした。
「でも、そのhmsringを持って行くことで一体、何になるっていうんですか?」
「それは、、、ちょっとしたお守りにでもなれば、、と思ってのことです、、、。」
そう言った後のキャシーは、なぜか何か伝えたいことをまだ隠しているようにも思えたが、もしそうだったとしても、いずれわかるだろうし、ケイシーを愛しているキャシーが俺達をはめるような隠し事をしているとは到底思えなかったので、聞かずに心に秘めておことにした。
そして俺は、キャシーの故郷である水星と、キャシーを強くイメージし、仲田と神菜をDSTDの世界に連れて行くことを強くイメージしながら、DSTDの7を押して、マキシム達の宇宙船の仮眠室で眠った。
そうこうして今、水星の地面の上に立って、仲田と神菜をDSTDの世界に連れてくることには成功したようだったが、しかし、そこにはキャシーどころか建物や目に見える生物さえも何も見当たらなかった。ひとまず、俺達はキャシーを探す為に歩くしかなかった。だが、疲労感はないし、昼間で陽が照っていたが暑さも感じなく、喉の渇きは愚か、空腹感すら無かったのでその点はとても助かった。。おそらく、これらもDSTDの力ではないだろうか。しばらく歩くと、辺りは暗くなり、夜を迎えたようだった。すると地面は瞬く間に凍りつき始めた。それでも俺達3人は寒さを感じることも無かったので、歩き続けた。そしてもうしばらく歩いていると、ほんのわずか空が明るくなってきた
時に、地面に凍りついた氷は溶け始めた。その瞬間、辺り一面の地面に、マンホール程の大きさの蓋状になったものが少し乱暴に、多数一斉に開けられ、そこから色々な姿をした、生命体が沢山姿を現した。その生命体等は、溶けかけた氷を、もの凄いスピードで、持ってきた大きな入れ物に詰め込んで、その穴に潜ってはまた地表に出てきて氷を詰め込みという動作をおそらく30分程繰り返していた。すると、その生命体の中の誰かが俺達に気が付いたようなそぶりを見せると、目にも止まらぬ速さで、俺達3人はその生命体等に捕えられ、穴の中へともの凄いスピードで引きずり込まれて、そのまま俺達は気を失ってしまった。
目を覚ますと、真っ白で扉はおろか、何もない部屋の床に倒れていた。神菜と仲田もすぐ傍で倒れていた。ゆっくりと起き上ると、壁に手をついて、出口がどこかにないかを探った。しかし、出口らしいものも、仕掛けのようなものも何一つ見つからなかった。そうしている内に仲田と神菜が目を覚ました。
「ここはどこですか?」
仲田が目覚めたばかりの寝ぼけ眼な声で俺にそう尋ねた。
「分からん。とりあえず、目が覚めてから出口がどこかにないかを探していたんだ。」
「何か見つかりましたか?」
「いや、何も。」
「それにしてもさっきの謎の生命体達は何だったんでしょう?俺達の姿を見つけるなり、もの凄い速さで俺達を拘束して、あのマンホールみたいな穴の中に引きずりこまれる瞬間に突然、彼らの身体がスライムみたいに変形したような気がしたんですけど、あれは夢だったんでしょうかね?」
「いや、それはおそらく夢じゃない。」
「以前、キャシーさんが、色々なものに姿を変えたのを俺は見たことがある。彼らはその時のキャシーさんのような姿の変え方をしていた。だからおそらく、彼らがキャシーさんの仲間達なんだろう。
」
「そうなんですね。じゃあ、どうにかして彼らと話をしたいところですね。」
「ああ、だけど、こんな密室に閉じ込められているだけじゃあ、話しどころか、、、。」
そんな話をしていた矢先に、部屋のどこからか声が聞こえてきた。
「お前たちは、どこから来た?一体あそこで何をしていた?」
「実は俺達、あなた達の仲間のキャシーっていう方を探しているんです。」
「キャシー、、キャシーとは、、、?」
「もし知っている方でキャシーという方がいるのであれば、一度合わせていただけないだろうか?」
「だめだ、お前らとは会わせるわけにはいかない。さぁ、答えるんだ!あそこで何をしていたんだ!まさか、、誘拐でもしに来たんじゃないだろうな?!」
俺は、どうにかキャシーと会えないか考えたが、何かを言えばいう程疑われてしまうような気がして一度口を閉じようとしたその時、その声の主は仲田の付けていたhmsring
の話をし始めた。
「おい、そこのお前!お前が付けているhmsring、それをどこで手に入れた?」
「これか?どうしてだ?」
「良いから早く答えろ!」
「これは、キャシーに付けてもらったんだ。」
「その紋章のhmsringをなぜお前が持っているんだ?どこからどう見たってお前はこの星の者ですらないはずだが。」
「確かに、この星の者ではない。ところで紋章がどうかしたのか?」
「黙れ!この愚か者めが!しばらくそこで大人しくしていろ!」
そう一言吐いた声の持ち主はしばらくの間沈黙していたが、その後意外な事実を知らされるなど、俺達は夢にも思わなかった。
雄馬達が知らされる意外な事実とは一体なんなのか?!




