見守ってて欲しい
少し離れた、誰も周りにいない場所へ3人で移動する。
「何?」とイライラした感じで聞くアキラ。
「ちょっと、」と少し冷たい感じでそれに答えるウエダだ。「お前少し黙っといて」
…イヤだ…ドキドキする。
「ていうか、」とウエダが言う。「お前、」
お前、と言っている相手は今度も私ではなくアキラだ。
「お前とか呼ぶの、気持ち悪いから止めて」
アキラが言うとウエダが今度は言いにくそうに言った。「イマイ、…あのな、…黙ってちょっと見守ってて欲しい」
「…」無言のアキラ。
でもウエダは続けてアキラに言った。「オレがカミバヤシと…その、…仲良くなりたいと思って話しかけたりすんのを少し黙って見守ってて欲しい」
!!
「仲良くなりたいって、」アキラが低い声で言う。「ジュンの事が好きだって事?あんた、ちゃんと好きだって言ってないんでしょ?なのに付き合いたいとか言い出してんの?」
…なんでウエダとアキラだけで話てんだろ…
「付き合いたいとかじゃねぇよ」とウエダが吐き捨てるように言う。
やっぱ付き合いたいとかじゃないんだ…
じゃあ何!
「付き合うとか付き合わないは」とウエダ。「仲良くなってからでいい」
「キモっ!!」と言ったアキラの声が周りに響いた。
「いや、お前な、キモいとか言うな」
「だって言う事キモいじゃん」
「オレもな、お前がついて来てるから仕方なくこういう感じで話もっていってんの!キモくはねぇわ、よく相手の事もわかんないのに急に告ってきて、付き合おうって言う方がよっぽどキモい」
「それ、誰の事言ってんの?」アキラがすごむ。
ウエダがアキラの質問を無視してやっと私に言った。「て、言う事なんだけど」
「へ?」間抜けな声で返してしまう。
「話をしたり、一緒に帰ったりしたいつってんの」
「…」
それは何?私と付き合う気はないけど、誘うよって話?
無言の私にちょっとため息をつくようにうつむいてウエダが言う。「オレは誘うけど、お前がすげぇ嫌なら断ってくれたらいいし」
「はぁ?」とアキラが言う。「じゃあ最初から誘うな」
「いや、もう…ほんとお前黙って。オレはここでただカミバヤシと、広いなとか、空綺麗だな、とかそういう事ちょっとそれとなく話して一緒にぼんやりしたかっただけなの!お前がつっかかってくるから、わざわざこんなちょっとダセぇ感じになってるんだって。…オレはだんだん仲良くなっていこうとしてんのに、イマイは邪魔するし、水本は余計な事するし。こいつはずっとタケノシタの事気にしてるし」
そう言ったウエダの顔が赤くて、私の胸もきゅうっと縮む。
「ジュンのどこがいいの?」アキラが聞く。
…ちょっと…止めて欲しいな、そんな事今聞くの。聞き方粗いし。
「なんでお前に言わなきゃなんねぇの?」
「私の大事な友達だからって、さっき言った。ていうか、私、ジュンの事ただの友達だと思ってないし。私、ジュンの事が好きだから。あんたなんかよりよっぽどジュンの事好きだし大事に出来るから」
「あ~そう」とウエダは吐き捨てるように答えた。
でもその後、「いいじゃん」と言うので、え?いいの?と思う。
「イマイはイマイでカミバヤシの事大事にしてやったらそれでいいじゃん。でもオレの邪魔はすんな」
「あの…」気まずさに何か言おうと声を出したが何も続かない。
「…いやだな…」とぽつりとアキラが言った。
そんなに嫌なのかな、ウエダの事。
「…私さっきのバス、水本とだった」アキラが言う。
「マジで…」ウエダが聞いた。「なんか言われた?」
「あんたには教えたくない」
「…なんか言われた?」と今度は私が聞く。
「…こいつのいるとこで言いたくないな」アキラがウエダをはっきりと指さして言う。
「オレに関係あるから?」
「…あんたは関係ない」
そうなの?
「『大丈夫だから』って言われた」アキラが言う。「『ジュンはいつまでもお前の事ちゃんと大好きだぞ』って」
水本が?
「私は水本に何も相談とかしてないし、ほんとに水本が勝手に言った事で、私が作った話じゃないんだよ?」
いつになく弱気の弁解をするアキラだ。こんなの初めて見る。
「水本が、女子って難しいよな、って言い出して、私はうるさいなって最初思ってたんだけど、オレはお前ら全員が好きだって今度は言い出して、気持ち悪いって私が言ったらゲラゲラ笑って…」
いつもと違う感じのアキラに不安になる。
「ごめん」と私に謝るアキラ。「でもウエダがジュンを誘うのは邪魔したい」




