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話がある

 夕べの暗闇も怖かったけれど、みんなが一緒だったから怖くなかった。すぐそばにみんながいたから…そしてウエダが手をつないでくれたから…

 施設長が話してくれた天女と王様の話を思い出す。そして水本が話してくれたその続きも。

 あの続きの話は水本の作り話なんじゃないかと思う。結末の途切れ方がなんとなく水本っぽい。…水本の事なんて実際ほとんど何も知らないわけだけど。

 それに元々の施設長の話が作り話だと思えるけど、今こうやって空を見ていると話の中に出て来た『光のうずまき』が想像できる。

 ゆっくりと空の真ん中から降りてくる、クルクルキラキラ光るうずまきだ。



 やっぱりちょっと眩しくて私の左側にいるアキラを見ると、アキラも私を見ている。

「…」

「…」

お互い無言。少し見つめ合ってしまう。

 それでもさっきはありがとう、と心の中で思って、ずっと見つめ合うのも変だから私はまた上を向いて、あまり眩しくないように腕を瞼の上に軽く置く。

 

 さっきはありがとうアキラ。世界一可愛いって言ってくれて。…まぁ言い過ぎで引いたけど。

 でも私は、ずっとアキラの事は好きだと思うな。

 来年クラスが変わっても、この先アキラにもっと強めのキャラの友達が出来て、私といる事がつまんなくなって、アキラがその友達の方を大事に思う時が来ても、それか、それぞれの進路で遠く離れてあんまり会わなくなったとしても、私はいつまでもアキラの事が好きだと思う。

 


 そう考えると、『好きな人設定』なんて何の事はない。

 ただのおふざけだよね。別に彼氏なんていなくったって、友達と楽しく過ごせたらそれでいいんだから。そりゃあ彼氏とずっとうまくやって行く事も大変だけど、女の子の友達とずっと変わらず仲良くやっていくのだって大変な事だと思う。そんなに心を許せる友達なんて、…アキラくらい大切だと思える友達なんて、そうそう出来るわけがない。今は私の事を本気で好きとか言っているけれど、私がそれを気持ち悪いと思えないのは、アキラが私の事をちゃんと大事に思ってくれてるのがわかっているからなんだろう。

 それにアキラだけじゃなくて、この合宿で距離の近くなったユリちゃんや、今一つ本心は掴めないけど嫌な感じはしないササキさんとハルノさん。コイツ、と思う事もあったけど、結局は正直で優しいとこもあるカリヤさんの事も、向こうはそこまで思ってないとしても、私にとっては大事な友達。


 …こういう『向こうはそこまで思ってないとしても』、とか付けるところに私のネガティブさが顕著に表れてるよね…

 自分から、好きだ、と思って近付いていけないところがダメだ。好きな人たちには近付いて来て欲しいと思うのに。



 コツ、と瞼の上にかざした腕に冷たいものが当たり、「ふん?」とまたアキラの方を向くと、アキラがムッとした顔をして跳ね起きた。

 私も慌ててパッと頭をずらして見ると、ソレは黒い水筒。

 私のそばに少しかがんだウエダが持った、黒い水筒だった。


 ウエダは一人だった。

「なぁ」とウエダが言う。「ちょっと来て」

「なんで?」と聞いたのはアキラ。

ウエダはアキラの方を見ずにもう一度私に言った。「もう時間ないからちょっと来て」

 上体を起こすと、ササキさんとハルノさんがガン見していた。



 「…何?」と聞いても「いいから」とウエダは言う。

 アキラがグッと私の手を掴んで来ると、やっとウエダがアキラを見て言った。

「悪いイマイ。ちょっとカミバヤシに話があるから」

アキラがちょっとビックリした顔をしたが、すぐに言った。「あんたがジュンに言おうとしてる事、わかるけどダメだから」

「いや、お前が決める事じゃないから」とウエダの反論。

ウエダは真っ直ぐに私を見てくるが、私はどうしたらいいか解らなくなる。し、恥ずかしい。


 もしかして…もしかしなくても告白っぽいやつとか?…いや、でもそう思いながらのこのこついてったら全然違う話とか…


「ここじゃダメなの?」と聞いてみる。

「うん、ダメ」

そのウエダの答えに、「キモっ!」とアキラが言った。

「何可愛い感じ出してんの、キモいわ」

「出してねぇよ。お前黙ってて」

「黙らないよ。私も一緒に行く」

「お前関係ないし」

「関係ある。ジュンは私の大事な友達だから」



 んん…と私は迷ってからウエダに言った。「…アキラに一緒に行ってもらってもいい?」

 ウエダが舌打ちした。

「ちょっと!私だってイヤだから」とアキラ。「あんたの話なんか聞きたくないから」

「じゃあ来るな。カミバヤシだけでいい」

「ここで話してもらっちゃダメなの?」ともう一度聞いてみる。

「いいわけねぇじゃん!」と食い気味に答えるウエダ。

 そしてアキラを見つめるウエダだ。



 「「…じゃあ」」と恐る恐るといった感じで話しかけるササキさんとハルノさん。「「私たちが向こう行って来るよ」

「もう~~~~!」ウエダが唸った。「わかった。もういい」

もういい、と言われてなんかちょっと、胸がズキンとする。

 が、アキラが「ふふん」と言う感じで笑うので、私も、もう~~~~!、と心の中で思う。

「じゃあわかったから」とウエダが言った。「イマイも一緒に来て」

 え?


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