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カミングアウト

「ごめんね、ジュンちゃん」

カリヤさんがそう言って私に無理矢理つくったような笑顔を向ける。

 いやいやいやいやいや…私好きだとか本人にはっきり言われてないから。付き合うわけでもないんだから。なにがごめんかもよくわかんないから。

 …そっか!カリヤさんに断るためにウエダは私の事が気になってるってカリヤさん本人に言ったんだった。

 それを聞いた上でこんな事言えるなんてとても健気なような気もするし、押しが強過ぎる気もするし…ウエダに冷たくあしらわれてもやっぱり諦めきれないなんて、いったいウエダのどこをそんな好きだと思ってしまったんだろう。結構冷たくされてるみたいなのに。

 もしかして…そこがいいとか?

 なんかちょっと…キモいなそんな感情。

 後に引けなくなってるとか?

 私はまだそんな風に誰かを好きになった事がないから、チハルちゃんの事を思い出して、つい否定的な目で見てしまうのだ。

 できるならやっぱり、関わり合いたくない。そんな感じになるなら私は本当に好きな人なんていらない…そんなことで思い悩みたくない。明るく楽しく高校生である事を楽しみたい。



 そしてそんな話をしていた私たち3人を、同室の残り三人が興味深く伺っている事に気付く。

 そりゃ伺うよね、そんな話してたら。ササキさんとハルノさんには実際言われたし。私とウエダ君の事が気になってるって。


 その3人にユリちゃんがニッコリと笑いかけた。「雨ふっちゃったねぇ」

「イケダさん」と呼んだのはアキラだった。「ジュンがタケノシタからもらったメモの内容知ってる?」

「メモ?」ユリちゃんが私を見つめる。「タケノシタ君にもらったの?いつ?」

「いや、えと…」口ごもる私だ。

なんでここで言うかなアキラ。

「もう~~」とユリちゃん。「それ見てなかったな~~」

ユリちゃんが本気で残念がった。良かった見られてなくて。

「何が書いてあったか教えてくれないんだけど」とアキラ。「親友なのに。私すごく寂しい。ねぇジュン?」

「…」

「それは…」とユリちゃんが言う。

ありがとうユリちゃん、と思っていたらユリちゃんは続けた。「良くないよね。イマイさん心配してくれてるのに」

 ユリちゃんを凝視。でもユリちゃんはさっきと同じように、ウソ臭くニッコリ、と笑った。


「そうだよね」と口を挟んだハルノさんを今度は凝視する。

「イマイさんには言った方がいいんじゃないかな…」とササキさん。

マジで。

 何この人たち。

そして様子を伺っていたカリヤさんがせつなそうな声を出して言った。

「ヤだ、ジュンちゃん…ウエダ君にあんなに思われてるのにタケノシタ君と…」

あんなに思われてなんかないって!

 そして「あれ?」とカリヤさんが続ける。

「タケノシタ君てよその高校に行ってる彼女がいるって、結構みんな知ってるよね?」



「じゃあみんな聞きたいって事で」とユリちゃんが言って私に促す。「どんなメモもらったの?見せて」

「…それはできないよ。タケノシタ君のプライバシーに関する事だから。私がどうのじゃなくて、タケノシタ君の個人的な事に関する事だから」

「ん~~」とユリちゃん。「それはさぁ、タケノシタ君が彼女と一旦別れたんだけど寄りを戻したい的な、そんな話とか?」

 …。

 ビックリ。

 なんでわかるんだろう。

「なんでわかるんだろうって顔してるけど」とユリちゃんがちょっと笑いながら言う。

「最近、タケノシタ君彼女の話あんまりしないし、なんとなく雰囲気違うからそんなかなって。ねぇササキさん、ハルノさん、そんな感じしてたよね」

「「してたねぇ」」とササキさんとハルノさんがうなずく。

「もう、カミカミにタケノシタがメモ渡したの見た時には、おおっ!と思ったね」とハルノさん。「タケノシタってほんと読み通りの動きする」

「うっそ」とユリちゃん。「ハルノさんも見てたの!?うわ、なんで私気付かなかったかな」

本気で残念がるユリちゃんだ。


「カミカミ?」とアキラ。

「あ~うんごめん」とササキさん。「カミバヤシさん、て言いにくいから私らカミカミって呼んでんの。…なんかごめん」

なんでそんな事をアキラに謝るササキさん。それにタケノシタ君の動きが詠みどおりって…

「え…ううん」アキラがしどろもどろだ。「…私は別に。ジュンが構わないなら」

ぱぁっと嬉しそうな顔をするササキさんとハルノさんだ。

「えっと…」とハルノさん。「ちょっと勢いで聞くけどイマイさん、カミカミが付き合うとしたらウエダ君よりはタケノシタ君の方が、イマイさん的にはいいんじゃないの?…それかやっぱり、誰とも付き合って欲しくないの?」

「はぁ!?」と声を出してしまったのは私だった。「なんでそんな事アキラに聞くの?」

 アキラの事苦手だって言ってたわりには、本当に勢い込んだ事聞くなぁ。

「欲しくないよ」とアキラが当たり前のように答えた。「私ジュンが好きだから。友達超越した感じで本気で好きだから。私と付き合って欲しいから」

 …ここでカミングアウトしたね。

「でも私、言っとくけど、」と私が驚いて何も言えないうちにアキラが続ける。「もともとそういう、女の子が好きって感じでジュンを好きなんじゃないから。純粋な気持ちで性別超越してジュンを好きだから」

これは私が止めるしかない。「アキラ、もうわかったから。…ありがとう、でも」

「気安くありがとうとか言わないでよ」アキラが今度は矛先を私に向ける。「私に本気で怒ってたくせに」



 …いや、みんなアキラの告白にビックリしてるんじゃないかと思ったけれど、全くそんな気配がない。カリヤさんさえもだ。

「わかるよイマイさん」とカリヤさんが言った。「好きな人に全然振り向いてもらえない感じ」

「いや、それはない」とアキラ。「ジュンはちゃんとわかってはくれてる。ね?」

私にどう返事しろと?

「性別超越してってとこが」とハルノさんがうっとりした感じで言う。「すごく大事だよね」

うんうん、とうなずくササキさん。

「それで?」とユリちゃん。「どうするのジュンちゃん」

「…何を?」メモを見せろとかそういう事?「…どうも…しないけど?」

「「「「「はぁぁぁぁぁぁ~!」」」」」

5人全員に大きくため息をつかれた。




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