席順
そんなこんなで迎えてしまった野外研修の合宿の当日だ。
もうどうでもいいやと思う。
夕べアキラにラインを送ろうかどうしようか迷ったのだ。ぶっちゃけほぼ送りかけた。でも、思い直したのだ。アキラから「ごめ~~ん私なんかちょっとふざけ過ぎちゃったかも~~」とか言って来たら許してもいいけど、もちろんアキラがそんなキャラじゃないのは充分わかってるし、私も合宿終わるまで口をきかないと言った手前、やっぱりここは私からは何もしない事で頑張る事に決めた。今私から謝ったらこれから何かあっても、またつい私から謝ってしまいそうだし、…もしかしたら私が許したと思ってまたあんなふうに面白半分の本気で私に迫って来るかもしれないし。
取りあえず合宿中にいろいろアキラの雰囲気を伺って、合宿終わってからまたどうにかしよう、と考えている姑息な私だった。
あ~~もう嫌だ~~~アキラめんどくさい~~~。アキラは私と話さなくても平気なんだろうけど、私は違う。やっぱり喋りたい。喋らなくても一緒にいたい。
そして昨日のウエダ。めんどくさい~~。
あの後ずっと黙って私が乗るバス停で一緒にバス待って、バス来たら「じゃあな」って、なんだそりゃ。
私の事が好きなんじゃなかったのか?好きって言ったよね?確かに好きって…
…あれ?
違う。
違うな!私が直接言われたわけじゃないじゃん!カリヤさんにそう言ったんだった。
それはなに?あのときカリヤさんと二人きりになるように置き去りにした私へ、カリヤさんの注意がそれるようにそう言ったとか?全然話もはずまなかったしな。
チハルちゃんが私に言ったのだ。「男の人の言う事なんて簡単に信じちゃダメなんだからね。その場限りで調子の良い事ばっかり言うし、すぐ気は変わっちゃうし、嘘だって簡単に言うし」
いやチハルちゃん、と私は思った。口には出さなかったけど。
そんな人ばっかりじゃないよ。逆にそんな人を好きになっちゃったチハルちゃんに見る目がなかったんだよ。
ウエダはどうかな。1回も好きな人に選ばなかったけど。ウエダの良い所ってどこだろう。
調子良い事を言わない所。どんな時にもテンションが変わらない所。結局前の日直も一人でやってくれたし、その事で文句言ったりもしないで面白がってくれたし。
んん~~、と心の中で唸る。
でも、だ。まだ私に直接、ちゃんと好きだって言ってくれたわけじゃない。だから私が取るべき態度はそこまで慣れ慣れしくなく、かつよそよそしくない…じゃあ今までと同じようにすればいいんだよね?
天候は残念ながら曇りだ。一応折りたたみ傘を持参する。それから100円均一で買って用意しておいたゴミ袋並みに薄いレインコートも畳んでリュックのポケットに入れてある。そうするようにプリントに書いてあったからね。あの、ウエダと放課後に作業して綴ったプリントに。
制服で登校して、教室に入る。点呼があって更衣室に行ってジャージに着替えて、校庭に並んでバスに乗って目的地へ。
点呼の時に水本が聞いた。「バスの席順どうするぅ?」
え?と言うみんなの反応。大方が「え~自由じゃないのぉ?」っていう反応だ。
自由だったらアキラと乗るところだけど、アキラと絶交してる今、私は誰と乗ればいいのか?ここでアキラの顔いろを伺ったら負けた感じがすると思う自分が面倒くさい。
が、水本がやたらニコニコしながら言った。
「バスに乗る時、毎回隣の人変えよう。毎回シャッフルね、シャッフル」
ざわつく教室。今さらそんなの決める時間ないでしょ?
「バスの席順くらい自由がいいです」と何人かが言ったが水本は却下だ。
「先生ね、今回頑張りました。夕べ10回分のくじ作って来たから。先生がバスの昇降口で箱持ってるので必ず1枚引いて、その番号の通りに座って。20分の移動も、2時間の行程も、隣がいる人もいればいない人も、ていうのがくじで決まるよ~~」
「めんどくせ~」とか、「落ちつかねぇ」とか、「どういうつもりなんだよ」とか言う非難の声がする。
「はい、うるさい」と水本は言った。「この合宿は、いろんな中学からやって来て、まだあんま慣れてないクラス全体やクラスメート各々に慣れるのが目的なの。だからやります。それにやっぱそう言うのってドキドキしない?…あれ?しないのみんな?…するよね!はいはいしますします。それで先生も入るからね。先生の隣になったやつ、先生の世間話をシカトすんなよ~~。絶対くじの交換とか無しだからね。失礼だからね!当たった隣の人に対して」
…あれ?嫌がってんの男子だけのような気がする…
水本、何気に女子に人気だな。




