絡みづらい
「それ、本当の話?」つい聞いてしまう。
ウエダがあからさまなため息をついてから言った。「そういう事を聞くやつだよな、お前って」
…どうしよう。好きだって言われた…
ウエダから少し目を反らして急いで考える。え、ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って…、私今、なんて言われた?
ウエダが今言った言葉を急いで思い出す。
私の事を好きだってカリヤさんに言ったって、私が気になってるんだって言ったって…
気になるっていうのと、好きって言うのはどんな風に一緒でどんなふうにどう違うのか…そしてウエダがそう言ってもカリヤさんはウエダの事を好きなままなんでしょ?それで私には他に好きな人がいるんだってウエダに言ったんでしょ?でもウエダは…
「なんで、え?しか言わねぇの?」少しムッとした感じでウエダが文句を言う。
「…驚いて」小さな声で弁解してしまう。
「前に気になってるってちゃんと言った。そん時もあんま反応なかったけど」
だってその時は好きだとは言われてないから。
いやでもまさかほんとに告られるとは…
彼氏も本当に好きな人もつくらずに好きな人を毎日設定していたこの私が。
ウエダが苦笑して言う。「まぁ今も何の反応もないけどな!まぁそれはだいたい想像はしてたから」
反応?…反応か…どんな反応が正解だ?いや、反応してるよちゃんと。どうしよう、なんでだろうってこんなに考えてるのに。
「でも」とウエダ。「今日は一緒に帰るから。それで明日も、カリヤがオレんとこばっか来て班の雰囲気悪くするような事がないように、お前もある程度は協力できるよな?だって同じ班だし」
何、その言い方。
「そんなに嫌?カリヤさんの事」
ウエダが上から目線の言い方をするから、つい聞いてしまった。
女子同士だからって理由だけでカリヤさんの味方をしてるわけじゃないし、自分の事を好きだと言われたから同情しているわけでもないし、逆にカリヤさんもしつこいな、もういい加減ウエダに迫るのやめればいいのにとは思うけど。一時期のチハルちゃんとかぶるからなんとなく見ていられない。もっと穏便に傷付かない感じで断ってあげたらいいのに、っていう私こそカリヤさんに上から目線か。
そんな私をウエダが睨む。
「お前嫌い」
「え~~~」今好きって言ったじゃん。
「もういいや、ほら、帰るぞ」
それでも一緒に帰るんだ!
「お前、明日だれとバスに乗るの?」
私がバスに乗るバス停へ向かいながらウエダが聞く。
「あ~~~…」そうだよねぇ…アキラとケンカしてるもんねぇ。「ウエダ君は?」
黙り込むウエダ。自分から聞いといて。
「お前さぁ」とまた何かウエダが言いかけるので、この際言ってしまおう、と思って言う。
「ねぇウエダ君お願い。私の事お前って呼ばないで…欲しいなって思ったり…」
「ほんとに呼びにくいから」とウエダが言う。「カミバヤシってマジで呼びにくいんだって」
「うん」
「それで…ジュンて呼ぶのは…水本が絡んで来た時は水本に負けた感じになるのが嫌でわざと呼んだけど、超恥ずかしい」
なんか言われてるこっちが恥ずかしくなる。
「…そっか、わかった」と言ってしまう気の弱い私だ。
そして沈黙。
…もう…早く帰りたい。沈黙気まずい。
ウエダも気まずいのか、「ぅあ~~もう!」と言い出した。
ビクッとしてしまう。当然だ。
「実はタケノシタと座りたかったり?」とウエダが聞く。
バスで?ぱっと想像してしまう。…結構いいかも…というかかなり心躍るのかも。
でもタケノシタ君と座って沈黙に支配されたら今より緊張するかも。タケノシタ君とうまく会話ができるのは、タケノシタ君が気を使ってくれているからだ。
「今度映画行くから」
へ?
今度映画行くから。
ウエダの言葉を心の中で繰り返す。
どう言う事?宣言?急に話変わったし。
「何観たい?」さらにウエダが聞く。
「…一緒に!?」
「一緒に」
え~~~~…そんな誘い方…ウエダが何が好きかもわからないのに…
そう思ったらフッと笑ってウエダは言った。「お前、面白いけど絡みづらい」
「マジで!?」なんかひど…それ自分もじゃん!
好きだって言われたけど『付き合おう』とは言われてないよね?私はどう思ってるかも聞かれてないし。それでも一緒に映画に行くの?
あり得ない事に、その後私が乗るバス停まで黙って歩いた。電話番号を聞かれるでもなく、ID聞かれるでもなく。次の約束されるわけでもなく。映画の話もあれで終わり。
なんか…苦痛!




