もやもやする
その二人に呼び出しってなんだろう。もしかして昨日の水本の髪の毛切ったのがバレてて二人は水本のファンで、みたいな?
…なんかマンガみたい。
「明日から合宿だね」小首をかしげてタカノさんが私に言った。
「…うん」怖いな。
「カミバヤシさんの班面白そうだよね」
「…」
「カミバヤシさんて」とフルヤさんが聞く。「正直カリヤさんの事どう思ってんの?」
「…」
カリヤさん?どうも思ってないっていうか、どうも思ってるけど、そこまでは思ってないから別にこの人たちに言うような事は何もない。
「ウエダ君てさ」とタカノさんが言う。「カミバヤシさんの事好きみたいだよね」
「…」
「カミバヤシさんは…ごめん、苗字呼びにくいから急に馴れ馴れしくして悪いんだけどジュンちゃんて呼んでいい?」
私はうなずいた。こんな状況だけどなんとなくちょっと嬉しい。
「ジュンちゃんはさ、」とフルヤさんも呼んでくれた。「ウエダ君の事どう思ってんの?」
どうも思ってないっていうか、どうも思ってるけど、カリヤさんに対してよりはだいぶどうも思ってるけど、この人たちに言うような事は何もないような気がする。
ジュンちゃんて呼んでくれてるのは嬉しいけど。
「やだジュンちゃん反応ない~~」
黙っているとタカノさんがちょっと笑って言った。「カリヤさんの事うざいとか思わないの?」
ウザくはないよね。たぶんウエダはカリヤさんの事ウザいと思ってると思うんだけど。ウエダの空気を読んで、あんまりガンガン攻めなきゃいいのにとは思ってる。
それに「やだジュンちゃん反応ない~~」っていう言い方が今ウザかったけど?
「カリヤさんともウエダ君とも」と私はやっと説明する。「まだそこまでたくさんは話した事がないから、あんまり…なんていうかそこまで何とも思ってない…感じ」
「私たちウエダ君のファンなんだよ」とタカノさんが言った。
マジで!?同じクラスの男子の『ファン』とか言っちゃうの?
ほんとにマンガみたい。
「見た目ね、見た目が好きなの」とフルヤさんが付け足した。「見た目かっこいいじゃん。でも不機嫌そうな時も多いし、もっとこういろんなパターンのウエダ君見たいんだけどなかなか見れないし。ちょっと告ったりしても速攻で断ってきそうでしょ?実際カリヤさん結構冷たくあしらわれてるの見たりすると引くよね。だからほんと、見てるだけでも結構嬉しかったのに、冷たくされてもカリヤさんがガンガンいくから」
「そうなんだよね~~」とタカノさん。「カリヤさんハート強いよね!嫌なんだよね、ぶっちゃけ私たち、カリヤさんの事。私たちが怖くて近付けないのにカリヤさん打たれ強いからガンガンいくじゃん。すごい鬱陶しいんだよね。ウエダ君はジュンちゃんの事が好きそうで、だけど私たち的にはジュンちゃんもどうかなって思うわけ。悪いけどね。イマイさんといつもいるし、なんかちょっと変わってるような気もするし」
「でも!」とフルヤさん。「カリヤさんがガンガン攻めてウエダ君が根負けしちゃったりして付き合うようになったら、それは絶対嫌なんだよね。まぁ無いとは思うけど。それだったらまだジュンちゃんの方がましっていうか、ごめんね、言い方悪くて」
二人は全く悪いなんて思っていないような口ぶりでそう説明した。
それで結局なんで私を連れてきてこういう話をしたのかと言うと、どうしても合宿の前に私に話しておきたかったから、という理由らしい。二人はカリヤさんのうたれ強いところが結構我慢ならないらしいのだ。だから私も我慢するな、という話のようで、二人は私を励ましてくれた。
「合宿の班行動の時、カリヤさんがウエダ君に何かしようとしたら」とタカノさんが言う。
「もっと積極的に邪魔しないと、ね?てか私たちの代わりに邪魔して欲しい」とフルヤさん。
「無理だよね」と私は答えた。「そういうのは無理だし、これっぽちもしたいと思わないから」
「「もうちょっと頑張りなよ~~」」と二人は声を合わせた。
何をだよ。今はアキラの事で結構頭いっぱいな感じなのに。
合宿が終わるまで絶対に口きかないとか言っちゃったし。でも気になるし。早く元に戻りたいし。
…アキラと班が違って良かった。
あいまいな返事しか返せない私を結局呆れたように見ながら二人はやっと解放してくれて教室へ戻る。
そっかタカノさんとフルヤさんもウエダが好きなのか。…でもカリヤさんへの意見は私に言わないでカリヤさんに言ったらいいのに。そしてウエダに告ったらいいじゃないか。私を巻き込まないで欲しい。
もやもやする!




