呼び出し
鞄を取ると階段をバタバタと降りてそのままアキラの家を出た。
もちろんアキラからすぐラインが入る。謝って来ても口きいてやらない。
私も護身術習ってみようかな…
メッセージを開くと、「最後に怒って帰ったのがものすごく可愛かったよ」。
うざっ!!くっそ、未読のまま放置しとけばよかった。もちろんスルーだ。
翌日、朝学校へ行くと私の席の近くにやって来たアキラに「おはよ」と言われる。
普通の顔をした普通のアキラだ。何もなかったかのように。
絶対口きかないんだから!と身構えたが、それだけ言うと私の挨拶なんか待たずにアキラはにっこり笑って自分の席に戻って行った。
これでも夕べさんざんアキラの事を考えたのに。
アキラと出会ってからの事をずっと。そして昨日押し倒された事はどのくらい本気なのか。私が口をきかなくなってもチュウしたい率90パーって本人が言っていたのが、いったい何パー本気なんだろう。
アキラが本気の本気で私の事を好きだとして、アキラが女の子で同性の友達だった私の事をキスしたい感じで好きになってくれてるんだとして、私はこれからアキラに対してどう対処していくのか。
あんな綺麗な女の子が私を押し倒してキスをせまる…
嫌か嫌ではないかで考えると嫌ではない気がする自分がちょっと心配だ。世の中には同性の子を好きになる人もいる。その事に関して誰かを傷つけない限りダメな事だとは思わない。でも自分が受け入れるかどうかはまた別な問題だと思う。
アキラは同性が好きなわけじゃないって前に言っていた。性別とか関係なく私の事を好きでいてくれたらそれは本当に嬉しい事だけだけど、キスとか、それ以上の事をアキラとするとなったら…
ダメだ。今は考えたくない。ずっと友達でいたい。
今までのウエダの事があって、昨日の水本に呼ばれた事もあって、アキラ的に変な風に盛り上がっただけかもしれないし。
やがてウエダがやって来たのが机に鞄を置く音でわかる。前を向いて座っていた私の背中をつんとつついてウエダが言った。「なぁ」
少し振り向くとウエダは私の目を反らして聞いてきた。「昨日タケノシタも一緒に帰った?」
「ううん」と首を振る私。そして昨日のアキラの家での事を一瞬でまた全部思い出す私。
アキラめ…普通に挨拶してきやがって…
「なぁ」ともう一度ウエダに呼ばれる。
「なに?」
「…昨日…いや、やっぱなんでもない」
が、前を向くとまた背中をつつかれた。今度は思い切り振り向いて少しムッとして返してしまう。
「なに?」
「…水本がまた頼んできても、次はちゃんと断れよ」
そんなのあんたに言われたくない、そもそもあんたが断ったせいで呼ばれたのにと思ったが実際口に出しては言わなかった。無視するようにただまた前を向く。
やがて水本が教室に入って来て出欠を取るが、あれ?水本、私が切った後より、また確実に少し髪の毛伸びてない?
同じ事を感じたのか少し前の方に入るタケノシタ君が、私を振り向いてけげんな顔をしている。
同じ気持ちだよタケノシタ君!
が、水本は当たり前と言えば当たり前だが、昨日の放課後の事や私に髪の毛を切ってもらった、というような発言も全くしなかった。
「今日、4時間で終了だけど、班長になってる人だけちょっと残って。伝達事項あるから」
明日から合宿だもんね。もう水本の髪の事は考えないでおこう。…たぶん…なんかもう触れたらいけない事なんだと思う。今度髪切るのを頼まれたら断ろう。なんかちょっと不気味だもん。ウエダに言われるまでもない。なんだったら昨日髪を切ってあげた事もなかった事にしよう。
2時間目の15分ある休憩時間、タカノさんとフルヤさんが私の机にやって来て「ちょっと来てくれないかな」と言う。
え?と思う。二人とはほとんど話した事がない。アキラは今教室にいない。トイレかな…。ウエダもいない。
「ちょっとだけだから」と言われて怪訝な気持ちで渡り廊下に連れて行かれる。
何だろう。何かしたかな、何もしてないよね。
二人は人間を大きな部類で分けるとしたらカリヤさん系だ。おしゃれに気を配って髪の毛もいつも綺麗にしているし、厳しい学校なのでメイクは禁止だなのだが、きちんと手入れをして下地はばっちり。しかもそれが自然に見えるようにやっている。技術あるよね。全く暗くはなくかといって悪目立ちするわけでも全然なく、男子が好みそうなタイプの女子だ。たぶん本人たちも可愛く見えるように頑張ってそうしているんだろうけれど、カリヤさんほど男子に、まぁカリヤさんの場合はそれがウエダなんだけど、積極的ではない感じだと思う。




