不謹慎な私
…そうなの?本当にそうなの?「それ本当の話?」
「ほんとほんと。そんな嘘付いてどうすんの?なんかやっぱさびしいしさ、誰かに話したいんだけど姉ちゃんに話してもバカにされそうだしさ、男子に話したらからかわれそうだし、女子に知られたら、オレみたいなどうでもいいやつとかの噂でも、そういうのって一挙に広まりそうで。でもカミバヤシならなんか普通に聞いてくれそうな気がしたからつい話してしまった。今まであんま話した事なかったのに。…あ、これもないしょな!」
そう言ってタケノシタ君は少し自虐的に笑った。
「タケノシタ君お姉ちゃんいるの?」
「いるいる。大学生だけど。なんかいつもオレの事バカにしてくんの」
お姉ちゃんいるのかぁ?…でもなんかそんな感じがする。気がきいててスマートだけど柔らかいところもあって男子男子してないとこが。
…だけどそうなの?本当にそうなの?本当にあの彼女と別れたの?
目の前のタケノシタ君越しに、彼女の事を嬉しそうに友達に話していたタケノシタ君を思い出す。そして土曜日に見た普通に仲良さそうな二人の事を。
あ、でもどうしよう。タケノシタ君はさびしい気持ちなのに、私なら普通に聞きそうだからって話してくれた事が嬉しくて、なんか、私顔笑ってない?
…だって特別扱いじゃん!こっそり「好きな人設定」にしていたタケノシタ君からの特別扱い。
どうしよう…なんか…すごく嬉しいんだけど喜んだ顔しちゃダメだ。不謹慎なヤツだって思われちゃう。
「こらこらカミバヤシ」とタケノシタ君が呆れたように言う。「なんでちょっと嬉しそうにしてんの?」
ヤバい、バレた。…まずいどうしよう…
「ごめん。せっかくないしょの話してくれたのに。でも私に話してくれたって言うのが嬉しかったからつい」私は正直に話した。「ほんとごめん。私、人からそんなぶっちゃけ話される事あんまないんだよ。それにタケノシタ君、女子にどうでもいいとか思われてないよ。男子にも女子にもみんなにいい感じで思われてるよ。私、いつも見ててすごいなってほんと思ってるんだから」
「いつも見ててくれてんの?」
「あ…うん、まあ…そこまでじゃ…」
『好きな人設定』がタケノシタ君にバレたら、激恥ずかしい。
「ほら~~」とタケノシタ君がふざけた感じでなじる。「そんなには見てないんじゃん、もう~~カミバヤシも調子の良い事言って~~」
「そんな事ない!ほんとそんな事ないよ!」
「そこでムキになったら余計ダメじゃん」
「ほんとに!ほんとなの!」
「ハハハ」とタケノシタ君は笑った。「でもいいよ。それでもカミバヤシは秘密にしといてくれそうだから」
だめだ、またニヤつきそう。
「それにそんな事言ってくれたのはカミバヤシがはじめてだよ。みんなそんなにオレの事良いようには思ってないって」
なんでそんなに否定的?
「結局さ」とタケノシタ君が自虐的に続ける。「彼氏って言うより、友達って感じの方が強いんだろうなオレなんか。言われたもんあの日も彼女に。…てか元カノだけど」
校舎の端から体育館への渡り廊下。いつも私とアキラが昼休みに散歩するところだ。
「私、アキラといつもここで昼休みいるんだよ」
タケノシタ君がないしょ話をしてくれたから私も話やすくなった感じがする。
「へ~~」とタケノシタ君。
普通に何ともなく聞いてくれるのが嬉しい。タケノシタ君とこんな風に話す事が出来る日が来るなんて。
「えとさぁカミバヤシ」とタケノシタ君が言う。「カミバヤシって結構本気で呼びにくいな。そういや水本はジュンて呼んでるよね、カミバヤシの事。…なんかウエダが呼ぶの呼ばないのみたいな話をしてた事なかった?」
「…」
「…そっか!一緒の班だよね!もしかして中学も一緒だったとか?」
「ううん」と首を振る。
「え…付き合ってるとかそんな話?」
「ううん!」さっきより激しく首を振った。
「…ふうん。そっか、まぁいいや」ニコッと笑ってタケノシタ君が続けた。「じゃあオレもカミバヤシの事ジュンちゃんて…」
後ろから人の近付いてくる気配があって、振り向いたのと同時に私は腕を掴まれていた。




