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結局、誠のヤツが帰ってきたのは日が沈んでからだった。暗くなったので明かりを付けて待っていたら、帰ってきた誠は一度部屋を間違えたと思ったか扉を閉めた。あの時の顔は実に面白かった。そして、二回目に開けたとき、俺が腕を掴んでグッと部屋の中に入れてやったのだが、まるで他人のように遇われた。
そして、変なところから現れた誠のメイドのシャロルに捕まり、
「まったく、貴方は何をしているのですか? お嬢さまに対して、無礼な態度ばかりとって……」
などと怒られる始末。
「いやさ、俺は誠──フィーリアと前世は幼馴染みで……──」
──ゴチン!
「──痛ってー!」
「“お嬢さま”ですよ、ウィル。ゲイルさんにも言われたでしょ!」
またも理不尽な暴力を振るわれた。ったく、何で誠のことを名前で呼ぶと怒るんだ? さっぱり、分かんない。
俺は打たれた頭を擦りつつ、一先ず、合わせて、
「分かりましたよ。お嬢さまは“お嬢さま”ですね!」
「そうです。また、お嬢さまの事を名前で呼んだら、拳固です!」
そう言って、シャロルは握った拳を俺に見せ付けるのだった。
それから夕飯になった。侯爵家はアットホームで使用人も一緒に食事をとる。が、
「俺、誠付きの執事見習いだよな? なんで、こんな部屋の隅なんだ?」
何故か俺だけが、食堂の隅にあるテーブルで、しかも具が殆どないシチュー。明ら様な差別だ! と、喚こうかと思ったが、雰囲気がそれを許さなかった。しぶしぶ、俺は具の少ないシチューを、
「ズズズ……、プッハー、旨めー! 今朝まで食ってた家の飯が霞んじまうぜ!」
一気に飲み干してしまうのだった。そして、ふと、誠の事が気になり視線を向けると、何やらゲイルさんと話し込んでいた。
「……いったい、何を話してんだろ?」
途中、ゲイルさんが誠に耳打ちするように喋るのが見えたが、ここからではまったく聞こえない。なにしろ、他の使用人たちもペチャクチャと談笑していてるし。
夕飯を食べた後。
「今日はもう部屋に戻っていて大丈夫よ」
と、シャロルに言われた俺はすごすごと屋敷裏手の物置小屋に戻る。
「……そういや、部屋にある物は使っていいって言ってたっけ?」
俺はホコリこそ被っていないが、経年劣化で黄ばんだシーツや枕、そして、布団を取り出すとベッドに使えそうな、木箱を並べ、その上に敷いた。
「……よし。ベッド完成だぜ!」
試しに乗ってみると、
「お! 使い古しの割りに、フカフカだ!」
思わず、ゴロゴロしてしまった。




