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「──卒業おめでとう! これから君達は家の後継者として勤しむ者、家を出て働く者、又は、更なる勉学に励む者もいることだろう。皆、各々、頑張っていくのだぞ!」
担任の締めの挨拶が終わり、地球でいう中学校での最後の号令、
「起立! 礼!」
「「「「ありがとうございました!!」」」」
担任と生徒たちの「ありがとうございました」が教室内、果ては学び舎の三年生の教室が入る階層に響いた。
──ああ、ようやく終わった。この国では、中学校は義務──親のね、親の通わせる義務──で、身分に関わらず国や民間が用意した学び舎で学ぶのだ。
そして、そこを卒業すると、めでたく社会人。まあ、そこから地球でいう高校に進む者もいるが、私の場合は一人っ子故に家で家業──いや、家督を継ぐ為の修行が始まる。といっても、我が家は土地の代わりに特権持ちの侯爵家。一応、入り婿を迎えれば侯爵の地位は旦那に移るが、それまでの繋ぎは必要。その為だ。
「シャロル、行きましょう」
「はい、お嬢さま」
私は我が家に代々仕える家系の同い年のシャロルを連れて、教室を後にする。
学び舎を出ると極東から取り寄せたというサクラの並木道が私たちの新たな旅立ちを祝福しているようだ。
送迎の自動馬車──車は遠慮して歩きで街を歩き、屋敷へ向かう。王都は今日もお祭り騒ぎな賑わいで、活気に溢れていた。
「お嬢さま、お嬢さま、あの、串肉を食べましょう♪」
「あら、そうね、シャロル、お願い」
私は財布からお金を出して、シャロルに渡して串肉を買ってきてもらう。シャロルから串肉を受け取り、頬張りつつ、
「これ、中々イケるわね。」
「そうですね、お嬢さま♪」
お父様やお母様からは、はしたないと言われるだろうが買い食いはやめられない。だが、明日から暫くはお屋敷からは簡単に出られなくなる。なにしろ、私は一人娘で婿入までは家督を一時的にでも継ぐのだ。その勉強で、おいそれとは外出は不可能。
今日が実質的に自由に街を散策できる最後の機会。門限いっぱいまで遊び倒すぞ!
私とシャロルは王都の至る所を見て回った。繁華街は言うに及ばず、穴場の広場、ステンドグラスが綺麗な教会、王宮前の憩いの場、etc.etc.。
そして、
「──よろしいかしら?」
「どうぞ。長くても、一時間以内にしてくださいよ」
「ええ、ありがとう」
王都を囲う城壁の展望台に続く階段の前。門番兵とは顔見知りで、前以て話は通してある。私はシャロルと共に城壁の展望台に出て、夕日に染まる王都を見渡す。
「ふふふ、壮観ね」
「はい、お嬢さま」
私たちは髪を風に遊ばせながら、眼下の王都の景色を眺めた。
吹きゆく風を調べとして、暫くは程良い沈黙が場を支配する。
どれくらい、そうしていたか。気付くと、太陽は半分以上が地平線の彼方。
「お嬢さま、そろそろ、屋敷に戻りましょう」
「そうね」
後ろ髪を引かれる思いだが、私たちは城壁の展望台を後にする。
「ただいま、戻りました」
私は屋敷に戻ると、
「お帰りなさいませ、お嬢さま」
スチュワートのゲイルが出迎えた。
お父様は国の財務の一翼を担う重要職故に忙しく、代わってスチュワードのゲイルが我が家を取り仕切っている。
「この度は、ご卒業、おめでとうございます」
「ええ、ありがとう」
ああ、きっとゲイルは、明日からはビシバシ来るのであろう。なにしろ、私は一人っ子だ。下世話な話、お母様が嫡男を妊娠してくれたら……。ああ、今夜の和やかなゲイルの笑顔が恨めしい。
階段を上がり、途中でシャロルは自らの部屋へ。そして、私も自室に入る。
「……あら? 部屋を間違えた?」




