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君に捧げる天からの極意  作者: さいとう一行(かずゆき)


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見上げる空と響く声

昼休みも近づく頃、お日様が高い位置に登る。

五月の爽やかな陽射しが、倉庫の天井にある天窓の隙間から、埃の舞うコンクリートの床へと真っ直ぐに差し込んでいた。

ピッキングの手を一瞬止め、思わず天窓から見える空を見上げた。

(こんなに清々しい青空なのに……)

四月に新卒で入社してからというもの、毎日の仕事といえばトイレ掃除と顧客データの整理、そしてこの地味な仕分け作業ばかり。早く一人前になって格好良く現場を仕切りたいのに、現実は薄暗い倉庫の中だ。心奪われるように青空を見つめていると、静かな倉庫に鋭い雷が落ちた。

「お~い。まだかぁ~! スピードも考えてやらなきゃ昼休みなくなるぞ!」

「あっ!」

先輩の一言に、俺は弾かれたように我に返った。

慌てて腕時計に目をやると、長針はすでに十一時半を回っている。あと三十分で待ちに待った昼ご飯だ。

「すみません!」

俺は出荷伝票を握り直し、棚にある商品を探しながら猛スピードで動き出した。

しかし、ここからが本当の試練だった。これから目の前のカゴ台車に積み込む予定の商品は、大きさも、形も、奥行きもバラバラな、大小様々な商品たちだ。カテゴリー毎に綺麗に、後からドライバーさんが取り出しやすいように並べようとすればするほど、どうしても時間がかかってしまう。チクタクと迫るタイムリミットに、心臓のバクバクが止まらない。

額にじっとりと汗を滲ませながら、通路を走り回り、どうにか全ての伝票の商品をカゴ台車に積み込むことは出来た。

「……終わりました!」

息を切らせて報告する俺の横で、ベテランの先輩がカゴ台車を一瞥する。そして、ぽつりと言った。

「積み方が悪いぞ〜」

ガーンと頭を殴られたような衝撃が走る。

「スピードとは言ったが、適当にとは言っていない。……まぁ、早かったのは褒めるがな(笑)」

先輩はそう言ってニカッと笑うと、俺の肩をポンと叩いた。

「まぁ〜、ここは俺がやり直すから、お前は先に昼休みに入れよ!」

言い方はきついしぶっきらぼうだけれど、俺の体力を気遣って、自分の手を動かして休憩に行かせてくれたのだ。

「……ありがとうございます」

お辞儀をして、俺は重い足取りで休憩室へと向かった。

だけど、胸の奥にはモヤモヤとした感情が渦巻いていた。

(なんでだよ~! 早くしろって言ってたから、必死に早くしたのに……)

給湯器から注いだお湯が、カップラーメンの火傷しそうな熱さとともに、俺の頑なな心に染みていく。三分待ってすするラーメンのスープは、いつもより少し塩辛く感じた。

自分の頑張りが空回りした悔しさと、「綺麗さとスピードなんて両立できるわけないだろ」という少しの苛立ち。それをどうしても隠しきれないまま、俺は冷めたおにぎりとカップラーメンを交互に口に運び、苦い味のする昼ご飯を食べ進めた。

(第一章.完)

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