5.5話(朔side)
ふとした瞬間、やけに静かだと思った。
原因はわかりきっていた。
わかっていたのに気づくのが遅すぎた。
何が楽しいのかいつも部室に来ては騒がしかった日和が今この場にいない。
……もう、来てくれないかもしれない。
「俺があの日…」
俺があの日、千春を追いかけたせいだ。
日和の思いに気付いてないわけじゃなかったのに、気付かないふりをした。
我ながら最低だ。
こんなやつ嫌われて当然だと思う。
千春にも怒られた。
「ちゃんと謝らなかったの?」
「私を優先するなんてバカなの?」って
誰のせいだと…いや、俺のせいだ…。
「………はぁ」
仕事が全く捗らない。
何をどう謝ればいいのか、
そもそも謝って許されることなのか。
俺は日和とどうなりたいのか。
考えれば考えるほどわからないことが増えていく。
日和のことは嫌いじゃない。
むしろ日和との時間は俺にとっては数少ない楽しいと思える時間だった。
でも過去に千春に向けていたものとは違う。
「ちょっと!…先輩!」
ふと日和の声が聞こえて、反射的に立ち上がっていた。
来てくれたのかと急いで部室のドアを開けようとして手が止まった。
続いて聞こえてきたのが日和の声だけじゃなかったからだ。
「彰先輩!揶揄わないでください!」
「えー?俺はいいと思うよ?白のパンツも」
「最低!!!!!!」
バタバタと廊下を走っていく音。
この教室から遠ざかっていくそれに頭が痛くなった。
「はっ…来るわけ、ないだろ…」
あまりの情けなさに肩の力が抜けた。
日和は俺じゃなくても普通に笑って怒る。
むしろ彰といるほうが自然体なんじゃないだろうか。
思えば俺はいつも日和に気を遣われていた。
彼女は、俺の好きなこと、俺が喜ぶことばかりをしようとしてくれていた。
「俺は何してたんだろうな…」
デートの時がそうだ。
全部俺の好きなものばかり。
日和の好きなものなんて何もなかった。
それがやけに腹立たしかった。
……本当は、2人で楽しみたかったのに。
俺だって日和を喜ばせたかった。
傷つけたかったわけじゃない。
…そこまで考えて、ようやく気づく。
ずっと目を逸らしてたけどこんなのはもうとっくに…
とっくに俺は日和が好きだったじゃないか。
「は…ははっ…」
笑うしかない、何もかも遅すぎた。
今更気づいたって日和はもうここに来てはくれないのに…。




