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大罪魔女の落ちこぼれ   作者: ゆずきあすか
カトレア魔法学園 編
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14/29

Episode13.5 影の刺客

 ――同時刻、屋上にて。


「はっはっは……ついに動き出したかっ!」


 学園を見下ろす高所で、愉快そうな声が弾んだ。混乱と悲鳴が渦巻く中庭を、まるで芝居の舞台でも眺めるように。

 その人物を、フローレンスは物陰から静かに観察していた。


「(――情報にない人物。騒動を引き起こした者たちの仲間か、それとも別の第三者か)」


 注意深く、そして相手に悟られないように、息を殺す。


「(どっちにしろ……厄介だ。何せ相手に魔力を感じ取れない)」

「余興が乗ってきたな……だが、さっきからコソコソと見られていると、どうにも気が散る」

「――っ!?」


 背筋が、凍りつく。

 これ以上の潜伏は危険だと判断したフローレンスは、自ら姿を現す事にした。


「いやいや、すみません。学園内に突然魔獣が現れて……逃げてきたんですが……。屋上には先客がいらしたので、驚いて、つい反射的に……あはは」


 現すと言っても来客のフリをして。


「口が達者なようだな。まあいい、貴様も観戦するか?」


 この男は状況を愉しんでいる。危険な人物に変わりはない……先手必勝!

 

「いえ、僕はもっと安全な場所へ避難しますよ――」


 フローレンスは、呼吸を整えながら距離を詰める。

 ――射程に入った。


「虚弓(ヴォイドボルグ)」


 小声で魔法を発動されせると同時に、魔力が凝縮される。手の中に現れた弓と矢。後ろで腕を組んだ状態で矢を放つ。彼の扱う魔法、虚弓(ヴォイドボルグ)は必中魔法。また魔力で構成されているため、そもそも魔力を持たない人間からは認識されない。

 勝ちを過信した時だった。


「……鬱陶しい羽虫だ」


 男が腕を振り下ろした次の瞬間。

 ――空間が砕けた。見えないはずの矢が可視化され、圧し潰されるように破壊される。


「……っ!?」

「はぁ……愚者の力が、この程度とはな。少々、期待外れだ」


 男の発言にフローレンスは同様を露わにした。


「……なぜ知っている。僕の正体を」

「さあな。なぜだろうな」


 男は肩の力を抜いたまま、両腕を軽く持ち上げる。肘は少し外に張り、手のひらは上へ向けて開かれていた。如何にも、わざとらしいとぼけ方だった。

 そのとき――袖がずれ、腕に刻まれた紋様が覗いた。


「その紋様。まさか……黄昏(トワイライト)か……!」


 黄昏(トワイライト)は、大きな犯罪組織、密輸団の名前。組織の中でも幹部以上が証として刻まれる、黄昏の模様。


「儂は貴様と戦う気はない。今日は、観戦に来ただけだ」

「……観戦だと?」

「だから――手出しはするなよ」


 圧が、空気を押し潰す。

 危険過ぎる。この脅威は、最悪の事態を招く存在……カルミアくん、ヒバナ……。

 胸が、締め付けられる。


「(ごめん……僕は、ここで死ぬかもしれない。相手は格上。それでも――今、退けば二人を守る事は出来なくなる)」


 フローレンスが、再び魔力を練り上げた、その瞬間。


 ――ゴゴゴゴゴゴッ!!

 大地が、唸った。


「今度は何ですか!?」

「……チッ。まがい物か。せっかくの観戦が台無しではないか」


 男が、低く呟く。

 異変は、その場にいた全員が同時に感じ取った。空気が揺れ、呼吸がわずかに乱れる。

 フローレンスと男の視線は、中庭の二人へと向けられた。

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