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(本編完結・番外編更新中)大好きな人たちのために私ができること  作者: 水無月 あん
番外編

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番外編 20. ある子息の初恋

メアリーがささやいた言葉が辛くて、動揺が隠せない。


「あら、ご気分でもお悪いの?」


心配そうに声をかけてきたブルーノ子爵夫人。


確かに、気分は最悪だけど……。


今、ブルーノ子爵夫人の前で、「気分が悪いから帰りたい」と言ったとしても、メアリーは何か理由をつけて、ここから離れないだろう。

アーノルド様がいるから……。


そんなことを考えてしまい、更に気持ちが沈む。


顔にあからさまにでてしまったのか、さすがに、メアリーが心配そうに僕に聞いてきた。


「ジョイス、もし気分が悪いのなら、あそこに椅子があるわ。少し座る?」

と、壁際に並ぶ椅子のほうを手で示した。


今僕たちが立っている場所からすれば、アーノルド様のいる位置からは反対方向にある椅子。

あの椅子にすわれば、アーノルド様の姿は見えないし、声も聞こえないだろう。


僕の顔をじっと見るメアリー。

その顔は、確かに、僕を心配してくれていると思う。


アーノルド様がいるから、メアリーはここから離れないだろうと思うけれど、もしかしたら……もしかしたら……僕を心配して、メアリーはついてきてくれるかもしれない。


アーノルド様より僕を優先してくれるかもしれない。


いや、でもやっぱり、アーノルド様がいるかぎり、メアリーは離れないのか……?


でも、もしかしたら……。


気持ちがぐらぐらとゆれる。


「ジョイス、大丈夫?」


心配そうに、僕の顔をのぞきこんできたメアリー。


「じゃあ、少し座ろうかな……。メアリーもあっちで一緒に座らないか……?」


お願いだ、そうしてくれ……と必死で願いながら、僕は思い切ってメアリーに問いかけた。


「……いえ、ジョイスだけ座ってきて。私はもう少しここにいるわ。こんなに近くで王子妃のリンダ様を見る機会もそうないでしょうから、もう少し見ていたいの。後で行くから」


メアリーは申し訳なさそうな顔をしながらも、断固とした口調で言った。


やっぱりか……。

やっぱり、僕は選ばれないんだな……。


王子妃リンダ様を見ていたいと言ったメアリー。

でも、本当に見ていたいのはアーノルド様だと嫌でもわかる。


「……それなら、僕もここにいる」


「座らなくても大丈夫なの、ジョイス?」


「ああ、大丈夫だ。僕はメアリーのそばにいる」


アーノルド様が近くにいるのに、メアリーをひとりにはできない。


僕たちの様子を見ていたブルーノ子爵夫人が笑いながら言った。


「なんて仲睦まじいのかしら。ジョイスさんは片時も離れたくないほど、メアリーさんのことが大事なのね」


「ええ、とても大事です」


なによりも大事だ。

メアリーがいなければ、きっと、僕の心は消えてなくなってしまう。


だから、たとえ、メアリーの心にだれがいたとしても、このまま僕のそばにいてほしい……。


僕の悲痛な思いがにじみでていたのか、一瞬、驚いたような顔をしたブルーノ子爵夫人。

が、すぐに、笑顔になった。


「まあ! これほど愛されて、メアリーさんはお幸せね」


「ジョイスは優しい人ですから……」


メアリーがそう言って微笑んだ時だった。


「……それでは、僕は失礼します」


向こうから聞こえてきたアーノルド様の声に、はじかれるようにメアリーが体の向きを変えた。


「ちょっと待て、アーノルド! 帰るって……、今、来たばかりだろう!?」


驚いたように、大きな声をあげたオズワルド様。


「おふたりにご挨拶するだけのつもりでしたから」


「いや、ダメだ、アーノルド。……今、帰られたら困る!」


「困る? なぜです?」


「実は、アーノルドに贈り物があるんだ」


「贈り物? オズワルド様が僕に……? ご結婚のお祝いに贈り物をするのは僕のほうでは……」


「リンダの国では、自分にとって喜ばしいことがあった時には、家族や友人に贈り物をする風習があるらしい。そうだよな、リンダ」


オズワルド様に問いかけられたリンダ様がうなずいた。


「ええ。自分の大切な人たちに、心をこめて贈り物をするんです。自分の幸運をわけるために」


「リンダの国を見習って、私もアーノルドにとっておきの贈り物を用意したんだ。だが、その贈り物は、今日、渡さないと意味がない。アーノルドが来てくれて良かったよ」


オズワルド様の従者らしき人がオズワルド様に近寄り、なにかをささやくと、オズワルド様は満面の笑みを浮かべて、うなずいた。


「どうやら贈り物の準備が整ったようだ。アーノルド、少し待っていてくれ。私が贈り物を運んでこよう。アーノルドに幸運をわけるためには、私自身がしっかり届けないといけないからな」


「オズワルド様。私も一緒にいきますわ。オズワルド様にとって大事な方は、私にとっても大事ですから」


「リンダ、ありがとう」


そう言うと、ふたりは連れ立って、広間からでていった。


ひとり取り残された形のアーノルド様。


まわりの令嬢たちが、ざわつきはじめた。

声をかけたいのか、アーノルド様に少しずつ近づいていく令嬢もいる。


次の瞬間、メアリーが動いた。




長い間、お休みしていましたが、不定期ですが更新を再開します。よろしくお願いいたします。

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