異世界転生
Prolog
彼女は、ただただ平凡な日常を過ごしていた。
「まぢありえねぇwwwww」
……ごほんげふん。いやこれは放っておきましょう。
さて、ここからが本題です。
この物語の主人公は、時代遅れすぎるナルシストのギャルでした。
自称、超絶美女。自称、天才。流行語のアップデートは、十年前で止まっています。毎朝、鏡に向かって「今日も私、罪な女」とつぶやき、口癖は「天才すぎて困っちゃう☆」。誰も困っていません。
その夜も、彼女は友達と橋の上でだらだらしていました。
「はーガチつまんねぇ」
「ワンチャン、ここからダイブしてみたらー?ww」
「ありwやってみるわwww」
友達は、言ってみただけでした。
ここで、賢明な読者のみなさんは思うでしょう。ありじゃない、と。
しかし彼女は、天才(自称)でした。ノリと勢いだけで欄干に足をかけ、夜の川へ、それはもう華麗に、
飛びました。
友達の「え、マジでやるの?」は、間に合いませんでした。
結果から言いましょう。ワンチャンは、ありませんでした。
そこから先は、こちらの担当になりました。
本来なら、ここで神々しい誰かが登場して、「あなたは死んでしまいました」と説明する場面です。ですが、面倒なので省きました。チュートリアルも、説明書もありません。自己責任です。
そして、ほんの少しだけ、手違いがありました。ほんの少しです。細かいことは気にしないでください。
かくして、彼女の魂は、ふわりと異世界へ。
落ちた先は、石造りの橋の下でした。
「あったたたたぁ……」
無事に、転生したのです。
「……ん? なんか、空気がくさい」
すう、と息を吸って、彼女はむせました。
「はっ、まって!? 私、くっそ臭いんだが!?」
その声は、ガラガラの、おっさんの声でした。
……いや、こやつを転生させるべきではなかったな。




