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“あの日”  作者: 一条 幸
9/9

未来

 ー 数年後 ー


「永遠、もう朝だよ起きて!」


「ん~…陽向、おはよう。」


 カーテンを開けると眩しい日差しが

 部屋に入り込む。


 窓を開けて空気を入れ替える。


「もう朝ご飯できてるよ。」


 食パンにベーコンと卵を乗せ仕上げにブラックペッパーを一振り、これが彼のお好みの味。


「陽向、いつもありがとうね。」


「どうしたの?改まって。」


 永遠がそんな事を言うなんて、聞いているこっちが照れくさい気持ちになる。


「今日の夜、大切な話があるんだ。

 だから今夜は早く帰ってきて欲しい。」


「……分かった。」


 それで彼の態度はおかしかったのか。

 然し、大切な話って一体何なのだろう。

 全く思い当たる節も無く必要以上に気になってしまう。


 彼は仕事へ行き、一人になってしまった私は家事を淡々と熟していた。

 いつもは直ぐに過ぎ去る時間も今日は一分一秒が長く感じた。


 昼からは夕方までのパートがあり、

 仕事を終わらせると直ぐに帰ってきた。

 するといつもは帰りが遅いはずの彼の姿が

 そこにはあった。


「陽向、お帰り。」


 笑顔で言う彼をみて、

 悪い話では無さそうだという予想はついた。


 ソファーに深く腰を掛け顔を覗き込んだ。

 すると彼は小さく微笑み私の手を握った。


「陽向、子供が欲しいとは思わない?」


「……え?」


 予想の斜め上をいく質問に私は思わず戸惑ってしまう。

 何故なら私は以前、子供が作れない体だと言われているからだ。


「作ろうという提案じゃなくて、買いたいと思っているんだ。」


 そこで彼の考えている事が分かった気がした。


 彼はロボット会社で勤務しており、

 感情を持つ人間とそっくりのロボットの開発に成功したと以前聞いた事があった。


 そして最近になって

 永遠の夢でもあった製品化が実現したらしい。


 ニュースや新聞で今話題沸騰中だと親友の咲良から聞いたが、私は世間の出来事に疎いので自分の目や耳で感じた事は無かった。


 きっとそのロボットを買わないか、

 という提案なんだろう。


 複雑な気持ちではあるが2人よりは3人の方が

 家も賑やかになるはずだ。


 想像していくうちに

 これからの日々が楽しみになっていた。


「永遠の会社のロボットの事だよね?

 いいよ、買おうよ!」


 やっぱり気がついてたのか、と少し引き攣った笑顔をする彼は、私が賛成するとガッツポーズをして喜んでいた。


 すると彼は鞄からカタログを出して

 どの子にする?と聞いてきた。


 数年前まではこんな光景誰が予想しただろうか、機械化が進む事が良い事なのか悪い事なのか昔の日本を知る私は複雑な気持ちになる。


 日付が変わる頃まで悩み、

 二人で決めたのは小学5年生の女の子。


 優しくて人懐っこい性格の子だった。

 名前は優しい子に因んで「優子」と名付けた。


 在り来りたりな名前に迷いはあったが、

 自分が親となると子供に優子と付けたくなる

 気持ちが分かった。


「明日は仕事休みだから、この子を引き取りに行こう。」


「うん!」


 待ち遠しくて思わず大きな声が出てしまう。

 ベッドに入っても、遠足の前日の様なふわふわした気持ちで中々寝付けない。


 これからの生活が一変すると思うと

 不安な気持ちが溢れ出てきてしまう。


 然しその不安は、

 優子と会うと直ぐに消える事となった。



 翌日の朝、

 車で永遠の仕事先に向かった。

 これから家族の一員となるロボットを引き取りに来たのだ。


 すると永遠が連れてきた女の子は

 ぱっちり二重で、髪の毛をいちごのヘアゴムで束ねた可愛らしい子だった。


 何より全くロボットに見えない。

 人間と全く区別が付かず、現代の技術の高さに圧倒されてしまう。


「この子だよ、

 もう名前は登録してあるから呼んであげて。」


 永遠にそう言われて

 私は不安げなか細い声で彼女を呼んだ。


「優子?」


「お母さん!!!」


 すると優子は笑顔で此方に駆け寄り

 会いたかったと抱きついてきた。


 なんて可愛くていい子なの、

 私は思わず口が開いてしまい急いで手で覆う。


「早くおうちに帰りたい!」


 優子はそう言って私の腕を掴み出口へと足を向ける。

 そんな光景を永遠が後ろから見守っていた。



――――――――――――――――――――



 一方その頃、永遠は社員と話をしていた。


「あの後どうなったんすか?」

 今年入って来たばかりの新人が興味を示す。


「製作会社から製品化の同意が来たんだ。

 その後一番の問題、はロボット1号の陽向をどうするかという話になってな。」


「それでどうしたんすか?」


 少し舐めたような口調が鼻に触るが話を続ける。


「これからの技術向上の為にも残しておく方針になったんだ。そこで彼女が見たこの世界の闇の記憶は全てDELETEし、俺と付き合っていた時期と咲良との仲も良い時期だけを残した。」


「それで今ではロボットと結婚して一緒に暮らしていると言うことっすか?」


「あぁ、そういう事だ。

 俺はこの先の人生ロボットに費やすと決めていたし丁度良かったよ。」


 ロボットの製品化が実現した今、

法律が改正され他種との婚約(国家認定ロボットのみ)は可能となっている。


「ロボットと結婚してロボットの子供を買って、しんどくないんすか?」


 普通はこう思うだろう。

 もし僕がこいつと逆の立場だったらきっと同じ事を思っているはずだ。


「ロボット同士が共存すればどうなるのか、

 その実験でもあるんだよ。」


「でもロボットは自分を人間だと思っているんですよね?だったら何も起こらないのが妥当なんじゃないんすか?」


 痛い所をつかれて思わず言葉に詰まってしまったが、まあまあと受け流しその場を去った。


 本当はそうじゃない。

 本当は……ロボット(陽向)に恋をしたんだ。


 実験をしている中でいつしか陽向に

 本当の恋心を抱くようになっていた。


 然し、この心を誰に打ち明ける事も出来ずに

 今もこうやって嘘をついては誤魔化したいた。


 ロボットが人間に近づき恋をする様に、

 人間もロボットに恋をすることがある。

 という新しい検査結果も出たが、この結果は私の心の中に大事に閉まっておく事としよう。


「お父さん!」

「永遠、もう帰るよ?」


 愛する家族の声が聞こえ、私は出口へ急ぐ。


 これからの新しい生活が一体どうなるのか、

 俺も陽向も今ではきっと不安より楽しみが勝っている。


 車に乗り込み、一声かける。

「お待たせしました、じゃあ行こうか。」


 シートベルトをして後ろを見ると、妻と子供が笑顔で此方を見つめている。

 幸せとはこういう事なんだろう、そう思いながら私は口を開く。


「出発ー?」


「進行!!!」

 家族全員で声を揃えて言った言葉。


 その言葉と共に、

 愛する我が家へとアクセルを踏みだした。


平凡な日常がいつまでも続くとは限らない。

もしかしたらそこの貴方も私もこの世界の実験台で、私達は知らないうちに試されているかもしれません。

世界の闇を知り絶望する日が私達を襲うかも知れません。


大切なのは、平凡な日常が実は恵まれている事。

何かを思う心で奇跡は起こるかもしれない。


変わりゆく世界の中で大切なものを見つける事の難しさ、大切さ、を感じて頂けたでしょうか。


拙い文章の中読んで下さった皆様、

有難う御座いました。

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