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幻想師エルの波乱な先憂  作者: 狸ノ腹
エルの誕生
10/11

9 悟った日

[災暦(さいれき)1482年8月1日2:00]


『ガチャ……』


 お父さんが国王の元へ、私から逃げるように出ていってから日をまたぎ――深夜。

 静かに部屋へ帰ってきたお父さんに気づき目を覚ます。

 首にかかっている認証盤につく記録石に触れ時間を確認すれば午前2時過ぎ。


 今までの世界であれば7月30日の次の日は31日のはずだが、この世界では1月から11月は全て30日。12月だけ31日。

 ちなみに、この世界の四季は日本と同じようで、この部屋自体は暑くないが、時々開かれる扉の外からは暖かい風が中に入ってくる。


(お父さん!)

「やれやれ。起こしてしまったか。やっと仕事を終えて、一息つけると思ったんだがな……」

(話してから一息ついてください!)


 ため息を吐きながら、疲れた顔でこちらのことを見てくるお父さんに対して、何故話してもいない私の過去について知っているのかを問いた出す。


「なら簡潔に説明するが、さっき――と言うか、昨日の昼に魂と肉体は別だと話したが。儂はお前と精神魔術によって、会話をしているが、それはお前の考えていることを言葉として聞いている訳じゃない。儂自身がお前の一部となることで、お前の考えや思考を理解しているだけに過ぎない」

(それって、具体的にはどう言うこと?)

「ややこしい言い方をするが、私の魂の一部を精神魔術によってお前の魂とつなげることで儂自身がお前となっていると言うことだ」


 ますます。理解しづらいのだが……

 つまりは、お父さんは私の一部になることで、その記憶をかいま見てると言うことなのだろうか?


「『かいま見てる』と、言うよりも。儂自身が経験したこととして思い出しているといった方が近いな」

(何それ、気持ち悪い……)


 顔をしかめて、お父さんのことを見る。


(それじゃぁ、なに? ーー最初から私の過去を知ってたってこと?)

「いや、そう言う訳ではない。お前と魂をつなげる時間が長いせいで、眠っている時に夢でお前の過去を少し見てしまっただけだ」

(具体的には何を見たの?)

「恐らくはお前の旦那となった男との出会いと、お前の殺された日の死の瞬間ぐらいだ……」

(それだけ?)

「あぁ、それと、どのような人物かは知らんが知音(かずね)という者の姿を何度か見たな」

(お父さん……)


 きっともう言わなくてもわかっているのだろうが、これ以上過去を見られるのは嫌だ。

 単純に自分の全てを見られているよう感覚だけでも嫌なのに、あいつのことを――四相 知音(しそう かずね)のことを知られ。思い出してしまう要因となるのはより嫌だ。

 それならばいっそ会話ができない方がまだマシだろう。


「いいのか? どう頑張っても喋れるようになるまでには、2ヶ月程はかかるぞ。その間言いたいことがあってもおそらく儂には理解できん」

(聞かなくても、もう回答は分かってるでしょ? それに……って、2ヶ月で喋れるようになるってどういうこと!?)


 赤ちゃんが喋れるようになるのは大体1年前後からのはずだが……いや。よく考えれば何故今私は目が普通に見えてるんだ?


「エルよ……」


 呆れたような顔でこちらのことをお父さんが見ながら。


「目が見えるのは『環境適応』アビリティのおかげで、今こうして儂と会話ができているのも『言語理解』があるからだ。だから、発音さえできればすぐに喋られるようになるはずだぞ」

(なんでもっと早く教えてくれなかったの!?)

「流石にその程度のことは気づいているだろうと思っていたのだが……本心を言えば、儂がお前という人間がどのような者なのかを知りたかったのもあるな」

(…………)


 反論できない。言われてみれば確かに気づいていても良かったはずだ。それなのに気づかなかったのは、私自身のせいでお父さんに怒るのは違う――か……


「納得したか?」

(したよ。でも魔術は)

「――わかっとる。魔術は解く」


 お父さんはそう言うと私の額に手を当て、すぐにその手を離した。


「これで術は解いた。だから儂に、お前の言葉は通じない。いいな?」


 頭を縦に振って大丈夫だと言うことを伝える。


「よし。それならできるだけ早く喋れるようになれ。一人でお前に語りかけるのは儂もつらいし、お前は嫌だろう?」


 何故かお父さんはニヤニヤし始め。


「それじゃぁ、儂は少し寝るが。起きたら魔法やこの世界の歴史について日が暮れるまで語ろう。そうだ! お前が嫌がっていた風呂にも入れなければな!」

「ふぁげえなぁー!」

「ほう。なんと言っているかわからんが、それだけ大きな声が出せるのなら、近いうちに喋れるな」


 まずい……非常にまずい……

「ふざけるなと」言ったつもりなのだが、通じていない。

 と、言うより――通じているが、発音が悪いのを理由にして、通じていないと解釈されている。

 早く言葉が喋れるようにならないと、このままではお父さんに、もてあそばれる!!


「うん。そうだな風呂に入ろう。男同士だ恥ずかしいことはなかろう? 大浴場に行くのは初めてだろ……男のは、いい経験になるぞ?」

「やぁーー!!」

「ハハハハハ。まるで嫌がってるようだ!」


 私が嫌がって涙を流している様子を見ながら、声を出して笑いながら笑い。


「これからが楽しみだ」


 と、言いながら。

 お父さんは私の体を抱き上げ、男性用の大浴場へと向かって歩き出しーー私がその先で見たものは……

 もう二度と忘れることができない記憶として、私の心へ深く刻み込まれることとなった。


 誤字脱字わからない表現があれば教えてください。

 意見大歓迎です。ありがたく読ませてもらいます。

 順次修正して行きます。

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