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ささっとシャワーを浴びて戻ってくると、秀一くんは胡座をかいて漫画を読んでいた。

ちらりとピンクの表紙が覗く。

うんうん、こっそり用意していた漫画を素直に読んでいるようだねえ。

どうやらもうすぐ1巻が読み終わりそうな気配を感じる。

いいね〜!なかなか良い集中力だよ〜!


そばに近づいても気付かず漫画に集中している秀一くんに満足しつつ、ドライヤーをつける。

流石にその音はしっかり聞こえたようで、慌てて振り返った。

その時素早く手にしていた漫画を下に置いたけど、もしかして少女漫画を読むのは初めてだったのかな?

髪を熱風に靡かせながらニヤリと笑うと、秀一くんはムッと顔をしかめて正面に向き直り、また漫画を手に取った。


わたしの髪の毛は肩に少しつくぐらいまで伸びていて、夏場といえど乾かすのにちょっと時間がかかる。

うーんそろそろわたしも秀一くんを見習って切りに行こうかな。でも一度短くするとなかなか伸ばせないよねー。

様子を見ていると、1巻を読み終わったのか、2巻に手を伸ばしていた。

うふふ、これは全巻お持ち帰り決定だね。


「さて」


大体乾いた感じがするのでドライヤーを止める。あとは自然乾燥にまかせる。

わたしは冷蔵庫から麦茶とビールとおつまみを持ち出してローテーブルに置いた。

よーし晩酌だ!とはいっても秀一くんは未成年なのでお茶だけどね〜。

わたしが麦酒なので、麦茶にしてみました。


「はい、秀一くんこれ良かったら飲んで」

「…あ、すいませんお構いなく」

「ないない、構ってないから。わたしの晩酌に付き合ってもらうだけだから。それともその漫画の続き読んでたい〜?気持ちはわかるけど!」


にやにや笑うと秀一くんは眉をしかめて「杏花さん、花火大会の時も飲んでたのにまた飲むんですか?」と言いながら漫画をやめて向き直った。

なんだかんだ言いつつ付き合ってくれるつもりらしい。紳士だね〜。


「それはそれ、これはこれ。風呂の後のビールの味がわからないんじゃあ、君もまだ子供だね!」

「子供ですからね…」


呆れたように言って秀一くんは麦茶に口をつけた。


「で、秀一くん、最近せっちゃんに冷たいんだって?」


秀一くんは麦茶を吹いた。うわ汚いな。


「ゲホッゲホッ、だっ、なっ」


わたしからティッシュを受け取りながら秀一くんは口をパクパクさせて私を見た。

おお。動揺してる。


色々考えたけど、ここは直球で行くのがいいと思ったのだ。

かなりプライベートな問題だから、遠回しに聞いてもはぐらかされそうだしねー。

素直にお母さんに頼まれたって言う方が、本音を拾えるんじゃないかな?


「せっちゃんが言ってたよ?反抗期で片付けちゃいけない気がするって悩んでた」

「母さんがそんなことを…」


秀一くんが眉間にシワを寄せてつぶやいた。


「良くわかんないけど、一度ちゃんと話した方がいいんじゃない?」


軽い感じに言ってみる。

親戚といってもよそ様の家庭の事情に首を突っ込んでいいものか、当事者から依頼されたこととはいえ迷っている部分がある。

だから無理に聞き出すんじゃなくて、もし秀一くんが何かに悩んでいて、それが自分じゃ抱えきれないくらい重くて大きいものだったら、ちょっとだけ持ってあげてもいいよ?というスタンスで行くことにしたのだ。

でも重過ぎたらどうしよう。20代でもギックリ腰になることってあるんだよね…。


「杏花さん」

「うん」

「あの、ですね…」


秀一くんはうつむきがちに、ボソリと、明日になったら聞かなかったことにできますか?と聞いてきた。


「えっとお、無理に言わなくてもいいんだからね?まあ、わたし口は軽くない方だけど…」


仕事柄ね。でも絶対とは言えないので。ペロッと出ちゃうこともあるからね?

そんな言い方するなんて、やっぱり秀一くんヤバいもの抱え込んでる!?


秀一くんは、しばらく黙って考えてから、やっぱり言うことにしたみたいだ。

ああ、どんな重い話題が飛び出すやら…!


「…母さん、恋人がいるみたいなんです」


…えっ。


「恋人?」

「はい。…しかも」

「しかも?」

「…複数いるみたいなんです」


…。

せっちゃーーーん!!


あの通り美人なので、恋人がいてもおかしくないけど!

複数て!

もしやせっちゃん悪女だったのか!?


でもなんで息子の秀一くんがそんなことを嗅ぎつけているんだ!?

せっちゃんも経験豊富だろうから気づかせないようにしてるだろうに。


「ええっと、なんでそう思ようになったのかな?」


まずはそこを聞いてみないと!秀一くんの勘違いってこともあるしね!

っていうか勘違いであって欲しいっ!


「その様子じゃ、杏花さんにも何も言ってないみたいですね…」


秀一くんはため息をついて、そんな風に考えるようになった理由を話してくれた。


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