一 始動
読んで頂きありがとうございます。
主人公 御裏 命が登場です。
学校に行こうとして異変に出逢います。
少しでも楽しんで頂けたら、自分もこの子達も幸いです^^
「グッドモーニング。さあ、お便り一枚目はペンネームのりっこさんから……」
朝の6時。ラジオから『おはようテンション』という番組が、聞きなれたBGMと共にテンションの高い男の声で流れる。
御裏 命は目を覚まし、ぼやけた頭から霧を追い払うように頭を振った。
目覚めと同時に、頭の中で軽い爆発に似た感覚。
激しく脳を揺さぶられるような衝撃を感じ、脊椎に振動が響く。
細胞が焼ける焦げ臭さが鼻の中に漂う。
頭を振ると、首の後ろから後頭部にかけてを思わず手でなぞる。
「ふぅ……いい目覚め……あれ、俺ラジオ付けたまま寝たのか?」
恐らくは本人だけが感じるであろう、脳を破壊される違和感。
何年も前から頻繁に発生し、感触を感じるだけで、実際には肉体に異常が発生していないと理解していた。
しかし何度経験しても、脳みその中で爆竹を鳴らすような、命の危機を覚える感触には、いつまでたっても慣れることが出来ない。
「私の恥ずかしい話。昔からつい最近までずっと『ねぼけまなこ』の事を『ねぼけなまこ』だと思っていました。最近、友人に話したら大笑いされて……」
ラジオから流れる、お便りを読み上げる声に御裏は独り言のように突っ込みを入れる。
「あぁ、分かる分かる……って、そんな訳ないだろ。なまこが寝るのかよ、それ以前にねぼけようにも目が無いって」
起き上がりカーテンを開けると、眩しい朝日が差し込んだ。
今日は快晴。学年が変わり春の時期、衣替え前の制服は少し暑い。
薄い下着を着て行こう。そんな事を考え、思いっきり背伸びをした。
ラジオに一瞬だけノイズが混じる。
スイッチを切ろうと手を伸ばし、異変に気づき押しかけた指を止めた。
「さあ、お便り一枚目はペンネームのりっこさんから。私の恥ずかしい話……」
先ほどと全く同じ放送が、巻き戻して再生されたかのようにラジオから流れる。
「ふぅん」
御裏は眠たい目をこすり、唇を尖らして呟く。
「同じネタを何度も聞いても面白くないな。今日は無事に学校に行けるかな……」
ため息と共にラジオを切る。
「やっぱり俺の頭、どこか故障しているのかな」
二階にある自分の部屋を出て、廊下を進み階段を降りた。
一階では朝ごはんを用意していた母親が、テーブルの端に座りパンに手を伸ばした御裏に話しかける。
「さあ、お、便り一、枚目は……」
「はいはい」
ラジオと同じ台詞を吐いた母親が眉間に皺を寄せ、再び口を開き、お便りの続きを妙なテンポと区切りで話す。
母親が実際には「おはよう」とか「ちゃんと聞きなさい」もしくは、「忘れ物は?」等といった日常会話を話し、自分だけが違うように聞こえていることを御裏は知っている。
俺やっぱり変な病気かな?
考えながらパンと目玉焼きと野菜を茹でた朝食を食べ終える。コーヒーを飲み、ラジオと化した母親に行ってきますと告げて外に出る。
通りすがりの会社員だろう、スーツ姿の男性が携帯で話している内容もラジオと同じ。自転車に乗り後ろから追い越して走り去る、大学生とおぼしき二人組もラジオと同じ会話を交わしていた。
ゴミ捨て場を漁っていたカラスが、ラジオ放送の声で鳴きながら飛んで逃げた。
「おおー新鮮、そんで新しい発見だ」
ラジオの声だが、テンポはいつものカァーカァーだった。
あまり違和感が無く、カラスはカラスだと分かる鳴き方に感心して、飛び去るカラスを眺めていた。
普通に歩いて三十分で、御裏が通う吉国史高校へ到着。生徒数は三百人弱、偏差値はそこそこ上。地元では入れば親がそれなりに安心すると言われる学校だ。
登校する生徒の波に流されるように、校門から校庭へと入る。
何事も無かったかのように歩く御裏の傍を、同級生がラジオの続きを話しながら笑顔で通り過ぎた。
校舎の入り口で立ちすくむ女子生徒の一人が視界に入り、御裏は思わず足を止める。
彼女は青ざめた表情で御裏の立つ方向、校門を見ていた。
鞄を胸の前で抱きしめ、何かを必死に訴えるような力の篭った表情でじっと立っていた。
近づいた御裏が、さりげなく声をかける。
「よう。ところで俺の声、ちゃんと聞こえてる?」
声が聞こえたのだろう、彼女は目を見開いて御裏の顔を見返す。
「きこえ……ます」
「俺もだ。どうもあちらこちらから、口を開けばラジオの声が聞こえるような気がするとか?」
「私だけじゃない……あんたも……」
「そういう事。これ聞こえているの一部の人だけだから。やり辛いだろうけど、しばらくすれば元に戻る。それまでは話が聞こえているように、適当に相槌とか打って誤魔化しときな」
それじゃ、と言って立ち去ろうとした御裏の腕を彼女が掴む。
力いっぱい掴んだ行動には、細い腕のどこにこんな力がと思わせる、本気で放さないという意思が込められていた。
彼女が御裏の制服を握り締める手が、微かに震えているのを感じた。
「んーと、怖い?」
「こ、怖いに決まってるでしょ。こ、この状況で、信じられない。一人にするの、いたいけな女の子を」
「俺も怖い、どっちかと言うと、自分でいたいけと言う君の目が据わってるから。それに困っているのはお互い様だと思うけど」
御裏は真面目で優秀な生徒ではありえず、むしろ軽く問題視されている部類だった。
艶のあるかなり長めの茶髪。背が高くスタイルは良いが制服は丈が短く、もはや別の学校の制服のような目立つ違反だらけ。
大きくて丸い綺麗な目をしているが、その視線にはどこか棘を感じる。
外見が少し怖い御裏に臆せず、初めて会話したであろう女子生徒は食って掛かる。
「あんた、いかにも強そうじゃないの。私を守ってよ」
「はぁー……いきなり何言ってるの?」
「他に頼れる人いないのよ。このまま一人でいたら頭がおかしくなりそう。この状況、普通じゃないでしょ、皆が何かに洗脳されたみたいで変だと思うよね。まさか、宇宙人が侵略してきたとか」
「あぁー宇宙人ね、それは考えた事なかったなー」
「朝起きて家からずっと同じ台詞を聞かされて、親は仕事に行って会えなかったし、学校に行けば何か分かるのかと思ったけど同じで……どうしたらいいの」
彼女は必死に御裏の顔を見つめ、真剣な眼差しで訴える。長い睫の端に薄っすらと涙を浮かべて。
一方の御裏は、俺に泣かれても……面倒なので逃げようかと思いつつ、近くで見た彼女の外見に感心を持った。
遠くから見ると控えめな印象を受けたが、色白で整った顔立ちをしている。
全体的に白く滑らかな顔つきなので、遠くからだと分からないが、目・鼻・口と立派に自己主張している。それらがバランスを取り合い、背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪が似合う……かなりの美人だった。
御裏とは正反対の、いかにも真面目そうな、注意されない程度に抑えた格好をしている。
例えるなら美術館に飾る絵に描かれそうな、日本美人とも言える外見をしていた。
どうでしたでしょうか、文章がまだまだ未熟ですね。
彼女は二人目の主人公、空色さん登場です。




