第54話 赤いオーガ
俺はハイオーガ達に向かって走りながら、【突進】を発動して加速する。
真正面の個体との距離を瞬く間に詰めると、その場で大きく跳躍して長剣を鋭く振り下ろす。
ハイオーガは咄嗟に石斧を頭上に掲げ、俺の長剣を防いだ━━ように見えたが、石斧を真っ二つに両断されてしまった。
「グォッ!?」
驚きの声を上げるハイオーガに対して、俺は着地と同時にさらに懐へ入り、腹部に回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。
ハイオーガが仲間達を巻き込んで、道の向こうへ吹き飛んでいく。
追い討ちをかけようと思ったが、巻き込まれなかった二匹のハイオーガが動き出した。左右から石斧を振り上げ、同時に迫ってくる。
俺はすぐに方向転換し、後方へ走り出す。
二匹のハイオーガが追いかけてくるが、追われている状況に限り効果を発揮する【逃走】のおかげで、みるみる差が広がっていく。
十分に距離を開けたと判断した俺は、再び方向転換し、今度は二匹のハイオーガに向かって駆け出す。
そして石斧の間合いに入った瞬間、左の個体に向かって【酸弾】を射出。
そのまま走りながら右へ向かい、岩塊をタンッタンッと駆け上がり、右の個体の首元へ向かって長剣を一閃する。
着地と同時、頭上から迫る石斧を防御するために長剣を掲げ、ハイオーガの右膝辺りに蹴りを叩き込む。
ボキッ!
「グォオオオ……!」
ハイオーガが悲痛な叫びを上げ、身体を支えるために左膝をつく。
石斧に込められた力が弱まったのを確認すると、剣身を傾けて軌道を逸らし、前方へ大きく跳躍。
痛みで苦悶の表情を浮かべるハイオーガの頭部へ、鋭く長剣を振り下ろした。
ザシュッ!
ハイオーガは頭から胸の辺りまで両断され、大量の血飛沫を上げながらゆっくりと地面に倒れた。
(残り三体!)
道の向こう側へ視線を向けると、残りのハイオーガ達がこちらへ走ってきていた。
俺も長剣に付着した血を振り落とし、全力で駆け出す。
瞬く間に距離を詰めると、左右のハイオーガが同時に石斧を振り上げた。
俺は直前で方向を変え、左の個体の足元へ向かって走る。
左の個体が慌てて石斧を振り下ろすが、俺は剣身で受け流しながら足元へ入り、足払いをかけて転倒させる。
すると、先程石斧を真っ二つに両断された真ん中の個体が、鋭く拳を突き出してきた。
俺はそれを飛び退いて回避し、岩塊をタンッタンッと駆け上がって長剣を振り下ろそうとした。
しかし、右の個体が空中の俺に狙いを定め、石斧を薙ぎ払うように振るってきた。
(チッ……)
迫る石斧を長剣で受け止めるが、踏ん張りの効かない空中だったため、そのまま大きく吹き飛ばされた。
空中で身体を捻って着地すると、俺はすぐに【突進】を発動しながら駆け出した。
無手の真ん中の個体に狙いを定めながら走り、左の個体へ向かって【酸弾】を射出する。
焼け爛れた痛みで蹲るハイオーガの方へ方向転換し、岩塊を駆け上がって、左足でその右側頭部に蹴りを叩き込む。
真ん中の個体を巻き込んで吹き飛ぶハイオーガ。しかし、巻き込まれなかった個体がこちらへ距離を詰めてきていた。
俺はハイオーガの胸へ向かって長剣を投擲した。
胸に深々と長剣が突き刺さり、痛みで一瞬動けなくなるハイオーガ。
俺は距離を詰めると大きく跳躍し、長剣の柄を足場にしてさらに跳ね上がり、ハイオーガの頭頂部に踵落としを叩き込んだ。
ドスンッ!
ハイオーガが地面に倒れる。
俺はハイオーガが握っていた石斧を奪い取り、左側から薙ぎ払うように迫ってきた巨腕を片手で受け止める。
そのまま右手の石斧を振るい、その腕を斬り落とした。
「グォオオオ……!」
大きく跳躍すると、切断面を押さえながら蹲るハイオーガの頭頂部へ向かって石斧を振り下ろす。
ザシュッ!
ハイオーガがゆっくりと地面に倒れると、その死体を踏みつけて、右側頭部を押さえながら苦しむ個体のもとへ向かう。
石斧を薙ぎ払うように振るい、腕ごと首を斬り落とした。
最後に、踵落としを叩き込んだ個体へ近づき、念のため石斧を振るってとどめを刺す。
(ふぅ……これで生き残りはいないな)
ようやく緊張が解け、束の間の静寂が訪れた。
(やっぱり、回避重視の戦い方の方がいい)
集団戦で一度足を止めてしまえば、無用な被弾が増え、そこから一気に崩される可能性が高くなる。
だからこそ、防ぐより回避した方がいい。
避け続けて主導権を握る━━その戦い方が、俺には合っている。
そしてその考えは、やはり正解だった。相応の技量と経験を備えた集団に対し、俺は大きな傷を負うことなく勝利できたのだから。
(今後も、対複数戦の時は意識するべきだな)
学びの多かったハイオーガ戦を終え、俺は疲れと空腹を満たすように、ハイオーガ達の死体を次々と喰らっていく。
『【魔法攻撃耐性】Lv.6にUPしました』
レベルの上昇はなかったが、スキルレベルは上げられた。
着実な成長を実感しながら、俺はさらに狩りを続ける。
その後も、回避に重きを置いた戦い方で搦手を防ぎ、機動力を活かしてハイオーガ達を斬り伏せていく。
気づけば、十体目のハイオーガを喰らい終えていた。
そして狩場のさらに奥へ足を踏み入れた時、新たなオーガ達と遭遇した。
一体目は……正直、オーガやハイオーガとの違いは分からない。
だが、その身から放たれる気配だけは、明らかに違っていた。幾度となく死線を潜り抜けてきた熟練の戦士のような、鋭い気配を纏っている。
二体目は、オーガにしては細身で威圧感こそないが、その眼差しには不気味な知性が感じられた。
三体目は、肌の色が赤色で荒々しい気配を纏っている。両手には、石斧はおろか、武器らしきものを何一つ持っていなかった。
(コボルトと同じく、それぞれ役割を持つ上位種か?)
経験からそう判断し、正体を明らかにするために【看破】を発動した。
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(簡略ステータス)
・オーガ・アクサー Lv.56
・平均能力値 209
・所持スキル 【格闘術】【斧術】【気配察知】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】
・オーガ・メイジ Lv.54
・平均能力値 198
・所持スキル 【火魔法】【格闘術】【気配察知】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】【魔力操作】
・オーガ・ベルセルク Lv.58
・平均能力値 223
・所持スキル 【格闘術】【狂戦士化】【気配察知】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】
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やはり、予想は当たっていた。
【斧術】に長けた前衛と【火魔法】に長けた後衛。そして、未知のスキル━━【狂戦士化】を持つ赤いオーガ。
オーガ・アクサーの戦い方は基本的にオーガ達と変わらないと思う。問題は、オーガ・メイジとオーガ・ベルセルクだ。
(いや、オーガ・メイジの【火魔法】は、異世界転生モノの知識から大体は予測できる。本当に注意しなければならないのは、オーガ・ベルセルクの【狂戦士化】だな)
改めてオーガ・ベルセルクに目を向ければ、「グルル……」と低く唸り、その瞳には理性の光が一切ない。
まるで、獲物を喰らうことしか考えていない、理性なき怪物。
(……飢えた獣の目だな)
だが、恐れることはない。未知のスキルだろうと戦って喰らえば、俺の力になる。
俺は長剣を握り直す。
すると、オーガ・ベルセルクが突然大きく口を開き━━
「グォオオオオオ!」
耳を劈くような咆哮が、響き渡った。
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