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いずれ全能の大魔王へ至る暴食者〜喰らった相手のスキルを奪い、襲い来る敵達を返り討ちにして世界最強へ〜  作者: 無名
第1章 暴食の魔王

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第1話 転生

 ━━目が覚めると、雲一つない真っ青な空が広がっていた。


 上体を起こして周囲を見渡すと、所々に低木があり、地面はほぼ草花に覆い尽くされ、そよ風に揺れていた。


 (……ここはどこだ?)


 以前の記憶では、急に交差点へ飛び出した子供に大型トラックが迫り、子供を助けようとトラックの前に飛び出した━━ところまでは覚えているのだが……。


 いつの間に、草花の上で風を感じるような、こんな心地の良い場所へ移動したのだ?


 俺の身に何が起きたのか。状況は不明だが、とりあえずこの場所から移動しなければ。


 周囲に人影がなさすぎて、心の内に不安が広がる。どこかへ向かい、安心できる場所を探したい。


 その場で立ち上がると、周囲には手掛かりが何もなかったため、東西南北どこへ向かうかを〝神様の言う通り〟で決めることにした。


 ━━結果は、東。


 真っ直ぐ進み始めると、突然背中に衝撃が走った。


 (うわっ!?)


 咄嗟に足を踏み出して堪えたので、幸い転倒することはなかった。


 すぐに背後を振り返るが、誰もいない。


 確かに、何者かに背中を押されたはずなのだが……。


 ━━と思ったら、次は腹部に痛みが走った。


 (ぐっ……なんだ、この焼けるような痛みは……)


 視線を下へ向けると、俺はまた驚くことになる。


 (えっ……! なんだ、この身体は!?)


 肌の色は薄茶色で、ぽっこりとお腹が突き出ている。そして、へその辺りに爛れた跡が。


 同時に視界へ入ってきた両手は、指が太く短く、指先は爪ではなく蹄だった。


 明らかに、見慣れた人間の身体ではない。


 背後からの奇襲と身体の異変に困惑していると、足元で何かが蠢いていた。


 内部に鉱石のような物が見え、半透明な楕円形をしたそれが、プルプルと揺れている。


 (……なんだ、これは?)


 自然と手が伸びる━━が、途中で身体に異変が起きた。


 喉が渇き、腹が減る。


 砂漠の中をしばらく歩き回った後のような渇きと、何日も食事をしていないかのような空腹感が、身体の底から猛烈に押し寄せてくる。


 口元から涎がだらだらと垂れ、腹の虫が何度も鳴く。


 足元でプルプルと揺れるそれを、食べずにはいられない。


 焼いたり茹でたりしていないのだから、理性は食べるなと訴えている。しかし強烈な本能が、食べろと囁いてくる。


 (ハァ……ハァ……もう我慢できない!)


 俺は足元のそれを両手で掴み上げると、貪るように喰らいついた。


 一口飲み込むたびに、とんでもない充足感が身体を駆け抜ける。


 今まで口にしたどんな飲み物や料理よりも美味く感じ、いつまでも食べていたい。だが、元のサイズがさほど大きくないため、あっという間に手元からなくなった。


 (あぁ……美味かった。幸せだ……)


 先ほどまで不安感に押し潰されそうだった俺はどこかへ消え、何もない草原で歓喜に震える俺がいた。


 そんな多幸感に浸っていると、突然、脳内に無機質で機械的な音声が鳴り響く。


 『【酸弾】Lv.1を獲得しました』


 (なんだなんだ? 誰が俺に話しかけているんだ?)


 しかし何度周囲を見渡しても、誰もいない。


 じゃあ、今の声はなんだったのか。


 それに、酸弾? レベル?


 というか━━レベル!?


 〝レベル〟ということは、ここはもしかして……異世界なのか!?


 今の状況は、確かに趣味で読んでいた異世界転生ものの小説と似た展開だ。


 子供を助けようと大型トラックの前へ飛び出たと思ったら意識が途絶え、気がついたらこの心地の良い草原にいた。


 となると、俺は前世で死んだことになり、身体の異変から人間以外に転生し、先ほど食べた楕円形の何かは……スライムだったのか!?


 (ふぅ……落ち着け。まず状況を整理するためにも、この場を離れないと)


 楕円形の何かがスライムだとすれば、ここにはまだ他のスライムがいるかもしれない。


 さっきはよく分からないまま食べてしまったが、戦闘を回避できるなら、それが一番だ。


 再び東へ向かって歩き出すと、右前方で楕円形の何かが飛び跳ねた。


 (やっぱり他にもいたか……左から迂回して進む━━)


 そこで俺は、再び渇きと空腹に襲われた。


 (ぐっ……なんだ。さっき食べて満たされたはずなのに。しかも、さっきよりも強烈だ……)


 腹が減った……。


 なんでもいい。


 喰らいたい……。


 プヨンプヨンと兎のように飛び跳ねて近づいてきた楕円形のそれを、俺は両手で鷲掴みにし、大きく口を開けて口元へ運んだ。


 グニャリ、グニャリ、ゴクッ。


 (あぁ……満たされる……)


 俺はその場で歓喜に打ち震えた。


 『Lv.1にUPしました』


 『【物理攻撃耐性】Lv.2にUPしました』


 ……間違いない。


 レベルとスキルレベルの上昇を告げるアナウンスが、確かに聞こえた。


 ここは異世界で確定だ。


 しかし……先ほどから感じる渇きや空腹はなんなのだ?


 楕円形の何か━━スライム(暫定)を視認するたびに、貪りたい衝動に駆られる。しかも、先ほどより衝動が強くなっている。


 自分の置かれた状況を整理するためにも、どこか腰を据えられる場所を探したい。


 俺は少しはマシになった衝動を抑えながら、再び歩き始めた。

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