3 影を操りし者(後編)
景虎は蓮の姿をジーっと見る。
「俺様を捕まえるだってぇ〜、テメェに俺様の事を教えてやろう」
「言わなくてもいい!大石景虎Level4だ」
「クッ、クハハハハァ!こいつは傑作だ。俺様の事を知っていてこの行動は!で、テメェは?」
「俺か?俺は灰村だ。Levelは1だな」
更に景虎は笑い出した。
「テメェ、おもしれえよ!ホントに。折角だ、俺様の能力を教えてやる」
「言わなくても分かる。ちゃんと調べてあるからな」
「調べていてこれかぁ。じゃあ殺されても文句はねぇよなぁ」
すると景虎は影を伸ばして蓮の体を捕まえようとするが、蓮は簡単に躱した。
だが今度は影が無数に分かれてムチの様に蓮を襲う。
しかし蓮は左手で全ての影を払うと、景虎のNAはキャンセルされた。
「?・・・何だ、テメェの能力は?」
「わざわざ教える必要はあるのか?」
すると蓮は景虎に右の掌を向けると景虎が吹き飛び、壁に貼り付き動けなくなる。
そして徐々に蓮は景虎に近づくと、景虎はどんどん押し潰されていく。
「テ、テメェ!Level1何て嘘言いやがって!殺すぞ!!」
「嘘はついてない、お前が自分能力やLevelに過信しすぎた結果だ」
「お、俺様にこんな事して後で後悔するぞ」
「俺は自分のする事に後悔しない質でね」
蓮はそのまま景虎を空高く上げ叩き落とした。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「お前が何を求めたいのかは知らないが、もうお前には母親はいないし、お前がしている事はただの八つ当たりに過ぎない。あまり正義を気取るんじゃねぇ」
「この世のクソ女共は自分の事しか考えねぇ!テメェで産んだ子すら•••」
「お前にぃッ!殺されていった女性の何が分かる」
「うるせえぇぇぇぇぇぇぇぇ!テメェぇぇぇぇぇぇ」
影が蓮を包み込む。
蓮の視界は遮られる。
「オイッ!どうだ、何も視えないだろう」
パンッ!
影が消える。
「何故だ?俺の影が何故消える?」
蓮は一瞬で景虎の間合いに入り込む、十数発の拳を叩き込んだ。
景虎はその場で気絶した。
蓮はそのまま景虎の頭を右手で掴むと、5分程そのまま動かなかった。
しばらくして美姫が戻ってきた。
「蓮さん、もう終わったんですか?」
「ああ、ついでに能力を奪い記憶を消しておいた」
「母親の記憶ですか?」
「ああ」
「それは今後の為ですか?それとも景虎の為ですか?」
「どっちだろうな」
そして蓮は葵に連絡を入れた。
一時間後、葵が景虎を引き取りに来た。
「お疲れ様、蓮」
「ああ」
「報酬の1億円ね」
「葵、能力は奪っておいたからARは必要無いぞ」
「ありがとう、だから蓮に依頼したってのもあるけどね。たまにはデートでもしましょ、暇な日でも」
「暇な日なんて無いだろ」
「それもそうね。じゃあね蓮」
そして葵は気を失った景虎に手錠をかけて帰っていった。
ARとはアビリティレベルを約3段階封じる事が出来る手錠である。
「蓮さん、葵さんは帰ったんですか?」
「ああ、今帰った所だよ。ほら、依頼料も入ったぞ!たまには飲み行くか」
「はい」
翌日、朝から速報が流れた。
内容は連続婦女暴行殺人事件の犯人、大石景虎が護送中に殺害されたという内容だった。
「蓮さん!」
「どうしたの?」
「ニュース!ニュース!」
蓮はニュースを見るがあまり反応しなかった。
それを見た美姫が蓮に聞く
「蓮さん、昨日景虎の記憶で何を見たんですか?」
「うん…まぁいろいろ」
少し誤魔化しながら対応していると蓮の携帯電話が鳴った。
「あっ!もしもしぃ」
相手は葵だった。
「蓮、あなた景虎の記憶を読み取ったでしょ」
「ん、何の事ぉ」
「誤魔化しても無駄よ。名もなき組織に気をつけなさい」
「あぁ」
「もし、何かあったらすぐに連絡してね」
「分かった」
そして電話は切れた。
「蓮さん、また裏の仕事ですか?」
「違う違う!単なる雑談だよぉ」
美姫はジト目で蓮を見て、一つため息を漏らした。
「まぁこれ以上は聞きませんけど•••またには抱えずに頼って下さいね」
蓮は笑顔で
「いつも頼っているよ」
「もう、分・か・り・ま・し・た」
そしてこの事件がキッカケで蓮はノーネームと大きく関わっていく。
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