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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
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第19話 鬼鳴き

 「申し訳ありません。盗み聞きするつもりは無かったのですが、ヒュドラを倒したと耳に入ってきたものですから」


 何だろう。営業か何かか……もしかしたら依頼かな?


 振り返った男は二重あごをタプンと揺らしながらニコニコしている。髭は無いがおそらくドワーフじゃ無いかな。この世界にも慣れてきたのか、俺は何となくだが種族を見分けられる様になっていた。


「私はハーフノームのフォルダーと申します。どうぞ以後お見知りおきを」


 全然違った。やはり【髭 = ドワーフ】だな。


「ちなみに私は人間とノームのハーフですよ。珍しいでしょう」


 ……どうせならドワーフとのハーフだったら良かったのに。


「僕達は冒険者ですよ。何か御用ですか?」とランジェが受け答えする。


「おお。やはり。私はレーベルの町で<トンテンカンテン>と言う武具工房を開いております」


 うむ。実に覚えやすい店名だ。

 でもなんかラーメン屋みたいだな。


「武器防具の販売、修理にメンテナンス、オーダーメイド迄承っておりますので、ご入用の際は是非ご来店ください」


 なんだ。やっぱり営業だったのか。


「でも……お高いんでしょう?」と様子を伺う俺。


「いやいや。初めてのお客様に限りですが、代金から20%オフをさせて頂いておりますよ」


「ほほぅ。それはなかなか」

 

 うーん。よく考えたら俺は武器防具という物を持っていない。

 今だって着ているのはペクトロ村でもらった作業着だ。スーツは工場のがれきの中に埋もれたままだ。

 これから冒険をするんだから、最低必要限の装備は必要だろう。


 ちょっと試しに聞いてみた。


 「冒険者を始めたばかりの人向けの初心者セットとかは置いてある? 中古とかアウトレットでも良いんだけど」


 待ってました、とばかりに話し始めるフォルダー。



 「はい。中古品やアウトレット品はご用意しておりませんが、セット商品はございますよ。初心者向けでしたら防具は皮、もしくは厚手の布製で鎧、盾、帽子にブーツが揃います。武器はパンフレットの中からお好きな物をお一つお選びいただけますよ」


 そういうとカバンの中からパンフレットを2冊取り出して、どうぞと渡してくれた。

 武器と防具で一冊ずつ分かれている様だ。


 とりあえず防具のパンフレットをランジェに渡し、俺はまず武器のパンフレットから見ることにした。

 パンフレットの表紙には「フレッシュマン応援セール」と書かれている。

 

 この中から好きな武器を選べるみたいだが 選べる武器は剣や槍だけでも数ページはある。


 パラパラと読み進めていくとハンマーやメイス、杖に弓矢にクロスボウと実に幅広いラインナップだ。中にはパチンコやブーメラン、ヨーヨーなど玩具みたいなのもある。子供の頃に遊んだ事はある、がもちろん人に向けた事は無い。これって威力あるの?


 ダメだ。何が良いのか見当もつかない。

 

「ランジェは何がいいと思う?」


 防具のパンフレットを熱心に見ているランジェに聞いてみる。


「うーん」


 少し悩みつつ答えてくれる。


「ヨースケの能力やスキルに適した武器が一番だとは思うんだけど、いきなり近接戦闘は難しいし、危ないと思う。しばらくは僕が前衛に出て近接戦闘を受け持つから、ヨースケは後衛で援護攻撃できる武器が、パーティーとしてはバランスいいんじゃないかな」

    

 ふむふむ。

 前衛を受け持つと言ってくれるランジェに申し訳無いなと思いつつ、深く納得する。


 だとすると弓系かクロスボウ系か……

 パチンコにブーメラン、ヨーヨーは論外だ。


 ん?パチンコ?と一瞬心を何かがよぎったが、頭をブンブンと横に振り思いを掻き消す。

 玩具を買っている場合ではない。


 あーあ。もし俺が学生時代に弓道部に入っていれば迷わず弓だったんだがな。

 しかし残念。俺は麻雀部だ。

 あの頃の俺は「鬼鳴きのヨースケ」と言われ恐れられ(嫌がられ)たもんだ。

 アガれるなら何でも良かった。懐かしいなー。


「失礼ですが……お二人の冒険者ランクは?」


 初心者セットを熱心に見ている俺達を見て、訝しげにフォルダーが尋ねてくる。


「僕はCだよ」

「俺はG……」


 初心者なんだから当たり前なんだが、それでも自分の冒険者ランクを言うのはちょっと恥ずかしい。

 ヒュドラ退治したんだから冒険者ランク上がらないかな?


「何とっ! あなたはGランクなんですか!? それでヒュドラを倒すとは……いやはや。将来が楽しみですな」


「でしょー。」

 ランジェが自分の事の様に嬉しそうにしている。

 いい奴である。


「なになに?」

「Gランクでヒュドラを倒したって?」

「本当かニャー」


 フォルダーが大きな声で話すもんだから、他の乗客にも聞こえたらしい。

 馬車内が少しざわざわし始めた。


 おいおい。本当に勘弁してくれよー。

 俺は恥ずかしさのあまり武器のパンフレットを読むフリをして下を向く。


 突然、


 がたがたがたっ!!


 馬車が突然急ブレーキを掛けた。


 バゴンッ!


 ふぬぅ。頭を前の座席に打ち付ける。

 とほほ。何でいつもこんな目に・・・


 馬車の前方にある小窓から御者が顔を出し、慌てた様子で告げる。



「盗賊ですっ!!囲まれていますっ!!!」





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