第18話 真・紅蓮鳳凰波
-乗合馬車内-
あぁ・・・
俺は感動していた。
ペクトロ村を出発して10分位だろうか。
行きの無料馬車では10分も乗っていれば尻の感覚が無くなっていたが、この馬車はほとんど揺れないのだ。椅子もふかふかである。
馬車の造り自体そもそも違うのだろうが、馬車本体に強化魔法がかけられているらしい。
しかも乗る前に御者の人が、状態異常に対する耐性強化の魔法をかけてくれたので、例え揺れたとしても馬車酔いの心配も無い。
有料馬車恐るべし。これはもう無料馬車には戻れないな。
馬車内には俺達以外にも乗客がいる。
真ん中に通路があり、進行方向に向かって2つの席がくっついた列が2つ。ハトバスか深夜バスのイメージだ。ただ満席でも20人ほどしか乗れないだろう。それでも馬車としてはかなり大きい部類だ。
そして引いているのは正確には馬では無い。
馬に似た魔物だよ。と乗る時にランジェが教えてくれた。よく見たら俺の知っている馬より大きくがっしりとしており足が8本もあった。そんなのが4頭で馬車を引いているのだ。多少馬車が大きくても問題ないのであろう。
ちなみにランジェの大剣は馬車の屋根に置かれている。屋根には大型武器用のアタッチメントが取り付けられており、ランジェの大剣の他には槍が1本見えた。利用は無料ではなく別料金だそうだ。
「はいヨースケ。」
ランジェが自分の冒険者カードを差し出してきた。
「ヨースケのは昨日見せてもらったし、パーティーならメンバーの実力やスキルを知っておいたほうがいいと思うんだ」
ふむ。と思い冒険者カードを受け取る。
どれどれ。お父さんに見せてみなさい。
【ランジェ・ドール】LV253
【冒険者ランク】C
-スキル―
【英雄】LV7
効果 全ての能力値が上がる
【魔法剣士】LV-
効果 剣士、魔導士両方のスキルを覚える
【語解】LV-
効果 異なる言語を理解できる
【魔法】LV10
効果 火属性の魔法を覚える
・ファイアボール LV7
・フレイムウォール LV5
【魔法】LV8
効果 聖属性の魔法を覚える
・ヒール LV5
・浄化 LV3
・キュア LV3
【切れ味】LV12
効果 武器の切れ味が鋭くなる
【瞬歩】LV9
効果 素早く移動ができる
おお息子よ。何という主人公臭だ。
スキル欄が多くて全部を表示しきれていなかったのだが、指でなぞるとススッとスクロールした。
恐るべし冒険者カード。まだまだ知らない機能とかありそうだな。
しかし俺と比べるとスキル格差がすげぇ。
まぁ俺と比較するのが間違っているんだが。
うん、よそはよそ。うちはうちだ。
LVは253か。
ふと昨日の村民館でのヒュドラ退治の会話を思い出す。
「冒険者LVで言えば300でも苦戦しますよ」
なんだ。ランジェだってLV300以下なのに助けに来てくれたんじゃないか。
ありがとうと口には出さずに感謝する。
「しかしスキルって便利だよな。特に【語解】(俺は【ふむふむ】だが)は無ければやばかったよ」
「あれ?【語解】はガルムヘイズでも普通に使ってたよ」
ん?どゆこと?
「ガルムヘイズでもスキルはあったよ。冒険者レベルも名前は違うけど個人の強さを示すものはあったし。冒険者ランクはこの世界の基準で付与されるものだから無かったけどね」
「あ。魔法は無かったからすごく驚いたよ」
俺のいた世界はスキルもレベルも魔法も無かったんだけど・・
いや・・知らないだけ、知る方法が無かっただけで本当はあったのかな?
「でもこの世界に転移した時に持ってこられたスキルは【語解】だけだったんだ」
「あれ【英雄】とかは?」
「それはこっちの世界に転移した時に取得したみたい。【語解】と【英雄】以外のスキルは後で取得したんだけど【魔法剣士】とかもなかなかレアなんだよ。」
「【英雄】とか【魔法剣士】とか羨ましいわ~」
つい口に出てしまう。うう。
「ヨースケだって相手が芋を食べてれば無敵じゃないか。身体の内部から高温で焼き尽くす・・味方ながら恐ろしい技だ」
ごくりと唾を飲み込みキラキラした目で語るランジェ。
おれはお前のそのポジティブさが恐ろしいよ。
「『真・紅蓮鳳凰波』なんてどう??」
何がだ。
まさか技名ではあるまいな。
俺には鳳凰が芋をくわえて「くぇーっ」と羽ばたいていくイメージしかない。
何が「真」で、どこが「鳳凰」なのか教えてくれ。
「あ。やっぱ芋って字が入っていないと寂しい?」
やめい。
でも、そういう考え方もあるのか。
ちょっと真面目に考えてみる。
-相手が芋食ってりゃ無敵-
ただ【ほかほか】の対象となる芋は、あくまで俺が一度認識している芋じゃないといけない。
俺が認識していない芋が腹の中にどれだけあったとしても、それはホカホカにはならないのだ。
ヒュドラの時には上手くいったが、果たして今後そんな状況があるのだろうか。
戦う前に相手に、どうぞどうぞ、美味しいお芋ですよ、と勧めておいて、食べたら【ほかほか】を発動・・
ないわー。
そんな怪しさ満点の芋、誰が食うか。
・・・・・
いや待てよ。
相手がヒュドラみたく魔獣ならいけるか?
いやいや待てよ。
芋を粉状になるまですり潰して、食事にこっそり混ぜれば人間相手でもいけるか?
いやいやいや待て待て。
その粉状の芋を空中にばらまいて【ほかほか】で粉塵爆発ってどうよ?
・・・・・・
イケる!!
吹きすさぶ爆炎の中、鳳凰が雄々しく羽根を広げているのがハッキリと見える!!
とすれば後は・・・
俺はランジェに尋ねた。
「さっきの技の名前何だっけ?」
「あ。やっぱし名前付けたくなった? なんて言ってもヒュドラを倒した技だもんねー」
フフフ。甘いなランジェ。俺はもっとすごい技を思いついたのだよ。
レーベルについたら早速実験してみよう。
と、突然前の席に座っていた男が振り向き、話しかけてきた。
「失礼。冒険者の方ですかな?」




