表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
13/193

第11話 おかしいのはお前の頭だ

 事務所から2階に上がると小さいちゃぶ台と座布団が置いてあった。


 日本人の性か。

 ちゃぶ台を見るとひっくり返したくなるのは俺だけか?


 今は仕事中なのか誰もいない。


 奥には仮眠室があり、誰も使ってないから自由に使って良いわよと言われている。

 今日からここが俺の家だ。いわば住み込みだね。


「よっこいしょーいち」


 仮眠室に入り備え付けのベッドに腰掛ける。

 少し埃っぽいが思いの外、室内は清潔に保たれている。


 バキバキッ


 少し腕を回すと肩から凄い音がした。

 馬車の中ではずっと力を入れていたので、筋肉も固くなっていたらしい。


 ふぅ。


 面接にも無事合格し、何とか一段落だ。

 賄いも出るし、作業着も何着か支給された。


 これで当面、衣・食・住の心配は無くなった訳だ。


 心底ほっとした。


 給金はしばらくは日払いで支給してくれるそうだ。

 何から何までありがたい。


 ごろんと横になる。


 ちょっと休憩したら村を見て回ろう。


 明日から仕事か。どんな仕事だろうか・・


 ・・給金もらったら・・下着とか買いたいな・・・・


 俺は安心感と馬車の疲れから、いつの間にか深い眠りに落ちていた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 次の日、俺はフサエに連れられて工場内へと案内された。


 工場内には円形の大きな鍋が4つ並んでいる。


 高さは3メートルはあるだろうか。

 鍋の周りには足場が組んであり、梯子が備え付けられているのが見える。

 そこから上に上がって鍋を混ぜるのだろう。


 工場内はなかなかの熱気である。



「ヨシコさーん」



 と、フサエが1人の女性に声をかけた。


「はいよー」


 ヨシコと呼ばれたその女性は小走りでやってきた。


「今日から働いてくれるヨースケさん。よろしくね」


「こちらは現場責任者のヨシコさんよ。作業内容は彼女から教わってね」


「ヨースケっていいます。よろしくお願いします」


「わたすはヨシコっていうだ。よろすくー」


 ヨシコ・・・ん~日本人かも知れない。

 念の為に聞いてみる。


「俺はシマヅ・ヨースケって言います。あなたのフルネームは?」


「ヨシコ・ジャストフィットだけんど・・」


 むぅぅ。良くわからない。


「これがペク芋よ」


 とフサエが調理前のペク芋を持ってきてくれた。


 トンッとテーブルの上に置く。


 見た感じはサツマイモに近いかな?


「ペク芋ってすごく火の通りが悪くって、中まで火を通すのに最低4~5時間かかるのよ」


 ふ~ん。

 良い機会だから試しに【ほかほか】のスキルを使ってみるか。


 俺はとりあえず右手を前に突き出し、「ほかほかっ!」と叫んでみた。


 突然叫んだものだからヨシコがビクッとし、

 大丈夫かしらこの子・・みたいな視線を投げ掛ける。


 ペク芋には何の変化も無い。


「あれ。おかしいな」


 おかしいのはお前の頭だ・・みたいな視線を投げ掛けるヨシコ。


 今度は左手を突き出し、「ほかほかっ!」と先程より大きな声で叫ぶ。


 ペク芋「・・・」


 ええいっ。両手ならどうだっ!


 ペク芋「・・・・・」


 う~ん。


 何となくだがスキルを使用している実感はある。


 スキル説明には「早く熱が通る」とあるので、ひょっとしたら、焼いたり、煮たりしてないと駄目なのかもしれない。


「もういいかしら・・」


 と、テーブルからペク芋を手に取るフサエ。


「あら。なんだか温かいわ」


 !!


「ちょっと貸してくださいっ!」


 とフサエの手からペク芋を受けとる。


 おぉっ。確かにほんのり温かい!

 人肌位だろうか。こいつはイケそうだ。


 俺はテーブルに再度ペク芋を乗せると、

 両手を突き出し「ほかほかっ」と叫んだ。


 そのまま30秒程経つと、ペク芋から湯気がたち始めた。


「あれまあ~。こりゃ不思議だっぺ~。」


「あなた。これどうやったの!?」


 ペク芋を割ってみると中までしっかり火が通っている。


 わはは。うまくいったようだ。


 俺は【ほかほか】のスキルを2人に説明をした。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 俺の仕事は芋が焦げ付かないように混ぜること。

 それだけだ。


 俺は片手に長ーい棒を持ち、足元にある大鍋をかき混ぜている。

 もう片方の手は大鍋に向かって【ほかほか】のスキルを使用中だ。


 ペク芋を煮るのはとにかく時間がかかる。

 大鍋の中には大量のペク芋が入っていて、どれだけスキルの効果があるかはわからないが、

 少しでも時間短縮が出来れば・・と考えたのだ。


 スキルは右手でも左手でも問題なく使用できた。


 あと、わざわざ「ほかほかっ」って言わなくても良い事を発見した。

 何気に嬉しい。だってカッコ悪いんだもの。


 俺だって、


「いまだっ! 獅子王流星斬ッ!!」


 とか、


「くらえぃっ! 重撃爆裂波ッ!」


 とか言ってみたい。


 と、芋に向かってスキルを放つ己の姿を想像して慌てて首を横に振る。


 いやいや。芋に向かって言っていい言葉じゃないな。


 足元からはペク芋の煮っころがしの良い匂いが漂ってくる。

 思ったよりも簡単な仕事で良かった・・・・





ーそしてあっという間に3か月が過ぎようとしていた。ー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ