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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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ご機嫌なマイクの表情を余所にジョンの表情は幾分か曇りがちになると

「ところで、お二人とも折角やる気になっているところに水を差すようですが、肝心のマンスールが更に居所を変えてギリシャへ移動したのです」

ジョンが口を開くと

「えっ、ギリシャ?まったく、金持ちは本当に腰を落ち着かせないで点々としてくれるなぁ」

マイクは、半ば呆れ気味に喋るが

「ギリシャであっても与えられたミッションには違いない。ジョン、俺は問題なくギリシャへ向かうぞ。どうだ、ジョージお前は行くか?」

熱っぽく語るマイクが俺の方を見て聴いてくる。

「俺も異存はないさぁ」

俺は一度頷いてマイクに答えてやる。

マイクも言っていたが、そもそもトルコに移動してきて人質事件がなければマンスールを監視して、マンスールが別の国へ移動すれば後を追って追跡しなければならないミッションとなっている。そうなれば、トルコで監視するのがギリシャに変更となっただけの話で大して気にする話でもない。

マイクと俺の話を聞いていたジョンが

「お二人のやる気が変わらないのであれば、私は此処の基地司令官へ話をしてギリシャのキプロス空軍基地へ我々を輸送してもらうように依頼してきます」

と言ってジョンは席を立ち、続けて俺とマイクの方を見て

「お二人とも支給された武器類の返却等が終わりましたら、この部屋へ戻ってきてください。キプロス空軍基地への移動時間が判明したら、私も此方へ戻ってお二人に出発時間を伝えにきます」

ジョンは、そう言い残して部屋を出ていった。

部屋に残った俺とマイクは、今回の人質救出作戦用に支給された武器類を持ってインジルリク空軍基地の備品管理係のカウンターへ向かう。

俺達2人とも防弾ベストを持つが、マイクは加えてP90短機関銃にM&P5.7拳銃、亜音速用のSB193と呼称される5.7×28ミリメートル弾薬が入った弾箱、更には暗視ゴーグル付きの防弾ヘルメットに未使用の閃光手榴弾、そして電線切断用のワイヤーカッターと相当の量を抱えている。

一方の俺はM&P5.7拳銃にSB193弾箱、それにSCAR-H TPRライフル銃に装着していた暗視スコープくらいの物で大した量ではない。

SCAR-H TPRライフル銃と付属のアクセサリー類は元々マンスールの監視任務のために支給された装備品で、たまたま人質救出作戦でも使用しただけの話なのでマンスールを監視するミッションへ復帰するのだから引き続き俺が管理しなければならないはずで、このインジルリク空軍基地の備品管理係へ返却する必要はない。

備品管理係のカウンターへ支給された装備品を山積みにして所定の書類に必要事項を記入して返却手続きを行うと、備品管理係の担当者は自分のデスクから1枚の用紙を持ってマイクの前に立ち

「マイク曹長には新たな装備品が用意されていますので、こちらの受領書にサインをお願いします」

そう言ってカウンターに積み上げられた武器類をカウンターから降ろしてから、マイクの方へ装備品受領書の用紙を差し出す。差し出された装備品受領書を怪訝そうに受け取って装備品受領書を眺めたマイクは、ニヤッとして表情を緩めると

「へぇ、またカスタムAR-15アサルトライフル銃が使えるのかい」

そう言って装備品受領書にサインを殴り書きして担当官へ渡すと、カウンターに載せられた黒いナイロン製のソフトケースを開けて、なからかカスタムAR-15アサルトライフル銃を取り出して笑顔をみせながら眺めていると

「おう、この前は装着されていなかったから装備品返却の書類に書いておいたけど、今回はちゃんとショートスコープの後ろに追加のレイルを取り付けてオープンタイプのレッド・ダット・サイトが着けてある」

マイクは、そう言うとカスタムAR-15アサルトライフル銃を俺に見せてくる。確かに、カスタムAR-15アサルトライフル銃のアッパーフレイム上部のレイルに右下斜め45度の角度の追加レイルに保護用のラバーキャップに覆われているオープンタイプのレッド・ダット・サイトが装着されている。

これは、例えショートスコープの倍率が等倍までをカバーしていたとしても相手の距離が25メートル以下の近距離であった場合には、ショートスコープの倍率を1倍にしなければ確実に相手を捉えることができず銃撃戦では不利になってしまうので、予め近距離用の照準にレッド・ダット・サイトを銃器を構えるのに邪魔とならない箇所へ装着して、いざ銃撃戦を展開している最中に別の敵が至近距離から現れた場合、このカスタムAR-15アサルトライフル銃を左斜め45度に傾けてレッド・ダット・サイトを使って照準して至近距離の敵を狙うために使用される。

そのため今回、マイクに支給されている備品はカスタムAR-15アサルトライフル銃のほかに専用の消音器、予備の30連マガジン2本、5.56×45NATO弾薬50発入りの弾箱が3つ、加えてショートスコープのレティクルラインを発光させるためとレッド・ダト・サイト用の予備バッテリーとしてボタ乾電池が3個準備されている。

それらの装備品を抱えたマイクと割り当てられた部屋へ戻ると、部屋には司令官のところへ行った筈のジョンが待っていた。

俺とマイクが部屋の中に入室すると

「装備品の返却手続きは完了したようですね。私も基地司令官と話をして13時30分に輸送機で我々をキプロス空軍基地まで送ってもらえるように手配ができました」

コーディネーターのジョンが笑顔を見せながら説明する。

それを聞いたマイクは、新たに支給されたカスタムAR-15アサルトライフル銃とアクセサリー類一式が収納されたソフトケースと3箱の弾薬をテーブルに置いてから、自分の右手首に巻いているデジタル腕時計で時刻を確認すると

「少し早いが、今のうちに基地の食堂で昼飯を食べていこうぜ。どうせ、キプロスに到着すれば直ぐにマンスールの居宅へ向かうことになって真面な食事に有り付けないからなぁ」

確かに、マイクの言う通りで一旦ミッションに従事して緊迫するような場面であれば食事抜きというのは当たり前で、良くても空腹を満たすためだけの味気ない非常食を口にするぐらいの生活を送っていると基地の食堂で提供される食事が、この上もなく贅沢な料理に思えてしまう。

俺とジョンは頷いて、マイクの後を追うように基地の食堂へ向かう。途中で、俺も自分の腕時計で時間を確認すると11時40分となっていた。昼飯には少しだけ早いが、この時間ならば基地の食堂は空いておりゆっくりと食事を摂ることができる。それに、決まった出発時刻までに時間的な余裕があれば慌てて荷物を抱えて出発することになり、落ち着いている筈なのに何か大事な物を忘れてしまう可能性も捨てきれない。

3人でゆっくりと昼食を食べ終え、食堂を出た俺達は13時15分に3番駐機エリアで落ち合うこととして、それぞれの部屋へ戻ることにした。

俺とマイクに割り当てられた部屋へ戻る途中

「マイク、支給されたカスタムAR-15アサルトライフル銃のレッド・ダット・サイトだがゼロインしなくても良いのか?」

俺がマイクに尋ねると

「本当なら、この基地の射撃レンジでゼロインをしたいところだが、そこまでの時間的余裕はないから後で時間の余裕ができたらゼロインをするので、その時には手伝ってくれ」

マイクが俺の顔を見ながら言う。

「ゼロインをする時に手伝うのは問題ないが、ゼロインをしない状況で移動中に敵と遭遇した場合にはどうする?」

俺はマイクに続けて問い掛ける。

「なぁに、もしレッド・ダット・サイトがズレていたとしてもショートスコープを取り付けているスコープ・リングの中間が空いてて、そこからフロント・サイトが見えるのでフリップ・アップ式のフロントとリアのサイトを使えば臨時の応急措置ではあるが何とかなる」

マイクは右の人差し指で小鬢を掻きながら答えてくる。

マイクの言う通り、スコープを銃器に取り付ける際に使用するスコープ・リングは中央部分に若干の隙間があるので、その隙間からフロント・サイトを視認することは不可能ではない。マイクに支給されたカスタムAR-15アサルトライフル銃にもアッパーレシーバー上面のレイルにはフリップ・アップ式のフロント・サイトとリア・サイトが装着されているので、至近距離での銃撃戦が行われる場合にはリア・サイトからスコープ・リングの隙間を通してフロント・サイトを覗いてサイティングすれば敵を捕らえるのも不可能ではない。

しかし、それよりも折角オープンタイプのレッド・ドット・サイトを装着してもらったのなら、それを活用した方が確実なサイティングによって敵を捕捉できる。ただ、屋外の雨天時ならばオープンタイプのレッド・ダット・サイトは使えないので、その時にはマイクの言う非常措置に頼らなければならないが・・・。


12時50分に俺とマイクは荷物を持って部屋を出る。途中、基地の総務部門のカウンターへ向かい部屋の鍵を返却してから、ジョンと落ち合う予定の3番駐機エリアへ歩いて向かった。

3番駐機エリアには既にジョンが待っており、そのジョンの視線の先にはCH-53シースタリオン1機のメインローターがアイドリング状態で回転しており、ジョンが居るあたりにも強風が吹き付けている。

アイドリング状態とは言え、結構な風が吹き付けるなかでジョンが視線をCH-53シースタリオンから離して俺達の方へ向いてくる。俺とマイクの姿を認めたジョンは強風が吹き付ける状態で無理に笑顔を見せて、俺達に右手を挙げて合図してくる。

ジョンの目の前まで近寄った俺が

「だいぶ待たせたか?」

とジョンに尋ねると

「いえ、ほぼ時間通りです。我々をキプロスまで送ってくれるのは、目の前でメインローターをアイドリングさせているヘリコプターになります」

ジョンは、そう言って強風を発生させているCH-53シースタリオンを右手で指差す。

俺達3人は、目を細めて上半身を屈めながらCH-53シースタリオンの中央搭乗デッキへと向かい。開け放たれた搭乗ハッチから各自の荷物を積み込んでからCH-53シースタリオンの後部へ搭乗する。

CH-53シースタリオンに搭乗すると、今回は俺達3人しか搭乗しないので機内用無線のヘッドセットが後部に乗り込んでいる搭乗員から渡される。兎に角、民間用のヘリコプターであってもメインローターが回転している間は、機内にエンジン音とメインローターの回転によって発する風切り音が響いて機内無線用のヘッドセットがなければ大声を出さないと隣に座っている同士でも会話ができない。

操縦席に白人のパイロットと黒人のコ・パイロットが乗り込みヘッドセットを装着するとパイロットが

「自分は、このインジルリク空軍基地のソレスタン中尉です。3人をキプロスのアクロティリ空軍基地までお送りしますので、宜しくお願いします。当機は、間もなく離陸しますので身体を充分に固定しておいてください」

ソレスタン中尉が無線を通して話してくると、何度からインジルリク空軍基地の管制官と無線での遣り取りの後に、CH-53シースタリオンのメインローターが回転数を上げると同時に何か見えない力で上から持ち上げられるような感覚がして、CH-53シースタリオンが離陸した。

昨夜の暗がり状態とは違って、昼間の元では視覚によって地上からの高さや飛行状態が把握できるので精神的に落ち着いて搭乗していることができる。気が着けば、先程まで居たインジルリク空軍基地が小さく見えて徐々に離れていくが、実際には相当のスピードでインジルリク空軍基地から離れて地中海の上空へ向かっている筈なのだ。

今日の天候は、晴天で加えて無風と言っても良いくらいに微風くらいにしか吹いていないのでヘリコプターのエンジン音とメインローターの回転によって発する風切り音を除けばCH-53シースタリオンの搭乗は快適そのものである。

微風のために地中海も凪いでいるため太陽光の反射によって眩しさの中を水平飛行していたCH-53シースタリオンが気付けば徐々に飛行高度を下げてきていおり、それに応じてヘッドセットを装着したソレスタン中尉がアクロティリ空軍基地の管制官と無線の遣り取りをして指定されたヘリポートへの着陸を始めている。

つい先程まで小さな円にしか見えなかったぺリポートが徐々に大きくなって見えてくるが、CH-53シースタリオンの機体が地上に近付くにつれて、そのぺリポートの円も一部しか確認できなくなってくると、下から何か途轍もなく固い何かに突き上げられるような感覚を感じてCH-53シースタリオンがヘリポートに着陸した。

地面に着陸したとは言えメインローターの回転が停止していないためにヘリポート周辺に生えている芝生は、メインローターが吹き付ける強風によって地表へ叩き付けられ所々に地面が見える。

徐々にCH-53シースタリオンのメインローターの回転速度が弱まってくると後部にいた搭乗員が後部搭乗ハッチをスライドさせて開け放つと、機内にはキプロス島の潮の匂いが漂ってくる。

後部の搭乗員が機内無線のヘッドセットを通じて

「それじゃヘリコプターから降りて頂きますが、くれぐれもメインローターが巻き上げる風に煽られて態勢を崩さぬように上半身を屈めながら降りてください。それぞれの荷物は自分が機内から降ろして手渡しします」

そう言われたジョンが、CH-53シースタリオンの開け放たれた後部搭乗ハッチの縁に一度腰を下ろしてから機体の外へ降り、振り返ってCH-53シースタリオンの方を向くと後部の搭乗員がジョンの手荷物を手渡してくれる。

俺もマイクもジョンと同じような仕草でCH-53シースタリオンから降りると後部の搭乗員から手荷物を渡される。手荷物を受け取った俺達は、上半身を屈めた姿勢でCH-53シースタリオンのメインローターの回転半径から離れてから上半身を真っ直ぐに伸ばすが、メインローターが巻き上げる風によって砂粒等が顔に当たってくるので暫くは細目のままの表情でアクロティリ空軍基地のターミナル建物へ向けて歩く。


キプロス空軍基地とは言っているが、正式にはイギリスの海外領土であるアクロティリに位置するイギリス空軍の基地であり、そこにアメリカ空軍第9偵察航空団分遣隊が同居しているような場所である。そこで、アクロティリ空軍基地のターミナル内にある第9偵察航空団分遣隊のオフィスへ向かい挨拶を行うと、ここからは船を使ってギリシャ本国へ向かうのでと言って無線で連絡をしてくれると、ジープを用意してキプロス島の港まで送迎してくれた。

港に到着すると、暫くして桟橋に1艘の船が着岸し地元のギリシャ人とは雰囲気が違う男が1人船から降りてくる。ここからは、ジョンが所属しているCIAの担当のようでジョンは船から降りてきた男と何事か会話すると俺達の方へ戻ってきて

「ギリシャでCIAの連絡員をしているシュナイザーです」

と言って船から降りてきた白人の男を紹介してくれる。

白人と言っても地中海の太陽で適度に日焼けしているシュナイザーは、漁師町で暮らしている感じがしてジョンよりも体格的にガッシリとして力仕事になら充分に1人で熟せそうな感じがする。

「シュナイザーです。よろしく」

シュナイザーは、人当たりの良い笑顔を浮かべながら俺とマイクに握手を求めてくる。

体格では決してシュナウザーに負けないマイクが満面の笑みを称えて

「こちらこそ、よろしくなぁ」

と言ってシュナウザーと握手をするが、俺から見れば握手と言うよりも2人とも右手を握って振り回しているようにしか見えない。

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