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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第2章

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2-20 南西探索班

本日もよろしくお願いします。


■■■■■■■■■■■■■■

開始時刻 22:15

仕事:南部丘陵地探索

人形:石製人形12体

募集人数:12人

条件1:サバイバー、覇王鈴木、ライデンを指名

条件2:土属性3名

条件3:闇属性3名

条件4:誰でも可3名

達成条件:丘陵地を調査する。


説明:

・森の入り口から見て、南、南東、南西の3部隊に分ける。各部隊のリーダーはサバイバー、覇王鈴木、ライデン。総指揮は外部からニーテストが執る。チーム内で2人はおんぶ式で移動すること。また、クエストを受ける者は事前ミーティングを受けるように。

■■■■■■■■■■■■■■


 森の入り口に作られた秘密工房で、石製人形たちがぞろぞろと起き上がる。


『サバイバー:全員揃っているね?』


『覇王鈴木:ああ、大丈夫そうだな』


『ライデン:拙者の方も大丈夫でござる』


 参加する賢者は12人。その内の6人は、木製人形か石製人形のどちらかをおんぶしての参加である。

 最前線の秘密工房で働く賢者たちは、全員が石製人形を量産する手を止めて、出動するサバイバーたちを見送ってくれた。


 まずは本日冒険者の観察を行なった森の入り口まで移動した。


 天気は良好。空には満月が青い光を湛えて浮かんでおり、その周りでは地球では見られないほど鮮やかな星々が輝いていた。

 満月とはいえ夜は夜。十分に暗いのだが、賢者たちは暗視能力を標準装備しているので、ある程度の明度で活動できた。


『サバイバー:さて、それじゃあ予定通りに行きますか』


『ライデン:わかっていると思うでござるが、例の件で浮かれないようにするでござるよ』


『闇の福音:わかってるって』


『絶狼:本体では思わず叫んだけど、こっちに来ると冷静になるよな』


『ゼル:女神様ショップで手に入るのは結局のところ金と優越感だからな。異世界に来られるこの特別体験に勝るものじゃない』


 賢者たちは、金を得ても欲しいものなんてほとんどなかった。

 正直なところ、ニートな賢者たちにとって金で得られる最大のものは安心感だった。国民年金からの鬼電や国民健康保険の督促状が来ない生活と将来の不安がなくなるという酷く現実的なものが、ニートたちにはなによりも嬉しかったのだ。だから、金を得たらキャバクラに行こうなどと考えているニートな賢者は冗談抜きにゼロであった。


 一方、仕事をしている賢者たちは、社畜からの解放を夢見ていた。

 むしろ彼らの方こそはしゃいでいた。アパートの一室で狂気じみた高笑いをして、お隣さんから壁ドンされるくらいには。

 愚かなる者よ。汝がドンドンしているその壁の向こうにいるのは、世界に革命を起こす賢者ぞ!


 とまあ、そんなふうにちょっぴり浮かれポンチな賢者たちの中から12人が、森の先の丘陵地帯に解き放たれた。




 丘陵地帯については、昨晩の内に最も近い丘の上から偵察を行なった。それによると、丘は幾重にも続き、先の様子が見えない地形であった。

 3班はそれらの丘を越えて先の様子を確認するのがミッションだ。


 南西に進んだのはライデン班。


 丘陵地帯は、丘の部分が草で覆われ、麓は石がゴロゴロと転がった半草原といった地形になっていた。低い場所ほど石が転がっているわけだ。

 賢者たちは、かつての川の氾濫で丘の低い場所に石が流されたのではないか、という考察を行なった。

 丘を覆う草の高さは賢者たちの首丈サイズが基本で、場所によってはススキのような背の高い草も群生していた。

 こういった地形的な特徴は南、南東、南西、全てが同じであった。


 ライデン班は、麓を走るよりも2、3mほど丘を登った位置を走るのが石も少なく効率的だと判断し、草の中を泳ぐ気分で走った。


 しばらく走り、右手に見えていた森が丘に隠れてすっかり見えなくなった頃。


「ピーッ!」


 唐突に、まるで電子音のような甲高い音が鳴った。

 ハッとして4人が止まると同時に、隣の丘に生えた草が、まるで何匹ものヘビが一斉に目覚めたかのように動き始めるではないか。


『闇の福音:冒険者の合図の笛とかか?』


『ライデン:絶狼殿、穴掘りの魔法をいつでも使えるようにしてほしいでござる』


『絶狼:了解』


 逃げる際には穴掘りで地下へ。

 それが最も手っ取り早いので、チームには1人ずつ土属性が入っていた。


 そんな心配をする賢者たちを置き去りにして、事件はやはり草が波打つ隣の丘で起こった。翼の幅が1mはあろう鳥が、動く草の一か所に急降下したのだ。


『ライデン:夜行性の鳥でござるか』


 闇夜に浮かぶそのシルエットから、4人は鳥だと判断。


『闇の福音:さっきの電子音はアイツを操っている音かもしれないぜ』


『ライデン:なにはともあれ他の班にも共有しておくでござる』


 さらに進むと、またも唐突にそれは起こった。

 ダダダダッと、まるで草原全体にマシンガンが射出されたかのような何かが降り注いだのだ。


『絶狼:な、なんだ!?』


『闇の福音:ひぇええええ、ど、どこから!?』


『ワンワン:上だ! ウインドボール!』


 見張りをしまくっていた経験からかワンワンの観察眼は鋭く、誰よりも早くその強襲に気づいた。自分たちに向かって巨大な鳥が急降下してきていたのだ。


 鳥はワンワンのウインドボールに顔面を撃たれて墜落した。

 するとどうだろう、ずっと続いていた謎の連射攻撃はいきなり止み、辺りは元の静けさに戻った。


『ライデン:わ、ワンワン殿、助かったでござる』


『ワンワン:いや、いいさ。それよりも鳥を見に行こう』


 鳥はまだ生きており、すかさずワンワンと闇の福音が鑑定を行なった。

 すると、風属性のワンワンは鳥鑑定、闇属性の闇の福音は魔物鑑定が成功した。どうやら、魔物の鳥という区分なのだろう。


■賢者メモ 鳥・魔物鑑定■

『ジタタキ』

・強さ★2 ・特殊★3

・ミニャにとって危険度★1、敵対心★0

・魔鳥。音波の魔法を使って狩りを行なう。この魔法の範囲に入った獲物は、石の雨が激しく降り注ぐような幻惑を体験することになる。また、少しでも範囲から外れると甲高い笛の音に聞こえる。この魔法はネコミミを持つミニャには一切通用しない。

■・■・■


『絶狼:あの機械音とマシンガンの音は同一のものだったってことか』


『闇の福音:というか、ネコミミは音の魔法に強いのかな?』


『ライデン:あのネコミミには穴がないでござるから、竜胆殿たちは魔法に対する疑似的な耳だと考察しているようでござるね。この報告を聞けば喜ぶでござるよ』


『絶狼:それにしても、ミニャちゃんの強さは謎だよな。このクソでかい鳥で危険度が1だぜ? 殺し合いなら俺も負けない自信はあるけど、大ケガは覚悟するよ』


『ライデン:主殿はまだまだ謎が多いでござるからな。というよりも拙者たちがこの世界を知らなさすぎるでござるか』


『ワンワン:とりあえず、トドメを刺すよ?』


『ライデン:っと……苦しませるのも忍びない。頼むでござる』


 ワンワンは風の剣でジタタキの首を切り落とし、闇の福音がすかさず『腐敗遅延』を行なう。

 さらに、予備の人形に氷属性を一時的に召喚し、ジタタキの死体をマルマル氷漬けにした。そうして、氷漬けにした物を地中深くに埋める。


 かなり大きな鳥なので、これを持って行動はできない。死体から色々調べたいこともあるが、それはクエストの本題から外れてしまう。なので、仕方なく雑ではあるが保存しておくことにした。


 ライデン班は再び走る。

 さらにいくつかの丘を越えると、ワンワンが一行を止めた。


『ワンワン:見ろ』


 ワンワンが指さした地面には人の足跡が残っていた。ぬかるみを踏んだ後に乾いたような深い足跡だ。


『闇の福音:足跡か。歩幅的におそらく徒歩だろうな』


『ライデン:わだちが見られないでござるから、街道ではなさそうでござるね。となると、森へ行くルートのひとつでござろうか』


『闇の福音:でも森の入り口にしては西に向かってないか?』


『ライデン:拙者たちが秘密工房を置いた場所がメインとは限らないでござるよ。森は東西に広がっているようでござるし』


『絶狼:結構来たし、一度丘の上まで登って見てみようぜ』


『ライデン:そうでござるな』


 というわけで丘の上まで登ってみた。


『闇の福音:でっけぇ丘があるな』


 闇の福音がいくつかの丘の向こうにある横に長い丘を見て、言った。


『ライデン:いや、あれは丘ではないでござるね。人工物……堤防でござるよ』


『絶狼:堤防ってことはまた川があるのか』


『ワンワン:見ろ。あっちにやぐらが立っているぞ』


 ワンワンが堤防と思しきものの南を指さして言った。

 かなり遠くではあるが、たしかに高い建物がある。誰も距離感が掴めず、適当に1km程度は離れていると想定した。


 ライデンはスレッドでニーテストに指示を仰いだ。


【498、ライデン:ニーテスト殿、堤防と思しき構造物を発見したでござるが、どうするでござる?】


【499、ニーテスト:とりあえず、石が多く集まりそうな場所を見つけてくれ。そこに一晩限りのベースキャンプを作って石製人形を数体作らせる】


【500、ライデン:それなら堤防の手前か向こう側がいいかもしれないでござるね。丘陵地帯に作ると似た景色ゆえに帰還が必要になった時に帰ってこられなくなるでござる】


【501、ニーテスト:それもそうだな。では、そのまま西へ向かって堤防を目指してくれ。堤防の向こう側を確認してから、良さそうな場所に秘密工房を作れ】


 ライデン班はさらに3つの丘を越えて、堤防の麓へたどり着いた。

 ライデンの推測通り、南北に長く続き、丘としてはかなり不自然。やはり堤防という見立てで間違いなさそうだ。

 堤防の下には冒険者が使うための小道が森まで続いているようだった。


『絶狼:この位置からだと櫓が見えなくなったな』


『ライデン:川の護岸として堤防を作ったなら、向こう側にも同じ規模のものがあるのでござろう。おそらくあの櫓はそちらの堤防の上にあるのでござるよ』


 そんなことを話しながら、4人は堤防の斜面を上がってみた。


『ワンワン:これは草刈りが行なわれているようだね』


『ライデン:おそらく丘陵地帯の生き物が巣を作らないようにしているでござるよ』


『絶狼:これだけの規模だと作るのも容易じゃないだろうからな』


 絶狼は土属性なので、大きな土木工事を見てしみじみと言った。


 堤防の頂上へ登り、4人は茫然とした。


 ライデンの予想通り、そこには川があり、向こう岸にも堤防があった。堤防の規模はほぼ変わらず、かなり下流には建物と櫓がセットになって建っていた。


 問題は川幅だ。

 なんと30mほどもあるのだ!

 これは由々しき事態だった。


『闇の福音:マジかよ。ミニャの川よりもデカイだと?』


 拠点を作った愛着から賢者たちは誰もが信じて疑わなかったが、拠点近くの川は支流だったのである!

まるで『お前んちの近くの川は普通河川だよ』と言われた気分だった。これだけ愛着があるのに、なぜ2級河川ですらないのか……っ! なぜ、隣の市のヤツは名前すら知らないのか! 人生、そんなものである。


 賢者たちは大きな川を発見したテンションと同時にモヤッとした気持ちにもなった。

 切り替えていこう。

 4人は秘密工房を作ることにした。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いざというときにミニャがどれだけ動けるのか? 近衛隊にはミニャとの遊びの中で身体能力の測定してほしいな 跳んだり跳ねたり走ったり相当運動能力高いでしょう
[良い点] どうでもいい所で張り合う賢者、割と好き [気になる点] 2-18裏【女神様ショップ ラインナップ】より ★お土産 時価 →パトラシアの物を地球に持ち帰ることができる。他者の所有物は持ち帰…
[一言] 何時か埋め立てて普通河川にしてやろうぜ(ぉぃ
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