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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第2章

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2-10 東方探索

本日もよろしくお願いします。

一旦、探索回。


■■■■■■■■■■■■■■

開始時刻 7:00

仕事:東方面の探索

人形:石製人形3体

募集人数:3人

条件1:探索委員2名

条件2:誰でも可1名

達成条件:東方面を調査する。


説明:

・東方面へ遠方探索を行なう。

・競歩以上の速度での探索が望ましい。

・活動はおんぶ式。活動時間は2時間を予定。その後は背負った人形を他の賢者が使用して調査を再開する。

・鑑定が必要な場面があった場合は、一時的に追加の賢者を派遣する。

■■■■■■■■■■■■■■


 この日はミニャが糸作りに励んでいる日であったが、当然、他のクエストも大量にあった。

 既知の領域を拡大するための遠征クエストもその一つだ。

 この東方探索が、かなり重要な発見をもたらすことになった。




 東方面のクエストをゲットしたのは、氷属性のブリザーラ、闇属性の闇人(やみうど)、風属性のバルバリの3名。


 7時ちょうどに召喚された3人は、まずミニャの寝顔を拝謁する。

 朝食の香りに眠りながらもほっぺがにんまり。


『闇人:うむ。我が主は今日も健やかだな』


『ブリザーラ:相変わらず超可愛いっすね』


『バルバリ:モグちゃん、お兄ちゃん行ってくるからな』


 ミニャと一緒にヘソ天で眠るモグにも挨拶しつつ、いざ出陣。


 お家の外に出ると、そこではすでに多くの賢者が活動を始めようとしていた。クエストごとに集合しており、そこら中でフキダシが出て賑やかだ。夜間からのクエストでは引継ぎもちゃんと行なわれている模様。真面目か。


 この日は糸作りの初日。

 まだ樹皮は糸の素にすらなっておらず、干されて乾燥の魔法を当てている状況だ。

 ミニャが獅子奮迅の働きで樹皮を糸の素に変えていくのは、今日このあとの話である。


『ブリザーラ:それじゃあレッツラゴーっす!』


『闇人:我の祖父がそれをよく言う』


『バルバリ:古代言語だからね』


 お家の周囲を囲う土塁はすでにある程度の高さまで盛られており、その上は見張り台になっていた。しかし、まだ完成ではなく、もう少し高くしたいと賢者たちは考えていた。

 土塁には木の枝を束ねて作られた扉があり、それはミニャ用のドアだ。賢者たちは小さいので、ミニャ用のドアの横についた通用口から外に出る。


 賢者たちは声を出さないので朝の静謐を害さず、たくさんの仲間たちが活動を始めているのに、森は目覚めたばかりといったような独特の雰囲気を帯びていた。


『ブリザーラ:ふぅ、朝だとまた雰囲気が変わるっすね。朝露で全体的にしっとりしてるっす』


『バルバリ:ブリザーラは何回目の探索任務だい? 君は夜に探索していたよね?』


『ブリザーラ:あれは怖かったっすねぇ。おいらの探索はこれで2回目っすよ。バルバリたちは何回目っすか?』


『バルバリ:僕は探索メインだと初めてだね。プッチン苺の採集任務の時に少し森に入ったくらいだ』


『闇人:我もバルバリと似たようなもの』


『ブリザーラ:そうっすか。じゃあそれぞれ意見を出し合って活動するのでどうっすか?』


『バルバリ:わかった。それでいこう』


 サバイバーのような達人でもなければ、ニーテストのようなリーダーシップがあるわけではないので、あえてリーダーは決めない。気軽にいくことにした。


 3人の向かう方角は上流を北とした場合に、真東の方向。つまり拠点がある森の奥だ。

 東方面はまだ400m程度の範囲までしか探索されておらず、今日から本格的に探索が行なわれることになる。


 ちなみに、そちらへはすでに何回か探索隊が出されており、ブリザーラも初日の夜に一度行っていた。その際にはフクロウに連れ去られてドロップアウトしてしまったが、賢者召喚を遠隔で行なう条件を発見するきっかけを作る手柄を立てていた。


『バルバリ:できるだけ遠くまで行ってほしいみたいだけど、君らランニングは?』


『ブリザーラ:おいらは問題ないっすよ。まあちょくちょく休憩は欲しいっす』


『闇人:我も問題ない。我はできる子』


『バルバリ:それじゃあ軽く走りながらいこうか』


 というわけで、3人はジョギング程度の速度で走りながら移動を開始した。


 石製人形は体力があるので、運動不足な賢者でも自分と同じ大きさの石製人形を背負いながらそこそこの距離を走ることができた。


 とはいえ、人形にとっては巨大な世界である。雑草すら巨大なので、ジョギングというよりも走りながらアスレチックをやっているような感覚だ。


『ブリザーラ:きゅ、休憩するっす!』


『バルバリ:う、うん、ちょっときついね』


 ブリザーラとバルバリは、100mほど走ると休憩を提案した。

 一方、闇人はケロッとしていた。


 ゴブリンの集落を襲った賢者たちは2kmという長い道を走破した。人形にしてみれば12kmくらいはある。しかし、それは人形を背負っていない状態の話。

 石製人形を背負ってのジョギングはかなりきつかった。


『闇人:我は別に平気だが』


『ブリザーラ:中二みたいな人なのに体力あるっすね』


『闇人:我は無限の闇の力を持っているからな』


『バルバリ:僕も無限の風の力が欲しいよ』


『闇人:我、ちょっと偵察する。うぬらは休んでいるがいい』


 闇人はそう言うと、近くの木に歩いていった。

 その後ろ姿を2人ははえーと見つめた。


『ブリザーラ:おいら、リアルで『うぬ』って初めて言われたっす』


『バルバリ:僕もだ。たぶん闇人から以外は今後一生言われないと思う』


 ついでに、バルバリはリアルで一人称が『おいら』の人間にも初めて会ったが、それは黙っておいた。


 闇人は近くの木の下まで歩み寄ると、闇属性の武器化を行なった。その手の中に、闇の鞭が生まれる。


『ブリザーラ:おー、サバイバーの技っすね』


『バルバリ:いかにも魔法が好きそうな人だから、魔法の扱いがやっぱり上手いね』


 2人は休憩しながら見学。


 闇人は何回か闇の鞭をゆっくりと振るい、なにやら練習を繰り返す。そうして、いざ本番。

 頭上に向かって振るった闇の鞭が急激に長さを変え、4mほどの高さにある枝に巻きついた。


『闇人:むふぅ!』


 これには闇人もご満悦。

 2人に対してドヤッているわけではない。闇人は、1人で遊んで1人で喜べる1人遊びの達人なのだ。


 闇人が鞭をグッグッと引っ張って確かめると、しっかりと巻きついているようだ。

 そんな確認をするあたり、ミステリアスな雰囲気とは違って現実味があった。無限の闇の力とか言っているが、闇人もまた魔法素人なのである。

 だが、魔法の力を使いこなしたいという気持ちは強く、巻きついた闇の鞭にあれこれと干渉を試みた。


 鞭を伸ばせることはすでに実証されているので、あとは短くできるか。

 あれこれやっていると、鞭が収縮して闇人の体が浮かび始めた。


『ブリザーラ:おー、凄いっす!』


『バルバリ:うーん、風魔法でもああいうことできないかな?』


 そんなふうに評価される一方で、闇人は途中まで行くと足をパタパタし始めた。その反動で人形の体がくるくると横に回り始める。


『闇人:あわわわわ、た、高い! こわ、怖い!』


 どうやら予想以上に高くて怖くなっちゃったらしい。


『ブリザーラ:えーっ!?』


『バルバリ:闇人、鞭を伸ばして!』


『闇人:や、闇よ! わ、我が意思に従えーっ!』


 闇人が魂のコメントを叫ぶ。

 まるでボスとの戦いで形勢を逆転させそうな叫びだが、闇の鞭が延長し始めるという地味な結果を生み出した。

 無事に地面へと足をつけた闇人は、足をガクガクさせながらコメントした。


『闇人:もう少しこの体に慣れねばならぬ。まったく不便なものよ』


『ブリザーラ:そ、そうっすね! まだ全然慣れてないっすから仕方ないっす!』


『バルバリ:それにしても、それだけ魔法が好きなら魔法研究のクエストを受けた方が良かったんじゃないのかい?』


『闇人:魔法研究の闇属性枠は先に取られた。我と競合しているヤツがいる』


『バルバリ:あー、魔法研究は各属性で1人ずつだからね』


 魔法研究だって人数が多ければ多いだけいいが、平日の限られた人数で多くの仕事を片付けなければならないので、魔法研究に割ける人数は最大でも各属性1人ずつということで決まっていた。

 闇属性は人数が多いので、魔法研究はかなり競争率が高いのだ。しかも、新しく宝石フィギュアが生み出されたので、魔法研究の熱は高まっていた。


 3人は再びランニングを始めた。

 数回の休憩を挟み、ミニャの家から500mほど離れた。


『バルバリ:この辺りはもう未踏の地だね』


『ブリザーラ:未踏というにはまだまだ近いっすけどね。おいらの家からコンビニに行くよりも近いっす』


『闇人:ふむ、植生はあまり変わっていない』


 闇人は周りの木を見てそう言った。


『ブリザーラ:植物を覚えているんすか?』


『闇人:無論だ。我はできる子』


『ブリザーラ:そ、そうっすか。でも、第二陣が来ることを考えると、木属性じゃなくても、そういうのは覚えておいた方が良いかもしれないっすね』


『バルバリ:うん。魔法は第二陣とでもすぐに実力がフラットになると思う。でも知識を身に着けるのはやっぱり時間がかかるからね』


 そんなふうに2人に感心される闇人は、近くの木に向けて歩き始めた。


『ブリザーラ:またやるんすか?』


『闇人:うむ。我は向上心の塊』


 闇人はそう言うと、再び闇の鞭を頭上に振るった。

 鞭は先ほどよりも低い位置の枝に巻きつき、闇人は鞭を短くして昇っていった。


 今度は1.5mほどの高さで止まり、そのまま周りを調査した。

 たかが1.5mだが、人形の目線の5倍の高さだ。草木で見通しが利かない人形にとっては十分に情報的な価値がある。覚悟ができている今回は騒がず、闇人は冷静に周りを観察した。


『ブリザーラ:なにかあったっすか?』


『闇人:このまま真東に進むと草が凄く多いから、一回あの曲がった広葉樹を目印に進むと歩きやすいと思う。あと、すぐそこにプッチン苺がある』


 なかなか良い情報を得て、闇人が降りてきた。

 3人はとりあえずプッチン苺の生えている場所まで移動した。


【100、バルバリ:ここにプッチン苺だね。数はそこそこだ】


【101、ユズリハ:オッケー、だいたい500mくらいだよね?】


【102、バルバリ:うん、そのくらいかな】


 専用スレッドで報告し、外部で『図鑑→地図』に採集ポイントを落とし込んでもらう。


 現在のミニャのお家は仮拠点なので、こうやって周辺の情報を手に入れて、最適な場所を選ぶつもりだった。もちろん、現在の場所が最適な可能性もある。


 3人はプッチン苺を一粒ずつ食べる。

 口元に添えたプッチン苺は光の粒になって大気に溶けていき、口の中には酸味のある甘い味が残った。


『バルバリ:やっぱり歯と舌は大切だね。味を楽しめるのは良いけど、少し味気ない』


『ブリザーラ:そうっすね。でも、生産の人たちも頑張ってるみたいだし、きっとその内、ホムンクルス並みの人形が出来上がるはずっすよ』


『バルバリ:ホムンクルスか、それはいいね』


『闇人:我は赤い目が良い』


 3人の冒険は続き、さらに200mほど移動した時だった。

 再び枝にぶら下がった闇人が、開けた場所を発見した。


『闇人:向こうの方に光が当たっている場所がある。たぶん木々が開けている』


『バルバリ:距離は?』


『闇人:100mくらい』


 闇人が地面に降り、3人は話し合った。


『バルバリ:いま僕らはほぼ真東に来ているから、闇人が発見したその場所に行くと、拠点から見て東南東に向かうことになるね』


『ブリザーラ:ちょっとくらいはズレてもいいんじゃないっすかね?』


『バルバリ:だけど、秘密工房を真東に作って、そこから南東、北東と探索範囲を広げる計画だし、勝手はできないよ。ちょっとニーテストに尋ねてみよう』


 真面目か。

 結果、問題なく許可はおり、3人は闇人が見つけたポイントへ向かった。


 そこは楕円形の窪地になっており、キラキラと光る白い地面に同じ種類の緑の草がぎっしりと生えていた。


 3人は窪地の中に降りて、さっそく調査を開始した。


『ブリザーラ:なんすかね、この砂。まさか石灰?』


『闇人:むむっ、これはまさか!』


『バルバリ:こ、これは塩じゃないか!?』


『闇人:んーっ! 我が言おうとしたのに!』


 闇人はぽかぁとバルバリをぶった。

 うすうす闇人は女子なんじゃないかと思い始めているバルバリは、推定女子からの触れ合いにちょっと嬉しくなった。イケメンみたいな喋り方なのに、童貞臭いヤツだった。


『ブリザーラ:本当だ、これ塩っすよ! しかも凄く美味しいっす!』


 ブリザーラが白い砂を食べて驚愕した。

 もちろん、ブリザーラの口元では他の食べ物と同様に白い砂は光の粒になって消えていった。


『バルバリ:いや、さすがに食べるのは不用心だよ? 塩に似た猛毒の結晶体の可能性だってあるんだから』


『ブリザーラ:そ、そうっすね。人形の体だから油断したっす』


『闇人:見よ。全ての葉っぱの裏に白いのが大量についている』


 闇人が葉っぱの裏を撫でると、白い粒がザラザラと落ちた。

 足元の塩も風に揺られて、そうやって落ちたのかもしれない。


『バルバリ:そうだ。根っこから切り離せば、ブリザーラの死体鑑定で草を鑑定できるんじゃないかい?』


『ブリザーラ:あ……おいら、戦士だから鑑定が使えないっす……』


 ジョブ戦士は鑑定魔法が使えなかった。


『バルバリ:そ、そっか。じゃあ木属性を派遣してもらおうか。あっ、スレッドにいるユズリハが木属性みたいだね』


 というわけで、ニーテストに連絡して、ユズリハを派遣してもらった。宿るのは3人が背負っている石製人形の1体だ。


『ユズリハ:むむむっ、これは大発見だよ!』


『ブリザーラ:やっぱり塩っすか?』


『ユズリハ:森塩草っていう植物だって。森塩を作り出すって書いてある!』


■賢者メモ 植物鑑定■

『森塩草』

・森塩を作り出す草。この植物は周辺の植生を変化させる。

・ミニャにとって、微毒あり、薬効あり、食用可。

・微毒効果:草そのものの塩分が強すぎるため、草が作り出す森塩を利用するに留めるのがベター。

■・■・■


『バルバリ:周りの植生を変化させる?』


『ユズリハ:たぶん、森塩が雨に溶けて土壌の塩分濃度が高くなるということじゃないかな? それに適応できる植物だけが生き残る感じ』


『ブリザーラ:でも、植物に塩って大敵っすよね? 生き残る植物なんてあるんすか?』


『ユズリハ:もちろんあるわよ。海辺では潮風に晒されても元気な植物はたくさんあるでしょ。ああいうのは塩害に強いのよ』


『ブリザーラ:あー、言われてみればそうっすね』


『ユズリハ:それにこの草が天下を取っていないということは、地球よりも塩害に強い植物が多いのかもしれないわね』


『闇人:窪地の上から見てみよ、この窪地の周りの木は葉っぱが明らかに多い』


 闇人に言われて3人が窪地の上に登ってみると、たしかにおかしな環境なのがわかった。

 窪地の周りの木は葉っぱが多く、その下はまったく日が当たらなくなっているのだ。


『ブリザーラ:本当っす。横からの光がないと真っ暗かもしれないっす』


『闇人:土壌の塩分濃度を必要以上に上げたくない木々が樹冠の葉を多く茂らせて、結託して森塩草の繁殖を抑えるようになるんじゃないかと我は思う。実際に、森塩草は日がよく当たる場所でしか繁殖していない』


 闇人が指さす通り、森塩草は綺麗に窪地の中だけで生えていた。


『バルバリ:ユズリハと闇人のどちらの推測も正しそうだね。それらを複合してバランスがとられているのかもしれないね』


『ユズリハ:ねえ、とりあえず、この窪地を一周回ってみない?』


 ユズリハの提案を採用し、4人は窪地の調査を開始した。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっています。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
闇人のルビがカクヨムでは「やみゅうど」なろうでは「やみうど」になっていますが…… どちらかが誤記ですかね?
塩を魔法で作るのか、アイスプランツみたく塩を取り入れて結晶化させるだけなのか
スターシステムなく概念流れだな(笑)
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