2-4 石探し
本日もよろしくお願いします。
一昨日までミニャが住んでいた河原の拠点。
そこは今日から、石製人形の工房や研究施設となっていた。賢者たちはここを『大工房』と名付けた。
ミニャが丸太階段に参加し始めた頃、そんな大工房で6人の賢者たちが石製人形に宿った。昨晩の定例会議で探索要請があった希少石の調査隊だ。
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開始時刻 9:00
仕事:河原で希少石探し
人形:石製人形
募集人数:6人
条件1:ジャスパーを指名1人
条件2:石鑑定ができる土属性1人
条件3-1:鉱石に詳しい者4人
条件3-2:3-1が埋まらない場合、残りは誰でも可
達成条件:河原の石を調査し、大工房に帰還。
説明:
・希少石を調査、採取する。
・発見したら目立つ場所に集めておいてほしい。のちに回収班を出す。
・現場リーダーはジャスパーとするので、指示に従うように。
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『ジャスパー:それじゃあみんな、出発しよう!』
ジャスパーはワクワクしながら集団を率いて、大工房のすぐ前の河原へ移動する。
『水神王:あっ、ミニャちゃんたちだ。お仕事して偉い!』
河原へ出ると、ミニャがたくさんの賢者と共に丸太階段を作っている姿が見えた。
ネコ太が教えたのか、6人に向かってミニャが手を振ってくれた。6人もピョンピョンとジャンプしながら大きく手を振って応える。
さて、そんなファンサービスを受けて気合も充填したところで。
『ジャスパー:みんな石探しはある程度詳しいってことでオーケー? わからない人は手を上げて』
その質問に、手を上げる者はいない。
どうやら石にある程度詳しい人材が集まったようだ。
『ジャスパー:それじゃあ上流方向に3人、下流方向に3人で分かれよう。石の集積地には2本の木の棒を×型に立てておいて。それを目印にしてあとで回収班が来てくれるから』
リーダーのジャスパーがそう言うと、続いてライデンが手を上げて前に出た。
ライデンは討伐隊の軍師になった賢者である。石についても多少知っているようだ。
『ライデン:探索委員会から注意事項でござる。河原だと猛禽類が襲ってくる可能性があるから、掴まれたら落ち着いて対処してほしいでござるよ。上空で攻撃を加えると落とされるから、冷静にニーテストへ連絡を入れるでござる』
ここは異世界。体は人形。鳥さんが「なんだアレ!」と思うのも必定。石探しも命がけなのである!
チームには1人ずつ石鑑定ができる土属性賢者を入れて、いざ実施。
ジャスパーは上流へ向かうチームだ。チームメンバーはライデンと水神王。賢者たちの中で割と有名人な2人だ。
ジャスパーは異世界に来た当日から、この川を見てワクワクしていた。
ゴブリンのせいで川の探索は禁止されていたため、やつらがいなくなって、やっと探索にこぎつけた。
『ライデン:むっ、石英のクラスターがあるでござるよ』
『ジャスパー:ホント!?』
さっそくキラキラした鉱石がついた石が発見されて、ジャスパーはピョンピョンと石の上を跳んで近寄った。ライデンは足元の凝灰岩を指さしていた。
『ジャスパー:おーっ、でかいね』
凝灰岩の窪みに石英が六角形に生えていた。
人形の手と比べてみて、自分の発言にハッとする。
『ジャスパー:そうか、人形の体だったね』
『ライデン:ははっ、拙者たちからすれば大きいでござるけど、人間サイズだったら小指の爪くらいでござろうな』
『ジャスパー:なんにしても、これがあるってことは、近くに石英の鉱脈があるかもしれないね』
『ライデン:ルミーナ草よりも少し上流に切り立った崖があるみたいでござる。あそこら辺の岩盤は怪しいと思うでござるな』
『ジャスパー:僕もあそこは怪しいと思うんだ。でもまずは落ちている石から探してみよう』
探索範囲も少しずつ広がっているため、賢者によっては何かありそうだと注目している場所もあった。
石拾いを再開して、すぐにジャスパーは碧玉を見つけた。
見た目は少し緑がかった石だが、磨けば綺麗な色合いになりそうだ。
■賢者メモ 石鑑定■
『碧玉の原石』
・宝石の原石。
・ミニャにとって、微毒あり、薬効あり、食用不可。
・微毒効果:ミニャには消化が難しく腹痛を起こす。服用するべきではない。
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『ジャスパー:ふむふむ。石鑑定のルールがなんとなくわかってきたぞ』
鑑定にはそれぞれルールがある。
基本的にミニャにとって良し悪しを教えられ、他の説明は簡素である。
この碧玉も宝石と語られているが、石英の一種だとか、どんな不純物が入っているのかなどといった情報はなかった。
また、ここでも『薬効あり』と出る。
むしろ薬効がない物を探す方が難しく、石ころさえも加工方法次第では薬になるらしい。ロマンのある話だが、これを紐解くにはまだ異世界知識が少なすぎるので、『薬効あり』は現状で役立たずの情報であった。
『水神王:おー、良さそうな石だな。碧玉か?』
『ジャスパー:うん、わかる?』
『水神王:昔、カヌー部の部長に石磨きを手伝わされたことがあったからな。碧玉ならなんとなくわかるよ。まあ、たぶんチャートも持ってくると思うけど』
『ジャスパー:チャートと見分けるのは難しいからね。石鑑定するからどんどん持ってきていいよ』
『ライデン:ジャスパー殿、鑑定してほしいでござる! たぶんこれは瑪瑙ではござらんか?』
『ジャスパー:どれどれ!? おーっ、瑪瑙だ! かなり大きいね!』
キャッキャである。
しかし、それを生放送で視聴している賢者は残念ながら少数だ。マニアックなので。やはりメインコンテンツはミニャちゃん陛下なのである。
それから3人は石を集めに集め、集積地には大量に希少石が集まった。
緑や赤、白、茶色、青と様々だ。
内容は碧玉、瑪瑙、白い石英、翡翠。
そして、小さいが七色に光るオパールの原石も見つけた。
そのオパールを発見した際に石鑑定でひとつわかったことがあった。
それは石の構成の大半を占める要素で鑑定結果が変わるということだ。
凝灰岩からオパールが顔を覗かせていたのだが、その岩自体は凝灰岩と鑑定に出たのである。なので、テニスボールサイズの石の中にビー玉サイズのダイヤモンドが隠れていたとしても、それを見破ることはおそらくできない。
さらに、もうひとつ大きな発見があった。
地球上にはなかった希少石である。
■賢者メモ 石鑑定■
『魔魂石』
・魔石が長い年月をかけて鉱石と交じり合った宝石。
・ミニャにとって、毒性なし、薬効あり、食用不可。ミニャはこの石を消化できないので、食べさせてはならない。
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それは直径が3cmほどの小さい石で、白と赤が層になり、それぞれの境界が淡いピンクになっていた。
『水神王:おー、ついに魔石の存在が示唆されたか』
『ライデン:ゴブリンは焼却処分だったでござるからな。初めての手掛かりでござるね』
『ジャスパー:そもそも魔物が魔石を持っているっていうのは固定観念じゃない? 力を宿した自然石が魔石なのかもしれないよ?』
『水神王:言われてみればそうだな』
『ライデン:これは一本取られたでござるね。その通りでござる』
ジャスパーの考えに、2人は目から鱗がぴょんぴょん出た。
『ライデン:とにかく、ニーテストに報告しておくでござるよ』
『水神王:ところで、コイツらって『石材変形』で変形できるの?』
水神王は集積場に集めた石を見下ろして、言う。今さらである。
『ジャスパー:ちょ、ちょっとやってみようか』
ジャスパーは根本的なことを試していなかったため、慌てて石材変形を使用してみた。土属性の賢者も石材変形が使えるのだ。
すると、小さな赤碧玉を簡単に平たい形状に変えることができた。
『ジャスパー:良かった。ニーテストにぶっ飛ばされるところだった』
『水神王:ま、まあ、コイツらなら磨くだけで綺麗だし、ぶっ飛ばされはしなかっただろ』
『ジャスパー:でも、花崗岩を変形させた時よりも魔力消費が多いかも』
『ライデン:ランクが高い石ってことでござるかね?』
『ジャスパー:じゃないかな?』
3人はそれぞれが自分で見つけた自慢の一品を持って、他の3人の下へ向かった。ジャスパーは魔魂石、水神王は真っ白な石英、ライデンはオパールだ。
下流班は大工房の近くに集積場を作っており、そこにも結構な数の希少石が集められていた。
『ジャスパー:うわーっ、凄いおっきいの見つけたね!? うわー、すげぇ!』
下流班の目玉は、赤碧玉だった。フィギュアを2体は作れるだろうサイズだ。天然石でこのサイズだと、地球でもそこそこ良い値になるだろう。
『河童:だろー。川の中にあったから引き揚げるのに苦労したぜ』
『水神王:川の中から引き揚げたのか? 無茶すんなぁ』
『河童:まあ浅いところだったからな。深い場所じゃ無理だよ』
『ライデン:それにしても良い色でござるな。3倍速い専用機を作ってもらいたくなるでござるね』
『河童:それいいねーっ!』
『アース:それよりもお前らの持ってきたのも良いじゃん! ライデンとジャスパーのなんて超レアじゃね!?』
『ライデン:拙者のは地球にもあるでござるから、やっぱりジャスパー殿のが一番でござるな』
『ジャスパー:これ魔魂石っていうんだって!』
『麒麟:魔魂石!? すげぇ! ファンタジー鉱石じゃん!』
『ジャスパー:うん、これ一個しか見つからなかった!』
キャッキャキャッキャッ! 女子か。
『麒麟:へー、なるほど。瑪瑙みたいに層になってるんだな。太古の魔石で似た現象が起こった感じかな』
『ジャスパー:僕もそうじゃないかと思う』
などと議論するこの場の賢者たちはちょっとオタク気質だった。
『水神王:それよりもここの石だけでも運んじまおうぜ。俺は早く生産属性たちに磨かせたいよ』
『ジャスパー:ごめん、そうしよう』
あとで回収班は来てくれるが、6人で持てる範囲で大工房へ希少石を運んだ。早くなにかを作ってもらうのだ。
ところが、運ばれてきた希少石を見た工房の賢者たちの反応は薄い。
いま活動している工作班に石萌えはいなかった。その代わりに美少女フィギュアのおっぱいを丹念に作っている姿から、何らかの萌えの伝道師であるとは思われる。
『河童:バッカ! これを使ったら腰抜かすほど綺麗なフィギュア作れるから!』
河童はみんなで頑張って運んだクソデカ赤碧玉をペシペシと叩いた。
『工作王:ちょっと赤が強くね? これで人形作ると怖そうなんだが』
『ビヨンド:髑髏丸に作らせるか? アイツはホラーテイストの作品を作るし』
『ネムネム:それよりミニャちゃんにアクセサリー作らない?』
『工作王:悪くないな。ペンダントとか作ったら喜ぶぜ、きっと』
『河童:だーっ、いや、それもいいけどね。フィギュアも作ろ?』
『工作王:わかったわかった。じゃあ1体作ってみるよ』
工作王たちも、ネットなどで碧玉を磨いた美しさを調べれば、舐めた口も利かなかっただろう。異世界にいる間はネット検索ができないため、こんな有様なのだ。
実際に、ネット検索できる状態のニーテストは興味を持ち、希少石探しにかなり前向きに考えた。
人形にした際に特別な力がなくとも、希少石ならいずれは来るかもしれない交易商品として使えそうだと思ったのだ。
そんな工作王たちも注目したのは、ジャスパーが持ってきた魔魂石だ。白と赤とピンクの斑模様の石だが、名称がファンタジーなので興味が惹かれたのだ。単純である。
『工作王:コイツは一点物だから、ひとまず加工は待とうってニーテストからお達しだ』
『ジャスパー:うん、それが良いと思う。珍しそうだし無駄にはしたくないな。でも、磨かれたら僕にも見せてね?』
『工作王:オーケーオーケー。使う時は必ず呼ぶよ』
スレッドでニーテストから指示が出され、ジャスパーも納得。
こうして、希少石のフィギュアの製作が始まった。
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