1-34 異世界研究2
本日もよろしくお願いします。
多くの研究が始まった中、やはり最も注目されているのは人形研究チームである。
彼らは、まだ全然解明されていない人形のルールの発見や、人形のスペック向上を目的にしている。
先ほど中条さんに鑑定を依頼された工作王やふともも男爵が、いま実験をしようとしていた。
『工作王:完成だ!』
『ふともも男爵:うーん、最高の出来だね!』
2人が完成させたのは、石を用いた人形だった。
しかし、今までのようなデッサン人形っぽい見た目のものではない。
華奢な手足にくびれた腰と膨れた胸、ショートヘアの美しい顔立ちを持った——そう、美少女萌えフィギュアなのである!
人形のスペックが変わる要因のひとつはクオリティである。
これは赤土人形の製作をしている段階で気づいており、クオリティが高い人形は低い人形よりもハイスペックになったのだ。
ならば、見目麗しい人形ならさぞ強いことだろう、と考えるのは当然の流れだった。
ゆえに作った。美少女フィギュアを……っ!
『ビヨンド:うぉおおお、めっちゃ良いじゃん!』
『カリバー:渋いなぁ。俺んちの棚にも欲しいくらいなんだけど』
わーいとオタクな工作班が集まり、仕事を放置してフィギュアの品評会を始める。ある意味、変人揃いの賢者っぽい行動と言えよう。
塗装用の絵具がないので河原で拾った石を磨いた色そのままだが、それがまた味があっていい。
日本の石材屋でもキャラものの作品を野外に展示していることはあるが、しかして、このフィギュアが現実で展示されることはないだろう。なにせ、全裸だからである!
美少女フィギュアに宿れた場合、服や長い髪が体にどのような影響を及ぼすかわからないため、このフィギュアは全裸であり、ショートヘアなのだ。決してエッチな目的からではない。
≪ネムネム:ニーテスト見てる? フィギュアが完成したから召喚して(*‘ω‘ *)これであたしもアニメ美少女や!≫
チャットルームでネムネムがニーテストにお願いする。
なぜネムネムがこのフィギュアに一番に召喚されるのかと言えば、このフィギュアのラフ画をネムネムが描いたからである。
ネムネムはリアルでイラストレーターをしていた。多くの企業から引っ張りだこの有名絵師というわけではないが、SNSやラノベの表紙で作品を見たことがあるという賢者がいるくらいには知名度のある絵師だった。
賢者としてのジョブもずばり『絵師』で、生産属性で作れる『工作道具』の適性も筆である。ただし、絵具は作ることができない。
おさらいとなるが、ミニャのオモチャ箱は外部で入手した画像や動画を取り込むことはできないし、外部へ転載することもできない。
その代わりに、ミニャのオモチャ箱内にある描写ツールで描いた絵や、過去動画からスクリーンショットした画像なら、サイト内で自由に貼り付けることができた。
そういう理由もあって、ネムネムのような絵心がある賢者は非常に重宝されていた。
今回もそれを活用して、工作王たちはラフ画を元にフィギュアを手掛けたのである。
さて、ネムネムが召喚されることになったわけだが、女性なので、召喚される前に局部にツルを巻き付けてガードされた。逆にエロい。
準備が整うと、いよいよネムネムが召喚された。
『ネムネム:ふぉおおおお、指長い! 足長い! ちんちくりんじゃない!』
『工作王:お前、リアルでちんちくりんなの?』
『ネムネム:ぶっとばすぞ!』
『工作王:んえぇ?』
美少女フィギュアからそんなフキダシが出てくる。
本来なら動くはずのない美少女フィギュアが動いたことで、工作班はみんな大興奮。たーのしー!
『ふともも男爵:ついに長年の夢が……っ!』
そんな中、ふともも男爵はその場に崩れ落ちて顔面を押さえた。
ふともも男爵は自前でフィギュアを作るので、感極まったのだ。ネムネムが宿ったそのフィギュアが自分に愛情を持ってくれるかは別にして。
≪ニーテスト:それでスペックは?≫
ニーテストがチャットルームからクールに問うた。
『ネムネム:熱くなれよ、ニーテスト! 美少女フィギュアやぞ!』
≪ニーテスト:やかましいわ≫
とりあえず、ネムネムはステータスを表示した。
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ネムネム
お仕事ポイント:620P
ジョブ:絵師
属性:生産
魔力:303/351『※消費分は前回召喚から引き継ぎ』
ボディ:緑色岩フィギュア
活動時間:320/322
影響制限
動物:0/100P
魔物:0/100P
植生:0/100P
地形:0/100P
生産:38/100P
伝授:9/100P
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ボディタイプがフィギュアに分類され、活動時間は女神製人形の4時間を越えて、5時間22分。過去最高である。
『ネムネム:凄いパゥワーだ! 今なら……今ならサバイバーだって倒せるはず! うぉおおおおおお!』
『工作王:いや、やつは無理だ』
『ネムネム:そんなことはない! そんなことはない! うぉおおおお!』
ネムネムの体感によるものだが、今まで宿った全ての人形の中で最高の宿り心地だった。その運動性能は女神製の花崗岩人形すらも凌駕していた。
『ネムネム:ひょっふーい!』
『工作王:うっわ、気持ちわるぅ! なにその走り方!?』
どのくらいのパワーがあるのか知るために高速で移動する美少女フィギュアを見て、工作王はドン引きした。
『ビヨンド:完全に運動音痴の子の走り方なのにクッソ速いな』
そう、ネムネムは運動神経が死亡している子だった。
しかし、ダバダバ走りをしているのに、物凄く速い。それがとても気持ち悪い。だが、この場にいる誰も今のネムネムよりも速く動ける自信はなかった。
『ふともも男爵:すっごく強そうな子なのにどうしてあんな……』
『カリバー:宿る賢者ってのは大切なんだな』
ネムネムは超楽しそうだが、周りで見ている賢者たちは言いたい放題だ。
なにはともあれ、運動性能は素晴らしいようだ。
なによりも見た目がいい!
ただし、いかに人に似せても肌のぷにぷに感はないし、声も出ない。
しかし、関節のない腕が曲がり、五感も宿るわけだから、何かしらの条件が揃えばそれらも可能だろうというのが賢者たちの考察だ。
フィギュアを製作するにあたって重要な点は、『影響制限:生産』のコストが通常の石製人形を作るのと同等だったことだ。つまり、人形作りで加算される『影響制限:生産』は素材によって変化して、クオリティは影響しないことがわかった。
ただ、時間的な製作コストと魔力的なコストは大きく変わるので、一気に大量に作るのは無理である。ちなみに製作時間が長くなるほど『石材変形』を長時間使用するため、時間的コストと魔力的コストは完全に比例する。
『ネムネム:ニーテスト、ミニャちゃんにお披露目したい!』
≪ニーテスト:ミニャはいまお昼寝中だが、もう1時間か……まあ良かろう。あまり大声は出させるなよ≫
『ネムネム:じゃあニーテスト、一回送還して』
というわけで、ミニャにお披露目することに。
ネムネムは一旦帰還して、フィギュアに賢者が宿っていない状態にした。
新しいお人形にミニャ自身の手で一番に召喚させてあげたい、という計らいだ。実際には2度目だが、優しい嘘である。ネムネムは道徳が花丸だった。
『ネコ太:ミニャちゃんミニャちゃん!』
「うみゅ……?」
ネコ太たち近衛隊が揺り起こすと、ミニャはもぞもぞと起き上がった。
時は午後。ミニャは水神王たちのお船の冒険を見たり、モグブシンと遊んだりしたあと、朝がちょっと早かったということもあって少しお昼寝をしていたのだ。
「ご飯?」
『ネコ太:違うよ。ミニャちゃんに凄い物を見せてあげようと思って起こしたの』
「……?」
ミニャは寝ぼけた様子でコテンと首を傾げるが、脳内の子猫たちが『凄い物』と書かれた猫じゃらしをテシテシと叩いて電気信号を生み出していく。
「にゃんですと!」
その結果、クワッと大覚醒。
ワクワクするミニャの前に、美少女フィギュアが運び込まれた。
『ネコ太:工作班のみんなでこれを作ったんだって!』
「ふぉおおおお……! お姉さんのお人形さん!」
ミニャは小さな手をパッと開いて、驚きを露わにする。
瞳から放出されたキラキラ粒子を浴びて、賢者たちは幸せな気分になった。
なお、賢者たちには少女の見た目のフィギュアだが、7歳児のミニャにとっては綺麗なお姉さんであった。
『ネコ太:さっそく賢者さんを召喚してみよう!』
「うん!」
ミニャはネムネムを召喚する。
緑色岩フィギュアがむくりと起き上がり、腰に片手を添え、逆ピースを目元に添えてビシッとポージング。スタイル抜群のフィギュアに宿ったネムネムは調子に乗った。
「みゃーっ、可愛い!」
ミニャは猫のように地面に伏せ、瞳を輝かせてネムネムを見つめる。
突っついたり手に乗せたり、ニッコニコだ。
ミニャは新しいお人形をすっかり気に入った様子。
ネムネムはインドア生活で体得していたズンズンダンスを踊り、ミニャを喜ばせた。インドア派の女子はみんなズンズンダンスの使い手なのだ。
この一件は、今後の人形の方向性を決定づける瞬間でもあった。
ハイスペック人形はアニメ調フィギュア。
美少女フィギュアをもっと作りたい!
イケメンフィギュアを作りたい!
工作班たちの創作意欲がカッカと過熱していく。
■賢者メモ 人形■
『石製フィギュア ※数値のばらつきは後の調べによる』
・運動性能が非常に高く、魔法性能は女神製カカロン人形に劣る。
・活動時間300~360点
・魔力量290~400点
・生産コスト
・時間的コスト:2人で3時間
・『影響制限:生産』コスト:20点×2人
・魔力コスト:300点×2人
※作業参加人数が増えることでコストは変動する。
※初回製作の時間的コストは慣れていないので増加する。
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