8-24 メイクアップ
本日もよろしくお願いします。
社会科見学を終えて、午後。
ミニャはご飯を食べて、ちょっとだけお昼寝をした。大きなイベントの時でも堂々のすやすやタイムだ。
目覚めると、夕方から始まる誕生会へ向けて準備開始。
まずはアメリアと一緒にお風呂に入れられ、ピッカピカに磨き上げられる。
そうしたらお着替えだ。
先日王宮に行った際に着たのは、グルコサ訪問の際に領主から貰った服だった。
しかし、本番である今日は違う。
グルコサ防衛戦やらのお礼で貰った高品質の布を用いて、賢者たちがデザインして作った服を着るのだ。
あまりにも奇抜な格好だと浮いてしまうので、衣装のシルエット自体はアメリアの服を参考にしてミニ丈のベルラインドレスを採用した。
しかし、そこは賢者である。
翡翠色の上半身から裾にかけて美しい白になるようグラデーションに染色し、淡い緑から白に変わる辺りでピンク色の花びらを散らすように色付けして鮮やかさをアップ。
首回りはボトルネックにして胸元の露出を控える一方、腕周りはオープンショルダーのフリルスリーブ七分丈にして、お姉さんみを演出。
足にはこのドレスだけのために作った白いレースアップブーツ。膝上のミニ丈ドレスなので、子供ながらにスラッとしたミニャのカッコイイ足を、ブーツがより引き立てている。
今は秋も終わりの時期なので、防寒として優しい色合いの青いカーディガンを肩にかける。現地で暑かったら脱いで、一緒に来てくれるシゲンにでも預ければいい。
そして、細い手首にはミニャが自分で作ったブレスレットを装着!
白石英や水晶鹿の角で作られた細かな丸ビーズの真ん中に、やはり水晶鹿で作られたドングリチャームがついた、素敵なブレスレットである。
髪は女性賢者たちが立体感を出すように整え、水晶鹿の角で作られた髪留めで前髪が留められる。
薄っすらとメイクも施され、唇には賢者たちが調合した艶出しリップが塗られた。
というわけで大変身!
「コーネリアさん、ルカルカさん、どーお?」
「いやもうめっちゃ可愛いです!」
「こりゃパーティでみんな見惚れちゃうよ、ミニャ様」
「にゃふぅ!」
お手伝いしてくれたコーネリアとルカルカや、足元でピョンピョンしている近衛賢者たちから褒められて、ミニャはむふぅ!
『織姫:はわわわわ……』
『ネムネム:織姫さん、最高の仕事だよ!』
『織姫:額縁に飾って家宝にしますぅ!』
このドレスの制作リーダーをしていた賢者は、感動に咽び泣く。
『地獄の機織り姉貴』としてスカウトされ、ついに王子様のパーティに着ていくドレスを作ったのだ。それは織姫にとって、子供の頃に夢見ていた大仕事だった。
「織姫さん、素敵なドレスをありがとうございます!」
『織姫:ミニャちゃん、とーっても素敵です!』
「にゃふぅ!」
ドヤッとしたミニャは、「そうだ!」とスレッドに書き込んだ。
ミニャのドレスアップ中、男性賢者たちはワクワクしながら別の配信を視聴していた。女性のおめかしを眺めるのはいかんと、我慢していたのだ。
【328、ミニャ:みんなー、もういいよー】
【329、名無し:ミニャちゃんだ!】
【330、名無し:光の速さで見に行く!】
【331、平和バト:わぁ、楽しみです!】
【332、名無し:ぎゃぼーっ、ぎゃわいいいいいい!】
【333、名無し:超絶可愛い! なんですかこれ!?】
【334、鈴キング:こんなのお姫様ですやん!?】
【335、ロリエール:な、なんと尊い……っ!】
【336、工作王:俺が作ったブーツ履いてるぅ!】
【337、名無し:尊死した!】
【338、ロバート:これは今日のパーティの主役はミニャちゃんで決まりだ!】
【339、名無し:可愛すぎて電車の中で笑っちゃったよ!】
【340、名無し:俺も額縁に飾りたい! 撮影会求むぅーっ!】
賢者たちの脳内に幸せ物質がブワッと広がり、日本各地(一部海外)で一斉に笑顔の花が咲く。
気をよくしたミニャはクルンと回って、ツンとちょっと上を向いておしゃまなお姉さんのポーズ。
【359、名無し:ふぎゃーっ_(:3」∠)_パタン】
【360、名無し:なんだこれなんだこれ!?】
【361、カナデ:ふわってなりましたよ、ふわって!】
【362、名無し:ネコミミの妖精や!】
何人もの賢者が尊死した。
【371、名無し:唇もぷるんぷるんやん!】
【372、名無し:このリップ誰が作ったの?】
【373、工作王:中条さんがメインで、女の子たちがワイワイ作ってたぞ】
【374、名無し:この文明レベルでも作れるものなんだ】
【375、ハナ:ミニャンジャ村のリップグロスはオール天然由来なんですよ】
【376、ユナ:このグロスはヤバいですよ。試し塗りで持ち帰らせてもらいましたが、付けている間のツヤも良いですし、翌日に唇がぷるんぷるんになります】
【377、名無し:ユナちゃん、たぶんその説明を聞いても、男子は本来のグロスとの差が誰もわからんと思うよ】
さっそくミニャは領主たちに見せに行った。
すでに男衆は着替え終わっており、全員が細身のパンツにワイシャツと華美な刺繍が施されたジャケットを着ていた。髪も梳かされ、いつも手櫛で整えているクレイもいつもと雰囲気が違う。
その場にはシゲンもおり、いつも以上に正装していて、ヒロインを堕とす執事風のカッコ良さ。
「おー、これは可愛らしい。ミニャ殿、とても似合っているよ」
領主が一番に褒め、ソランやクレイ、シゲンも微笑みながら褒めてくれる。さすが貴族である。
ミニャは異性から褒められてちょっとテレテレ。懐いている同性のコーネリアたちや、いつも一緒の賢者とはちょっと反応が違う。
【410、名無し:ヤバいな貴族。凄くスマートに褒めるじゃん】
【411、名無し:俺が同年代だったら顔を真っ赤にして何も言えない自信がある】
【412、名無し:こんな美少女を前にしたらそりゃそうなるわ】
【413、ロバート:アメリカだと誕生日会で女の子がドレスアップするんだが、子供だった私は何も言えなかったな。クレイ君たちを見て、あの時の記憶が一気に蘇った】
【414、名無し:誕生日会に呼ばれるだけ……っ! そんなの1回も呼ばれたことないわ】
賢者がクレイたちに感心していると、アマーリエとアメリアがやってきた。
「まあ、ミニャ様! なんて素敵なの!」
「ミニャ様素敵ですぅ!」
「わぁ、アメリアちゃんも可愛い! アマーリエ様もとっても綺麗です!」
女子3人でキャッキャ!
男子4人は静かに微笑んで口を挟まない。よく訓練されていた。
「ミニャ様、唇がキラキラしてます!」
「これねー、賢者様がやってくれたの! アメリアちゃんもつける?」
「いいんですか!?」
「いいよね、賢者様?」
もちろん答えはイエスである。というか、賢者たちは幼女をおめかしさせる楽しさに目覚めていた。
せっかくリビングに集まったのに、またキャッキャと女子たちが去っていき、領主たちはニコニコしながら黙ってそれを見送った。とてもよく訓練されている。
女性のメイクアップタイムなので、また男性賢者たちは生配信から追い出される。
女神フィルターが作動しているわけではないので完全に自己申告なわけだが、領主たちの紳士的なふるまいを見たあとということもあってか、律義に守る男子が多数。
グロスの使い方を熟知している女子たちが、素敵な感じでツルプル立体感が宿るようにつけてあげる。
そうして再び女子たちがリビングに訪れた。
新しい化粧品にアマーリエは上機嫌で、アメリアも大好きなミニャがつけているグロスをつけさせてもらってニコニコだ。そんな女子3人を、領主たちも楽しそうに褒めた。
領主たちへのお披露目が終わり、上機嫌の女子たちにメイドが服を持ってきた。
「ミニャ様、こちらをお羽織りください」
「この上から着るの?」
ミニャはせっかくお姉さんぽいのにとびっくりした。
「これは出発するまで着ておく物なんですよ。お飲み物を服にこぼしてしまうと、別の服に着替えなくてはなりませんから」
「はー、そういうのかー。わかりました!」
ミニャはバンザイして着させてもらった。
それは白い貫頭衣のようなもので、用途の都合で前半身の生地が少し厚くなっていた。貴族が着る物なので花の刺繍が施されており、短時間しか着ない物なのに結構オシャレである。
ちなみに着ているのは、ミニャとアメリアだけである。飲み物を溢しがちな子供用であった。
【447、アオ:ミニャアメ、てるてる坊主みたいできゃわわ!】
【448、名無し:アメリアちゃん、お揃いで嬉しそうwww】
【449、名無し:てえてえのう、てえてえのう】
【450、名無し:ていうか、アマーリエさん色気やべぇな】
【451、名無し:これが3児の母……】
【452、名無し:グロスを塗ってアメリアちゃんも美幼女度マシマシですやん】
【453、ロバート:領主さんたちも楽しそうに褒めてるね。こういうのは見習わなくちゃなぁ】
【454、名無し:相手がいないけどな!】
【455、タカシ:おのれブレイドぉおおお!】
【456、名無し:流れ弾すぎるだろwww】
【457、名無し:ていうか、グロスはともかく口紅は普通にあるんだな】
【458、幻魔:口紅は国や時代で立場が大きく変わるけど、物自体は紀元前数千年まで遡るらしいからな。日本でだって平安時代からあったみたいだぞ】
【459、名無し:どこの世界も、綺麗な唇がみんな欲しいってことか】
【460、ナオマサ:口紅と言えば、パーティでこっそりと女性の健康鑑定をしてみるといいかもね。もしかしたら、地球であったように水銀入りの口紅を使っている人がいる可能性もある】
【461、幻魔:あー、それはあるかもな。水銀に限らず、鉱石を化粧品に混ぜたって話はあるし、健康被害があってもおかしくない】
【462、名無し:水銀がやべえのはわかるけど、異世界でもそのアイデアになるかな?】
【463、幻魔:水銀は見た目が神秘的だから普通にあり得ると思うぞ。もっと言えば、パトラシアは魔物素材もあるしな】
【464、名無し:あっ、お話が始まった!】
女子たちへのたっぷりの褒め褒めタイムが終わり、ミニャたちは席についた。
「さて、ミニャ殿。このあと1時間後くらいに出発することになる」
「わかりました!」
「基本的に、私かアマーリエ、あるいは私の父フォルガがミニャ殿のそばにいるから、気楽に参加してくれていい。アメリアたちもそばにいるだろうからね」
ミニャはふんふんと頷いた。
「パーティの中で、一度だけ、全ての貴族が陛下に向かって膝をつくタイミングがある。しかし、ミニャ殿とお付きのシゲンは、周りがやっているからといって跪く必要はない。もちろん、賢者殿もだ」
「そうなんですか?」
「ああ、ミニャ殿は国外の王族のような扱いだからね。とはいえ、さすがに跪いている間に賢者殿と話をしていれば貴族の心証は悪くなるだろうから、静かにしてキリリとしていてくれたらいいよ」
「わかりました!」
ミニャはキリリとした。この顔で挑むようだ。
「あとは、王子にプレゼントを渡すわけだが、今回は父が最初でミニャ殿の番は最後だ。この順番には意味があってね、早く渡す者ほど高い爵位や王家との血縁が濃い傾向にある。しかし、最後に渡す人もまた特別な意味を持っている」
「むむっ! アメリアちゃん、最後は特別なんだって」
「はい!」
ミニャとアメリアは一緒になってむむむ顔。
「他のプレゼントが色褪せてしまうような物を持ってきた者を最後にするのさ」
それを聞いて、ぽやーっと聞いていた生産賢者たちがいきなりプレッシャーを背負った。めっちゃ期待されている……っ!
「通常は貴族間で後腐れが起こらないように、私か父、あるいは顔を立てるべき他国の王族などが最後に渡すのだが、今回はミニャ殿だな」
プレゼントは事前に検品が挟まれているので、こうした順番を決められるのだろう。当日持参だったらこうはできない。
「にゃー……んー、んー、んっ! 大丈夫! 賢者様が作ったリバーシは凄いから!」
「はい!」
大トリという大任を任されてしまったミニャだが、賢者が作った物は凄いのだと信じて、自分を奮い立たせた。それに呼応するように、アメリアもふんすぅ!
「はっはっはっ! ああ、リバーシは素晴らしかったよ。新しい娯楽とそれをプレイする一品物の遊戯セットを出すのだから、堂々と挑めばいい。みんな驚くことだろう」
「わかりました!」
【610、サカタ:うぉおおおお、ミニャちゃん最強! 生産賢者最強!】
【611、工作王:大丈夫だ。俺たちは最高の逸品を作った】
【612、ネムネム:弱気になっているヤツいねえよなぁ(`・ω・´)にゃぉおおおん!】
【613、ルナリー:全て腕に縒りをかけて作ったので大丈夫です!】
【614、リッド:僕たちの作品で王宮に殴り込みじゃー!】
【615、名無し:どうしたいきなりwww】
【616、名無し:生産属性ってたまに変なテンションになるよな】
ミニャが自信満々に言うので、生産賢者たちはプレッシャーを跳ねのけて胸を張る。
こうして、いよいよミニャの殴り込み(お誕生日会出席)が始まった。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想大変励みになっています。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




