特別編 ニーテストの初めてのお風呂
本日もよろしくお願いします。
あとがきにお知らせがあります!
【8月19日】定例会議
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327、ニーテスト
さて、質問などはないようなので、ここらで定例会議を終わりにしたいと思う。
328、名無し
ういー、お疲れぇ。
329、名無し
さーて、ダンジョンにでも行くかー。
330、くのいち
あれ、今日の議事録当番ってあたしの班だっけ?
331、ネムネム
うんにゃ、今日はあたしの班だよー(*’▽’)任せておけ。
332、ニーテスト
あ、言い忘れていた。明日の風呂だが、俺もミニャと一緒に入るから、それ関連のクエストを受ける。緊急用のスレッドは開いているから、何かあったら連絡してくれ。
333、名無し
はぁー!?
334、ネムネム
ニーテストは明日ミニャちゃんと風呂に入るっと( ..)φメモメモ
335、名無し
そんなん議事録にするなwww
336、名無し
だけど一人称で俺って言ったからダメでーす!
337、名無し
本当に癖になってんなwww
338、名無し
お前が女風呂に入るようになったら、俺たちに勝てるところが何もなくなるじゃないか!
339、ニーテスト
まるでこれ以外で勝てるところがあったような言い方だな?
340、名無し
あーあーあー、言っちゃいけないこと言いましたよ、この人!
341、名無し
バカがよー! お前が女風呂に入れなければ、この一点だけに関してはドローゲームなんだよ! 少なくとも負けじゃねえ!
342、名無し
そうだそうだ!
343、ニーテスト
だが、私はすでにシェアハウスしているヤツらと一緒に風呂に入ったことならあるぞ?
344、名無し
は?(血涙)
345、名無し
え、リアルでそんな萌えアニメみたいなことしてんの?
346、名無し
みんなで泡泡なんか?
347、ネムネム
ニーテストは美女たちと泡泡してるっと( ..)φメモメモ
348、名無し
ネムネムも一緒に住んでんじゃないのかよwww
349、ジャパンツ
ニーテストさん、そこんところ詳しく!
350、ジャパンツ
やべっ、名無し表記にするの忘れてた!
351、名無し
興奮しすぎやwww
352、名無し
八鳥村に住むとそんな凄いことが起こるんですか!?
353、名無し
騙されるな! 俺も八鳥村に引っ越したが、1人で入っているぞ! 新品のお風呂、すっごく気持ち良かった!
354、名無し
悔しがってるのか喜んでるのかはっきりしろwww
355、名無し
【悲報!】俺たち、ニーテストに何も勝てないことが確定してしまう!
356、名無し
悔しい……悔しいっ!
357、名無し
いや、何かしらは勝ってるやろwww
358、名無し
【朗報!】八鳥村に引っ越した私ちゃん、さっそくニーテストの家にお泊まりさせてもらう! 家全体が良い匂いした!
359、名無し
これは勝てる要素なしですわ。
360、ネムネム
ニーテストの家は良い匂いがするっと( ..)φメモメモ
361、名無し
あの、俺も八鳥村に住んでいるんですけど、そんなイベントのお誘いなかったよ?
362、名無し
男子禁制やぞ。
363、名無し
仕方ねえな。俺も八鳥住みだけど、一緒に風呂入るか?
364、名無し
入らねえよ!
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そんな会議後の雑談があった翌日の15時。
ニーテストがお風呂のためにミニャンジャ村へ降り立つ。
このクエストを受ける賢者が宿っているのは、希少石や石で作られたフィギュアだ。
お仕事が始まる前にまずはクエストリーダーの挨拶。とはいえ、毎日行なっている仕事なので、特別なことがなければ短いものだ。
『くのいち:さあ、みんな、今日もお風呂の準備を始めるよ。あ、それと!』
クエストリーダーから手で促されて、ニーテストが前に出る。
『ニーテスト:ニーテストだ。今日は私も風呂の準備に参加させてもらう。ないとは思うが、余所で何かあった場合は少し仕事から離れるから、その時はすまんが協力してほしい』
ニーテストが忙しいのはみんな知っているので、首肯で理解を示す。
さて、これから始まるのはお風呂の準備である。
この準備クエストに携わると、このあとのお風呂クエスト優先権がゲットできる。そんなチケットを貯めこまれても困るので、基本的に当日限り有効だ。
あくまでも優先権なので、お風呂直通の参加枠もあるのだが、ニーテストはみんながやっている作業を最初から参加して権利を得ることにした。特権で仕事をスキップせずに、こうやって一緒に仕事をすることで信頼を高めるのである。
『くのいち:それはこっちね、ついてきて』
『ニーテスト:わっせわっせ』
『クロエ:ニーテストさん、そっち持ってくださーい!』
『ニーテスト:うんせうんせ』
『ハナ:ニーテストさん、これお願いしまーす!』
『ニーテスト:はうーふぃー』
『胡桃沢:疲労回復はいらんかねー。疲労回復はいらんかねー』
『ニーテスト:頼むー』
ニーテスト、近衛隊が見た目よりも激務だったと知る! ホワイト任務ではなかったのか!?
やはりミニャンジャ村を子供たちと一緒に駆け回っている近衛隊は体力があり、みんなせっせと働いている。ニーテストは新人とまでは言わないが、第2陣くらいの体力だ。
『くのいち:お知らせお知らせ! 子供たちが来るよー!』
賢者たちが仕事をしていると、子供たちが突撃してくれることがあった。特に水を溜める場所は人気がある。どうやら今日も来たようだ。
「来たよー!」
「きちゃよー!」
ミニャが子供たちを引き連れてやってきた。
すると、ミニャが目敏くニーテストを発見。
「あーっ、ニーテストさんだ!」
『ニーテスト:よう、ミニャ。風呂掃除に来たのか?』
「うん!」
そう、目的は風呂掃除。
風呂掃除は水魔法が使えるため魔法の修行になるのである。子供はたくさんいるので、半数は男風呂を担当している。
「ミニャ、お風呂場でニーテストさんのこと初めて見る!」
『ニーテスト:そうだな。今日が初めてだ』
「おーっ! じゃあ、ニーテストさんにミニャの魔法見せてあげるー」
『ニーテスト:ほう、それじゃあ見せてもらおうかな』
賢者たちはミニャちゃんファースト。ミニャが誘ったら仕事中でもついていくのだ。
「よーし! お水さんよぉ……てい!」
ミニャや子供たちが並んで水生成の魔法を使い、浴槽の中を濡らす。
ミニャたちが作った水は綺麗な球体を維持しており、ちゃんと自分たちの思い通りの場所に落下したようだった。
『ニーテスト:ほう、上手くなったじゃないか』
「にゃふぅ! ミニャ、水魔法得意なんだもんね!」
「にゃんだもんね!」
得意になるミニャの隣で、ルミーも一緒になって胸を張った。
こういうのを見ると母性本能がビシバシ刺激されるニーテストである。
ミニャたちは浴槽の中に入り、デッキブラシでゴシゴシと床を洗い始めた。シャボンマッシュの泡が立ち、子供たちはキャッキャと楽しげだ。
そうして磨き上げると、お待ちかねの泡落とし。当然、水魔法が使用される。
こうしてミニャンジャ村のお風呂はいつもピカピカにされているのである。
そんなこんなでお風呂の準備が終わり、夕方。
予定通りにお風呂の準備をしていた賢者が優先的にクエストを受け、他にもお風呂直通クエストをゲットできた賢者もいる。
『ニーテスト:木製人形に宿るのも久しぶりだな』
『くのいち:近衛隊はよく宿ってるけどね』
お風呂クエストで宿るのは木製の人形もしくはフィギュアを使用する。お湯に浮くからである。
『ニーテスト:ん? 闇人も風呂クエストを受けたのか?』
『闇人:うむ。最近のマイブーム』
性別公開をした闇人も最近になってお風呂デビューした。
『くのいち:ニーテストは何か係する?』
『ニーテスト:え。うーん、普通に泳ぐ係かな』
『くのいち:オッケー、アヒルライダーね』
『ニーテスト:あれ、話聞いてる?』
『ラフィーネ:大丈夫ですわよ、ニーテストさん。木製だから落ちても溺れないですわ!』
『ニーテスト:うつぶせ状態で落ちたらどうすんだよ』
『闇人:足掻けばどうにかなる』
『ラフィーネ:うふふっ、お風呂で死に戻った賢者はまだいませんもの、安心なさって』
『ニーテスト:なんつー組織だ……』
というわけで、ニーテストはアヒルライダー係になった。
ミニャンジャ村の女風呂は、浴槽の一面に穴が開いている。それはスロープ状になっており、壁の中で斜め上にある部屋へと繋がっていた。
この構造はこの風呂が作られた時からそうなのだが、最近はバージョンアップされ、穴が5つに分かれていた。
ニーテストは賢者専用のスタッフ通路から壁の中へと入り、階段を上っていく。
スタッフルームにはホカホカと湯気を立てるお湯のタンクが用意されており、駐鳥場には色とりどりのアヒルさんが並んでいた。
すると、一緒に登ってきた賢者たちがアヒルさんに近づき、点検を始めた。
『くのいち:アヒルさん1号破損ナシ!』
『クロエ:アヒルさん2号も破損ありません!』
『ユナ:アヒルさん3号、問題ありません!』
『ラフィーネ:ブリュンヒルデ、破損ナシですわ!』
『闇人:翡翠の彗星号、問題ナシ』
『ニーテスト:お前らのアヒル、なんか名前が凄くない?』
『ラフィーネ:ほら、ニーテストさんも早くチェックをなさって!』
ニーテストは女なのでこのスタッフルームのことは知っているし、近衛隊がどんなことをしているのかもわかっていた。要は、アヒルさんに破損や木のバリなどはないかを調べているのだ。
ここで舐めたことをすれば近衛隊の統制に関わるので、ニーテストはしっかりとアヒルさんのチェックを行なう。
『くのいち:あなたは新人?』
『シロナ:はい! 生産属性の賢者です!』
『くのいち:そっか。いーい、アヒルライダーは遊びじゃないの。子供たちの柔肌がケガしないように、しっかりと点検しなくちゃダメ。一緒にやり方を学ぼうね。生産属性ならすぐに慣れるよ』
『シロナ:ご指導、よろしくお願いします!』
などと新人研修も行なわれている。
新人の女性賢者にとって、大きなお風呂で子供たちと遊ぶなんて夢みたいな任務である。だから、気合は十分。
『シロナ:アヒルさん25号、破損ありませんでした!』
新人はさっそく染まりつつある。
『ニーテスト:アヒル6号、問題ナシ!』
そして、最後にニーテストも点検を終え、問題がないことを告げた。
クエストリーダーであるくのいちは、うむと頷いた。
『くのいち:アヒルさん全機オールグリーン!』
『カレン:流し湯の温度も問題ありません!』
『中条さん:デコイボールも全て異常なしです!』
『ハナ:ネコ太さんから入電。ミニャちゃんたちが脱衣所に入りました!』
コメント共有モードになっているウインドウに、近衛隊のコメントがどんどん流れていく。音声はないのに妙な迫力がある現場に、ニーテストははえーとした。
スロープの向こう側で、子供たちのキャッキャとした声と、大人の女性のキャイキャイした声が聞こえてくる。
それは脱衣所から洗い場と段階を踏んで、どんどん近づいてきた。凄いのは、子供も大人も女子たちのテンションが下がらないこと。ずっとキャッキャしている。
そして、それは出撃の時が迫っているということを意味していた。
『くのいち:アヒルさんを各スロープ前にセット開始!』
『ラフィーネ:照明を落としてくださいですわー!』
ライトの魔法で照らされていたスタッフルームから明かりが消える。すると、スロープから零れてくる光だけを頼りにすることとなるが、賢者は暗視機能があるので問題なく活動できる。
いよいよ子供たちが浴槽に入ってきた。
体を洗い終えた子供たちの手には、お風呂遊び用の『水矢』が握られていた。水矢は筒式の水鉄砲のことだ。お尻の棒を押し込むと筒の先端から水が出る。
パトラシアでは鉄砲の存在が未確認のため、水矢という名称にした。日本だと古くは水弾と呼ばれているが、武器としてポピュラーな矢から名前を取って命名したのだ。
「チューッ! ピューッ!」
「うきゃー! コイツめー!」
「今日もいっぱいやっつけるぞーっ!」
穴越しに、水が跳ねる音と共に子供たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
『ネコ太:ミニャちゃん、今日はピンク色のアヒルさんが高得点だよ!』
「むむっ、わかった! みんなー、今日はピンク色のアヒルさんが5点だってー!」
「ピンク!」
「ピンクのアヒルさん!」
「よーし、ピンクやっつけるぞー!」
そんな声を聞いて、ニーテストは自分のアヒルさんを見た。ピンクは2機あったが、片方はニーテストのアヒルさんであった。
『ニーテスト:おい、くのいち。狙ってる?』
『くのいち:さあ、みんな準備はいいわね!? 1番手と2番手はアヒルさんに騎乗!』
ニーテストの疑惑の声をスルーして、ミッションは進む。
スロープは5個。そこに5機のアヒルさんがセッティングされ、その後ろにも次機が連なって準備される。先頭の前にはストッパーがあり、レバーを下げるとストッパーが床に沈む仕組みになっていた。
さらに、タンクからお湯が放出されて各スロープを濡らすことで、アヒルさんの滑りを良くする。
このお湯がスロープから流れてくるのはアヒルライダー出現の合図でもあり、子供たちに緊張を走らせた。
先ほどまでキャッキャとしていた子供たちの声がピタリと止んだ。
先陣としてスタンバイしている近衛賢者が、アヒルライダーの首の左右についているハンドルを握りながら前傾姿勢になる。ニーテストは、『本気すぎない?』とビビった。
『くのいち:アヒルライダー発進!』
『闇人:駆る!』
クエストリーダーの合図でストッパーが下ろされる。
支えを失ったアヒルさんが急斜面を滑り落ちた。スロープは最初の急勾配を経て、次第に緩やかな勾配になる造りだ。
「にゃー、きたー! 撃て撃てぇ!」
「やっつけたー!」
「ピューッ!」
「わーっ、強いのだ!」
「コイツめーっ!」
5つの穴から飛び出してきたアヒルライダーたちに子供たちは夢中で水矢を放った。それと一緒に大人たちの笑い声も混じって聞こえてくる。
熟練のアヒルライダーの操舵能力は凄まじい。
アヒルさんがバウンドしながら着水した瞬間に巧みな重心移動を加えることにより、ただのバウンドから跳躍に変えてみせる。
近衛賢者の中でも武術に長けたラフィーネや、女子の中で最強と言われる闇人の運動神経は特に凄い。跳躍しながらアヒルさんを回転させ、子供たちが放つ水矢を巧みに回避する。
大変に大人げないが、子供たちは強敵と思って夢中で狙う。
『中条さん:3番と4番ホール、デコイ投入します!』
この遊びにはデコイも存在する。色が塗られた木のボールで、アヒルさんもカラフルなので紛らわしい。
そんなデコイを混ぜつつ、第2陣、第3陣とアヒルライダーが戦場へ発進していく。
そして、いよいよニーテストの番になった。
ニーテストが入るスロープにデコイボールが投入され、それを投入した賢者がすぐにニーテストが搭乗するアヒルさんを押し始める。
『中条さん:ニーテストさん、ご武運を!』
『ニーテスト:ねえねえ、ガチすぎない!?』
『中条さん:姿勢を低くしてください!』
そう注意されて、ニーテストは慌てて前傾姿勢に。
アヒルさんの首の後ろから見る光景が、下方へ向けて傾いていく。まるでジェットコースターが急落下に入る時のようだ。
暗かったスタッフルームから光が差し込むスロープへ、いざダイブ!
『ニーテスト:きゃぁああああああ!』
その浮遊感と速度感に、ニーテストのフキダシに女子が出た。
シュバンッ!
ニーテストが操る、というか必死に身を預けるアヒルさんはスロープから飛び出し、浴槽の水面で小さくバウンドして見事に着水!
「にゃーっ、ピンクだー!」
「撃てぇ!」
「あーっ、お水が入ってない!」
そして始まる集中砲火。
アヒルライダー初陣のニーテスト、あえなく轟沈! もはや誰が点数を取ったのかなんてわからないハチの巣具合だ。
アヒルさんから落ちたニーテストは、水面にぷかーと浮いた。幸い、仰向けだ。
『ニーテスト:あー、良い湯だ……』
人形では足がつかないほどの水深なのを抜かせば、広々としてなんとも贅沢な風呂である。
「ニーテストさん発見!」
ニーテストはミニャに捕獲された。
気づけば、戦場は戦利品ゲットの時間になっていた。
ニーテストは漂っていた愛機であるピンクのアヒルさんに乗せられて、ミニャの前でプカプカした。
「ニーテストさんとお風呂入るの初めてだね!」
『ニーテスト:そうだな。これからはちょくちょく一緒に入れるだろう』
「ホント!?」
『ニーテスト:ああ』
「わーい! じゅぶぼこぉー!」
わーいなどと可愛らしく喜んだ次の瞬間、子供の無軌道さがニーテストに襲い掛かる! ニーテストが跨るアヒルさんの真下へ向けて、両手で大量の泡を作り出したのだ。
ニーテストは心がポカポカした2秒後に、慌ててアヒルさんの首にしがみつくことになった。
こうして、ニーテストのミニャンジャ村お風呂デビューは無事に過ぎていくのだった。
そして、日本へ帰還後。
巨大なお風呂に入ったので、「今日はあっちで入ったからいいわ」と風呂をキャンセルしようとしたら、ネコ太に叱られた。
■お知らせ■
いつも読んでくださりありがとうございます。
前回で前フリをしていたので察している方もいらっしゃるかと思いますが。
このたび、ミニャのオモチャ箱が書籍化されます!
これもひとえに皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます!
発売日は6月20日(土)になっております。
気になるレーベルやイラストレーターさん、そしてカバーイラスト、さらにプレゼントありの発売記念キャンペーンなど、いろいろと情報がありますので、ここからは活動報告にて発表させていただきます。ぜひ見に来てください。




