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ミニャのオモチャ箱 ~ネコミミ少女交流記~  作者: 生咲日月
第7章

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7-24 大規模オフ会2 八鳥村

本日もよろしくお願いします。


 マイクロバスは山道を進み、やがて八鳥村に到着した。


 車窓に流れる景色は先ほどまでの山間の風景から開けた土地へと変わり、そこには新しいアパートや小さな平屋が何軒も建っているのが見えた。


「山に囲まれてはいるけど、俺が想像していたよりも家が多いな」


 覇王鈴木が言う。


「どれも真新しいから、最近建ったばかりだろうな」


「いうて、ネコ忍が仲間になったのはゴールデンウィーク前だったよな? めっちゃ早くない?」


「うーん、考えられるのはニーテストが俺たちの想定を遥かに上回る金持ちの可能性だな。あとは、ネコ忍やゲンナイさんやヤクジンさんの力か。建設会社もいくつも入っているみたいだし」


「金の力か」


「この車だってそうだ。マイクロバスを少なくとも2台は購入している」


「え、レンタカーじゃないの?」


「いや、これは自家用のマイクロバスだな。ナンバープレートのひらがなの区分が『わ』か『れ』だとレンタカーになる」


「へえ、あのひらがなに意味があるとは知っていたけど、レンタカーだとそうなんだ」


 八鳥村は、通常ではあり得ないペースでアパートなどの建設が進んでいた。

 他にも、すでに家人が居なくなった民家を改装している様子もある。八鳥村は静かに終わろうとしていた村なので、そういった民家は結構あるのだ。


 現在はお盆中なので工事は中断しているが、まだまだ賑やかになりそうである。


「ニーテストか。どんなヤツかな。個人的には神経質っぽいクール眼鏡なんだが。服装は真っ白なワイシャツに黒ズボンの無駄のない感じね。真夏だし、俺たちの前に出てくる時はめっちゃ不機嫌な顔で登場」


「それじゃあ俺は、スウェットとかジャージにパーカーで生意気そうな顔のボサボサ髪に賭けよう」


「あー、紙一重系の天才パターンね。あり得るあり得る」


 やがて、マイクロバスは商店の駐車場に停められた。


 おそらく賢者用に作られたであろう広い駐車場には、すでに来場している賢者たちの車が多数停まっていた。

 真夏の暑い最中に外へと出て談笑する賢者たちは、次に誰が来るのか楽しみにしている様子。当然、マイクロバスなんて来ては、その熱量もアップアップ。


「しばらくしたら案内が来るから、少し駐車場で待っていてくれ」


「わかりました」


 ロッコウにそう伝えられた覇王鈴木たちは停車したバスから降り、うーん、と山道ドライブで固まった背筋を伸ばす。その隣では闇人がレース付きの黒い日傘を取り出し、優雅に差した。


 バスはすぐに折り返し、次の集合時間の組を迎えに行った。


 駐車場に置いていかれた覇王鈴木たちの下へ、すでに来ていた賢者たちがワラワラとやってきた。やはりすぐに動くのは陽キャ寄りの賢者で、陰キャ寄りの賢者は遠くから『わぁ』といった楽しげな顔。こういう時に存在をアピールできないのが陰キャなのだ。


「よう、覇王鈴木! そっちは工作王か?」


 覇王鈴木に声を掛けたのは、闇の福音一行。車でやってきた勢だ。


「そういうお前らは動画のまんまだな!?」


 黒ずくめの男、人形を抱いた銀髪執事服、ネコミミデブ。そして、そんな3人と一緒にいるのは、覇王鈴木をキラキラした目で見る子犬系少年と、優しそうなお姉さん。

 闇の福音たちチームイロモノだ。ちなみに、髑髏丸の車は4人乗りなので、ロリエールが車を出している。


「ほう、この前持ち帰った剣鹿の革はそうなったか」


「いいじゃんいいじゃん!」


「スチームパンクかぁ、いいなそういうの」


「だろ!?」


「そっちはルナリーちゃんだな! よろしく!」


「みなさん、よろしくお願いします!」


 などと、工作王とルナリーは髑髏丸や他の生産組とワイワイし始める。すぐに自分の作った物の品評会を始めるあたり、似た者同士である。可愛い女子高生に褒められると、おじさんお兄さんはみんなテレテレである。


 一方、覇王鈴木の方でも交流が始まった。


「覇王鈴木さん、初めまして!」


「おー、平和バトか!」


「はい!」


 明らかに若い平和バト君、中学生。ハーフパンツにTシャツという少年っぽさに、賢者のお姉さんたちの口角も上がるというもの。


「今日は大分クレイジーな集まりだけど、大丈夫だったのか?」


「はい、ちゃんとお母さんに許可を貰ってきました!」


「そうか。じゃあ楽しもうな!」


「はい!」


 ニコパと笑う平和バトを見て、コイツ可愛いな、と覇王鈴木は思った。


「そっちはヴィヴィさんだな。よろしく」


「は、はい、よろしくお願いします」


 ロリエールたちに救われたヴィヴィだが、その時のボロボロな様子はもはや見る影もなく、少し気の弱そうな印象の綺麗な女性に変わっていた。ただ、ロリエールたちと修行をしているので、そこら辺に生息している不健康なチンピラなら秒殺できるほどの力を得てしまったお姉さんである。


「おっとそうだ。紹介しよう。こっちは俺の妹のホクト——」


 と覇王鈴木は一緒に来た女性陣とタカシを紹介した。

 女子の紹介に闇の福音の気配がスゥッと消え、代わりに平和バトが愛嬌を振りまく。一方で、ホクトたちは心霊動画を投稿しているチームイロモノに興味津々だ。


 周りでもマイクロバス勢を迎えて賢者たちの交流が始まり、ウインドウの中で流れる異世界の風景や、スレッドに流れる賢者たちのガヤも手伝って、会話が苦手な賢者でも難易度イージーモードのお喋り会。


「それで気になってたんだけど、この商店は?」


「そりゃお前、賢者専用のコンビニよ!」


 商店を眺める覇王鈴木に、闇の福音が自慢げに言った。闇の福音は男子となら楽しくお喋りできるのだ。


「ネコミミストア……」


 その商店の名前はネコミミストア。商店の大きさはコンビニの1.5倍ほどで、出来たばかりとわかる新しさ。駐車場もちょっとしたスーパー並に広い。


「無人店舗らしいですぞ」


 ロリエールが言った。


「無人なのか。思い切るね」


 覇王鈴木はネコミミをつけた男と当たり前に会話する現状に、凄い人生になったもんだなと思いつつ、普通に話を続けた。


「さっきまでアヤメさんがいましてな、教えてくれました」


「アヤメさんというと、エンラさんの奥さんか」


「ええ。セルフレジで商品を買うと業者にデータが送られて、毎週火曜日に業者が品薄になっている品物の補充にやってくるみたいですな」


「へえ、それならシティボーイな賢者もニッコリだな」


「そうですな」


「もう買い物はできるの?」


「できますが、基本的に電子決済のみで、現金は緊急時以外には一切扱われないみたいです。そこに取り扱っている決済方法があるから確認すると良いと思いますぞ」


「まあ、賢者がパクることはないだろうけど、山を越えて野盗が来ても困るしな。どれ、ちょっとコーヒーでも買ってくるかな」


 コンビニで買い物をしつつ、他の賢者たちと交流する。女子コミュニティ、男子コミュニティ、男女混合の生産コミュニティと分かれている。

 そうしていると、賢者たちが車やマイクロバスに乗ってどんどんやってきた。その都度、覇王鈴木たちは大歓迎。


 そんな中には、バイクに乗った一団が。


「おいおい、族が来たぞ!」


「こえーっ!」


 もちろん、暴走族がこんな場所にやってくるはずもなく、賢者たちである。それぞれが各地で集合を重ねて、現在は6人組になっていた。


「へえ、良いバイクに乗ってるヤツもいるな。ロードエンペラーだぞ、あれ」


「あっちは飛燕か?」


「ニートじゃないな。多少なりとも働いていた勢かな?」


 などと生産組がバイク名を言ってワクテカし始める。覇王鈴木たちはバイクには詳しくないので、『わぁ!』とやってくるバイカーたちを眺めているだけ。


 やがてバイクは駐車場に入ってきて、一区画に停められた。

 生産組が目をキラキラさせてそちらへ向かい、それを追う形で覇王鈴木たちも向かう。


 一番近くにいるのは、ジーパンに赤いライダーブーツ、革のジャケットという出で立ちの女性ライダー。ネイキッドタイプのバイクの後部座席には荷物が取り付けられており、とってもカッコイイ。


「だれだれ!?」


「ふじこちゃんみたい!」


 カッコイイ女性に憧れのあるホクトやユナが、ワクテカしながら女性賢者がフルフェイスを取るのを待つ。一方の男性賢者たちは、ヒップラインがくっきり表れている細身のジーパンから目を逸らすのに必死。


 女性ライダーはフルフェイスを取って、ジャケットの襟首からファサッと長い髪を出す。


「「「ふぉおおおお!」」」


 マイペースな闇人もこの演出には女子高生たちと一緒に大興奮。

 フルフェイスの中からは、キリリとした女性が出てきた。


「みなさん、初めまして……と言いましょうか。乙女騎士です」


 近衛隊長の1人である乙女騎士だった。賢者ナンバーは7。サバイバーの次に登録した賢者なので、古参中の古参である。そんな乙女騎士は元ニートではなく、牛丼屋で働いていた元フリーターだ。


「乙女騎士さん、バイク乗りだったんですか!?」


「滅茶苦茶カッコいいです!」


「ふふっ、ありがとうございます」


 近衛賢者であるホクトたちが尊敬の眼差しを向ける。

 乙女騎士は優しげに笑い、「ちょっと待ってくださいね」と風除けのジャケットを脱ぎ始めた。


「「「っ!?」」」


 ジャケットで隠れていたのはハイウエストのジーンズとタンクトップ。そんな恰好に赤いブーツを履いているのでとても足が長く見えるが、問題なのはそのタンクトップが守っている部分がかなりでかいこと。間近で見た女子高生は息を呑み、少し離れて見ている男性賢者たちは真っ赤になった。

 脱いだジャケットを肩にかけたことで多少はマシになるものの、それでも破壊力はすさまじい。


 そんな乙女騎士は、ライダーの中の一人をチラチラと見ては、なぜか顔をほんのりと赤らめていた。スキニーパンツの形の良い足を内側にして、ちょっともじもじしている。


「なあなあ。女子のレベルめっちゃ高くない? 闇人といい、乙女騎士といい、アイドルを超えてんだろ」


 タカシが覇王鈴木にこそこそと言った。


「そういうお前も結構カッコいいと思うけど」


「え、そう? ……え、そーお? ……覇王鈴木はホントにそう思う?」


「なんだよ、そのリアクションは」


 タカシがもじもじしながら前髪を弄り始めた。覇王鈴木はその様子から色々と察して、ちょっと優しくしておいた。賢者のメンタルケアは最強女神教団として重要なことなのだ。


「なあタカシ、もし何かしらコンプレックスがあるなら、そりゃお前の勘違いだ。昔のお前がどうだったかは知らないが、ミニャちゃんの下で修業した今のお前は自信を持っていい」


「……っ!」


 タカシは衝撃を受けたような顔をしたかと思うと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 わぁ微妙な空気になっちゃった! と覇王鈴木が慄いていると、その空気を壊す一陣の風が吹いた。


「ちょっとちょっと、乙女騎士ばっかりじゃなくて俺もいるぜ」


 バイカーの1人が賢者たちに声を掛けた。

 それは、前髪や短いポニーテールに青いカラーのメッシュを入れた青年だった。格好はサイバーチックなライダージャケットとパンツだが、現在は上着を脱いでTシャツ姿。


「うわ、チャラ男だ!」


「賢者の中にチャラ男がいる!」


「チャラ男じゃないし! 髑髏丸たちが濃すぎるから俺も今日のために頑張ったんだって!」


「それは涙ぐましいな。それで、すまんけど、誰だ?」


「ブレイドだよ!」


「お前、ブレイドかよ!?」


 始まりの賢者にして、覇王鈴木が率いる2番隊副長のブレイド。属性は風。そんな関係性なので、覇王鈴木とは大の仲良しである。


「えー、ブレイドが来たの!?」


「ブレイド、バイクに乗ってるの!? 見せて見せて!」


 と男性賢者からの人気も高い。

 ワラワラと集まってくる男性賢者たちだったが、ブレイドはなにやら意を決した様子で彼らに言った。


「は、覇王鈴木、それにみんなも、ちょっと聞いてくれ! 突然だが報告したい!」


 その声は大きく、賢者たちの注目を集めた。

 たくさんの瞳に少したじろいだブレイドだったが、つかつかと乙女騎士の隣に行くと顔を真っ赤にして言った。


「乙女騎士とは恋人同士です!」


「「「えーっ!?」」」


 いきなりのカミングアウトに賢者たちは驚愕した。

 乙女騎士も顔を真っ赤にしている。


「ど、どういうこと!? 前から会ってたの!?」


「い、いや、今朝がた待ち合わせ場所で初めて会ってね。一目惚れして、これはもう一生物のアレだと思って、その場で告白した。実際にオーケーを貰ったのはちょっと前にした休憩の時だけど」


「いやいやいや、この上なくチャラ男じゃん!?」


「手の早さが音速だよ! 俺じゃなくても見逃しちゃうよ!」


 衝撃的な話に、覇王鈴木と工作王が思わずツッコんだ。


「えーい、うるさいうるさいうるさい! こっちはもう後悔しない人生を送るって決めてんだよ! 一目見てずっと一緒にいたいと思う女の子が現れたら、恥なんてかなぐり捨てて秒で告白するわ!」


 そう叫んだブレイドに、女性賢者たちはキャーと騒ぎ、男性賢者の多くは揃って真っ赤な顔を隠した。


「ふ、ふぅー」


 覇王鈴木は友人の恥ずかしいセリフに赤面しながら息を吐いた。他の賢者たちも赤面しつつ、遠い目で青々とした山を見つめる。


「それを言われると弱いなぁ」


「俺たちの半生は後悔の絵日記だからなぁ」


 思い出すのは歴代の好きだった女の子たち。一人残らず他の男に取られた。あの時行動していればと思うことなど数えだしたらキリがない。

 それを踏まえて考えると、積極的に行動したブレイドは正しいかもしれないと賢者たちは思った。


「まあ、ひとまずはおめでとうと言っておこう。お祝いは帰れコールで良いか?」


「やめて!? 来たばっかりだよ!」


 追放ならず。


「はー、そっかー」


「なんかバイクを見せてもらうどころじゃねえな。バイクとかもうどうでもいいわ」


「いや、見てよ。いいよ、紹介するよ」


 男子たちはなんだか逆に冷静になり、女子たちは乙女騎士を中心にキャッキャが継続。


 そうしていると、1人の人物が徒歩で駐車場にやってきた。


「サバイバーか!?」


 それが誰だか真っ先に気づいたのは、工作班の賢者たち。

 初めて会うのに彼らが一番に気づいた理由は、結婚式の際にサバイバーの人形を作ったからだ。その時の人形とそっくりなのである。


「うわっ、マジでイケメン……」


「キラッキラじゃん」


 女子たちがざわついた。

 でも、新婚。


「やあ、みんな、よく来たね!」


 サバイバーが爽やかに言った。


「サバイバー、会いたかったぜ!」


 覇王鈴木がテンション高く歓迎すると、他の賢者たちも口々にサバイバーの名前を呼ぶ。1番隊隊長であるサバイバーの慕われ具合は覇王鈴木に匹敵するのだ。


「ちょっと聞いてよ、サバイバー! ブレイドがブレイドしたんだよ!」


「本当にとんでもないブレイドしたんだから!」


 賢者たちが先ほどの話をサバイバーに報告しようとした。


「はははっ、乙女騎士の件だろう? 知ってるよ、君ら、生配信してるし」


「「「あっ!」」」


 本日の集まりは、生配信が可という決まりだった。顔バレが嫌な場合は仮面持参で参加もあり。すでに生配信を始めている賢者もおり、先ほどの件は多くの賢者に知れ渡っていた。


【114、名無し:乙女騎士を見てドキッとしたのに、ブレイドの報告に秒で角折れちゃった(´・ω・`)】


【115、名無し:脳破壊RTAを喰らった気分になった】


【116、ナオマサ:わかる。薄い本だってもうちょっと丁寧に脳破壊までのプロセスを踏むよ?】


【117、名無し:馴染みのプロセスやな】


【118、名無し:脳破壊のジェットコースターや!】


【119、名無し:おい、ナオマサ氏、名前が出てるぞ】


【120、ナオマサ:しまった、油断した!】


【121、名無し:悲報、日本が誇る天才プログラマー、ブレイドの脳破壊プロセスに物申してしまう】


【122、名無し:これは金を持ってるだけの俺たち】


【123、名無し:まあ、とりあえず、ブレイドは処刑だな】


【124、リッド:ブレイドを許すなっ、うぉおおお!】


【125、名無し:ブレイドのブレイドをへし折るイベントを企画しようぜ】


【126、ワンワン:ブレイドのブレイドにブレイドを入れるのは俺に任せてくれ】


【127、名無し:いや、俺がブレイドする】


【128、名無し:待て。俺のブレイドの方が絶対にブレイドできる】


 案の定、スレッドは荒れていた。


 サバイバーはワイワイする賢者たちを手で制して、言った。


「話は尽きないと思うが、とりあえず、みんな聞いてくれ。ひとまずは場所を移動しよう。ここでオフ会をするわけじゃないからね」


 今日はこれから昼飯としてバーベキュー大会。

 それといくつかの重要なイベントがある。


 サバイバーの案内で、賢者たちは移動を開始した。

 まだまだ賢者は来るが、ひとまず今いるだけの移動という形だ。


「サバイバーさん、忍者ってどんなことできるんですか?」


 道すがら、平和バトがキラキラした瞳でサバイバーに言った。それには覇王鈴木たちも興味津々。


「うーん、そうだなぁ」


 そう言いながら顎を摩って歩くサバイバー。

 すると、前方の道路に三毛猫がちょこちょこと出てきた。


 その猫が立ち止まり、一行に向けて口を開く。


『皆様、遠路はるばる八鳥村にようこそおいでくださいました。どうぞ楽しんでいってくださいにゃん』


「「「しゃ、喋ったぁ!?」」」


 賢者たちが驚愕し、その声にネコは吃驚してシャカシャカと逃げていった。


「ニャロクーンさんみたいな存在が地球にも!?」


「なにいまの!?」


「はははっ、まあ今のも忍術だね」


「え、いまのもしかしてお前の声なの!? 萌え系美少女キャラの声だったよ!?」


「しかも、ちゃんとネコから聞こえたし!」


「声色を使い分けるのも忍術さ」


「限度がない!?」


「サバイバーやっばぁ!」


「もうそれだけで食っていけんだろ!?」


 そんなふうに楽しく歩くこと5分ほどで川の気配。

 その近くの民家を指さして、サバイバーが言う。


「そっちの民家は男子用の荷物置き場になっている。こっちは女子用だ。それぞれ更衣室としても使っていいからね。それじゃあ、荷物を置いたらそこの川に集合ということで」


 賢者たちは「はーい!」と男女で別れて、ひとまず民家へ。女子用の民家にはネコ忍のお婆ちゃんがにこやかに立っていた。案内役だ。


「サバイバー、ここは誰の家だ?」


 男性用の案内役であるサバイバーに、タカシが尋ねた。


「ここは家人を失った家でね、個別に訪問してきた賢者たちの宿泊施設になる予定だ。いま女子が使っている家も同じだね」


「要するに修行用ってことか」


「まあ、訪問はそれだけに限らないけど、そんな感じの用途だね」


 八鳥村には、賢者が訪れる大きな意味がある。


 人形の体では行なえないネコ忍の修行をつけてもらうことだ。

 それは呼吸法の伝授。現在、賢者たちが使っている呼吸法はまだ完成していないのだ。


 そして、今回のオフ会で行なわれる大きなイベントのひとつは、その修行であった。だから、リーダー格の賢者たちが集結しているのだ。ただ単に、みんなに会いたいだけではないのである。


「他にもシェアハウスになる予定の家とかもある。まあ、今回のオフ会でいずれかの家に宿泊するはずだから、どんな塩梅か見ておくといいよ」


 さらに、今回のオフ会は八鳥村の見学会でもある。

 写真だけでアパートに住むと決めている賢者もおり、昨日までに引っ越しが済んでいた。ヨシュアなどがそうだ。現在の彼らはリーダー格が少なくなっているミニャンジャ村に行っているが、あとで合流する予定だった。


「さてと、先に外へ出てるぞ」


「オッケー。着替えたらすぐに行く」


 荷物を置くだけの覇王鈴木は、スペースを空けるために先に外へ。バイカー勢はライダージャケットなどからラフな格好に着替えた。


 覇王鈴木は1人で先に庭へ出る。

 近くに川があるからか、この家は庭も含めて道路から2mほど高く建っていた。


「こういう場所での暮らしも良さそうだなぁ」


 賢者たちとみんなで暮らすのも面白そうだと覇王鈴木は思う。


 この地が不便といった考えはない。日用雑貨や食料を買うならネコミミストアや通販でいいし、高い買い物をするなら都会に足を運ぶくらいはする。急病の際にはネコ太たち回復属性がいるので、最も恐れるべき急死の確率が非常に低い。職場と遊び場は当然ミニャンジャ村。不便なことはほとんどないだろう。そもそもニートとして極々狭い範囲で暮らしていたのに、今さら住む場所で不便もなにもない。


 だが、自分が戦天神町にいる意味もあるのではないかと覇王鈴木は思う。

 家には妹や両親、近くにはルナリーやユナ、アオ、闇人。住所こそ明かしていないが、他にも近場に賢者はいるだろう。

 自分が彼らを守るなんて驕ったことは考えないが、困った時に連携くらいは取れるのではないかと思うのだ。


「まあ、いまはオフ会か」


 オフ会の本番はまだ始まってすらいない。

 これから八鳥村を知り、八鳥村からニートだった賢者たちの世界は広がるのである。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想大変励みになっております。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ブレイドのブレイドをブレイドしてブレイドからブレイドする!!!処刑バイカー ブレイドの脳破壊とゲシュタルト崩壊のコンボ! 風のバイカーじゃなくて、賢者ライダーブレイド!!
オフ会、通じて何組かカップルできるのかなあ?
サイドカー、乗せる相手が居ない賢者がほとんどなので、
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