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少女達が銃で戦う世界で男の娘は剣を振るう  作者: 鳥抹茶
第2章 Nightmare -脳喰-
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第9話 Disquiet -疑惑-

 何故だ。

 何故姉ちゃんが死んでいる。

 石化は解かれてる。

 他の人は生きてる。

 どうして姉ちゃんだけ。

 どうして。

 どうして?

 …どうして?



「そ…そんな…嘘だろ?」


 音色が死んだ、という舞の言葉が信じられず、聖刃は嘘であることを願った。

 仮に嘘だとしたら聖刃は舞に対し怒るだろうが。

 しかし舞の表情は、嘘をついているような顔ではなく、舞自身も信じられない、と言った顔だった。


「ほ…本当だよ…こんな状況で、私が嘘言う訳ないでしょ…!?」


 そりゃそうだ、と心の中で思う聖刃であったが、少しだけ…嘘だと言って欲しかったとも思った。


「でも何で姉ちゃん死んでんだよ!?だって、他の人は生きてたじゃねぇかよ!」

「私にわかる訳ないでしょう!?」


 聖刃の問いに、舞は大声で叫ぶように返した。舞も、この状況を受け入れたくはないのだ。


「…なぁ聖刃、音色先輩のジューメツ…後何発残ってる?」


 突如愛が聖刃に問いた。

 聖刃は言われるがまま音色のジューメツの弾数を確認した。液晶には、0と表示されていた。

 0という数字を見た聖刃は、愛がした質問の意味を察した。


「…まさか、弾を使い切ったから姉ちゃんが死んだってのかよ!?」

「あくまでかもしれないってだけだ…!」

「いいや、愛の言う通りだ」

「…リーダー…!」

 

 音色の石像の場所を聞かれ、何かあったのかと興味本位で来たリーダーがそこにはいた。

 愛の言う通り…すなわち、聖刃が弾を使い切った事によって、音色が死んだという事だ。

 聖刃は、自身が音色を…姉ちゃんを殺したという真実と、ジューメツのその設定について言わなかったリーダー、飛香への怒りが混じり合い、よくわからない感情になり、気が付くと聖刃はリーダーの胸ぐらを掴んでいた。


「何でそんな重要な事を言わなかった!!」

「いや、まさか使い切るだなんて思わないだろう。現に、弾を使い切ったのは君が初めてだからな。言ってくれなきゃわからないだなんて甘い言い訳だ。」


 聖刃はリーダーの胸ぐらを掴み、睨みながら話を聞き続ける。

 息が荒くなる。

 自身が音色を殺したという事実に。


「ジューメツ持ってれば不老不死になれるんじゃなかったのかよ!?」


 そんな息が荒くなりながらもなお睨みつける聖刃を前にリーダーは話を続ける。


「あぁそうだ。だが、それはあくまで弾を使い切らなければの話だ。そもそもジューメツの弾数が人によって違い、リロード出来ないのは何故だと思う?」

「…あぁ…!?」

「それは、弾の数は、持ち主の寿命と比例しているからだ。例えば寿命が残り85年の少女がジューメツを手にすると、85発使える。つまり、若ければ若いほど使える弾数は増える…そういう事だ。つまり、君は音色の寿命を自ら消費してゴルゴーンを倒したという訳だ。」


 そういうとリーダーは聖刃を突き放した。

 聖刃はそのまま力なく飛ばされ、地面に倒れた。

 そして、そのままリーダーはその場から立ち去った。


「…二人は使い切ったら死ぬって知ってたのか?」

「…いや、元々少ない弾数で、リロードできないのは知ってたから、使い切るな、とは言われてたけど…」

「あぁ…使い切ったら死ぬってのはオレ達も知らなかったぞ…」


 弱い声で聖刃は舞と愛に質問した。返答は、二人とも知らなかった、と。

 しかし、この二人が知らないという事は、他の隊員達も恐らく知らないだろう。

 そんな二人も、ジューメツの真実を知り、絶望していた。

 自分は今まで寿命を消費して敵を倒していたのか、と。


「…とりあえず…今日はもうマイルームに戻って休みましょう…?」


 舞の提案に、その場の者は無言で賛成した。

 そして、お互い何も言わずにその場を後にしてマイルームへと戻った。



 マイルームへと戻る道中、ふととある場面を見かけた。

 

「…ゴルゴーン!?」


 そこには、ゴルゴーンの死体が運ばれてきていた。

 何故ゴルゴーンの死体をここへ運んできているのか、という疑問が生まれたが、その疑問はすぐに解消された。


「あなたがゴルゴーンを倒した聖刃さんですか?」

「え?あぁ…そうだけど…君は?」


 声を掛けられ、声の方へ振り返るとそこには、研究服を着ている少女がそこにはいた。


「あぁ、私ですか?私は立木タツキ未来ミライです。にしても凄いですよね、あのメドゥーサもといゴルゴーンを倒してしまうだなんて。」


 未来は目を輝かせながら聖刃を見た。

 しかし、彼女は知らない。

 ゴルゴーンを倒した裏で、聖刃が自身の姉を殺していたという事を。


「…で、君はここで何を?」

「あぁ、私ですか?私はこれからゴルゴーンの死体を解剖して、ゴルゴーンについて研究するんです。」

「解剖…それで武装強化とかするのか?」

「はい、まぁそんな感じですかね。」


 未来の返答はどこか曖昧だった。

 しかし聖刃は疲れが酷く、心も衰弱しているので、解剖頑張ってね、と言い残し、マイルームへと戻っていった。




「まぁ、聖刃さん疲れてますもんね。さぁ!私も頑張るぞぉ!!」


 未来は気合を入れ、解剖室へと運ばれたゴルゴーンを追うように解剖室へと入っていった。


「いやー大きいなぁこれ…ま、解剖しがいがあるってもんでしょ!じゃあまずは頭かな〜。頭は私がやるから他の人は別のところを解剖してね〜」


 そんな軽いノリで周りの研究員に解剖を命じる。

 未来はまず、聖刃が空けたであろう風穴のある頭から解剖を始める事に。

 石化の魔眼を切除出来れば、石化能力を今後戦力として利用する事が出来るかもしれない。

 目は潰れてしまっているので、魔眼が発動する事はない。安心して目を切除する。

 続いては牙。

 最後に脳を解剖すべく、頭にメスを入れ、脳を晒け出す。


「うぇえ…何この脳…気持ち悪いぃ〜」


 例えるなら、気持ちの悪い虫が脳に擬態している、そんな見た目をしている脳だった。

 そんな脳に嫌悪していると、突然その脳が動き出し、未来に飛び掛かった。


「うぇ!?何何何何!?!?」


 突然脳が虫のような見た目へと姿を変え、未来に飛びついた。

 未来はこの気持ちの悪い脳を離すために体を振ったりするが全然取れる気がしない。助けを呼ぼうにも、周りの研究者は気付かない。

 すると、その虫は未来の口の中へと入ってきた。


「んんっ!?んんっ!!んんんんん!!!!!」


 声を出して抵抗するが、虫は未来の口の中へとずいずいと入ってくる。

 1分もしない内に虫は完全に未来の中へと入り込んだ。

 虫が中に入り込むと突然頭が痛んだ。まるで、脳を齧られているような感覚だ。

 しかしその痛みも一瞬で、未来は意識を失った。

 研究員が違反に気付き、倒れた未来の元へと駆け寄る。


「未来さん?未来さん!?大丈夫ですかー!?」


 そういうと、未来は目を覚ました。未来はゆっくりと立ち上がると、首をゴキゴキと鳴らした。

 そして辺りを見渡す。

 辺りを見渡すその様子はまるで記憶喪失になってしまったキャラのような雰囲気であった。


「…大丈夫ですか、未来さん?」

「んっ…?あぁ…大丈夫…。」

「そ、そうですかね?何か様子が変ですよ?」

「大丈夫だってばぁ…だってぇ…君達も我…いや、私と一緒になるんだからさぁ…」


 そういうと未来は突然、その研究員にキスをし、研究員の口内に舌を入れた。

 突然のキスに困惑する研究員だったが、次の瞬間、心臓部が苦しんだ。


「んんっ!?ぷはぁっ…うっ…がァァァァァァア!!!」


 研究員が苦しんだ。

 その声に周りの研究員が集まってきた。

 そしてその研究員は皮膚が腐食し、まるでゾンビのような見た目と化した。

 そして周りの研究員に噛み付き、次々と研究員もゾンビにしていく。

 助けを求めて電話を取った研究員も、喋らせまいと即座に噛みつかれ、ゾンビと化した。


「んっ…んんっ…あぁ…この身体と完全に同調した…さぁ…反撃開始だ…響飛香ァ…」


 そう言うと未来は不敵に笑った。




 マイルームへ戻って、ベッドに入っていた聖刃だったが、疲れているはずなのに何故か眠れず、ただ時間だけが過ぎていた。

 しかし、眠れないのにも心当たりがあり過ぎる。

 何度も何度もくどいかもしれないが…。

 聖刃は、音色の仇を討つためにメドゥーサもといゴルゴーンと戦った。

 仲間が石化され、作戦とはいえ女神姉妹も死に全滅寸前と化した。メドゥーサはゴルゴーンへと進化を遂げ、メンジも大量召喚され絶望的状況でも諦めずに立ち上がった。

 その結果、ゴルゴーンを倒せたものの、皮肉にも同時に音色を殺していた。

 

「…マジで皮肉だな…」


 自分でそう言ってしまう程の皮肉だった。

 そんな独り言を言う自分が嫌になった。

 

 突然扉を勢いよく叩かれた。

 こんな真夜中に誰だよ、とイラつきを覚えながらもベッドから出て、扉を開ける。

 扉を開けるとそこには未来がいた。


「おぉ…君は確か…未来ちゃん…だっけ」

「はい、そうです。未来です」

「どうしたこんな真夜中に…うぇっ!?」


 突然未来に押し倒された。

 そして困惑する聖刃に未来は四つん這いになった。


「えっ…何?」

「はぁ…どうやら私って、試したい事があるとすぐに試したくなってしまうらしいんです…」

「う、うん…そうなんだ…」

「だから…聖刃さんの身体で試させてください…っ!」


 そう言うと未来は聖刃との距離をどんどん近付いていく。下手をすればキスをしてしまうのではないかという距離まで近づいてくる。

 流石に女にあまり興味がない聖刃もドキドキしてしまう。

 そんな時だった。


「な、なななな…ナニしてるんですかァァァァァァア!!!」


 その声と共に、未来は何者かに吹っ飛ばされた。

 未来を吹っ飛ばしたのは、愛だった。しかし声の主は舞で、どうやら二人で聖刃のマイルームに来ようとしていたのだろうか。


「舞!?愛!?どーしてこんな時間に!?」

「…いや、こんな事してる場合じゃねぇ、聖刃、大変だ!」


 こんな真夜中にアポ無しで聖刃のマイルームに二人で来ると言う事は、相当の一大事なのだろうか。


「何があったんだ?」

「施設内で敵襲だ!」

「敵襲ぅ!?メンジか!?」

「いやメンジじゃない!!隊員達がゾンビみたいになって暴れてるんだ!」

「…は!?…よくわかんねぇけど急ぐぞ!」

「あぁ!」


 聖刃達は、ゾンビのようになっている隊員達の元へと急行していった。

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