第10話 Second Coming -呪命-
こんな真夜中にアポ無しで聖刃のマイルームに舞と愛が焦った表情でやって来た。
何があったんだと聖刃は問いかけると、愛は施設内でGGG.sの少女達がゾンビのようになり、暴れているのだと答えた。
全くもって意味がわからない聖刃は、とりあえず現場に駆けつけようと、愛によって吹っ飛ばされた未来を置き去りにして現場へと駆けつける。
その様子を、その場に取り残された未来は無意識に笑った。
「そのゾンビとやらは何処にいるんだ!?」
「大広間だ!」
どうやら大広間にゾンビがいるらしく、聖刃達は大広間へと急ぐ。
大広間へと駆けつけると、聖刃の目に広がったのは、ゾンビと化した少女が仲間であるはずの隊員達に襲いかかり、隊員達はジューメツを撃とうとせず逃げ隠れしている、といった混沌とした状況だった。
別に疑っていた訳ではないが、そこで愛の言っていた事が事実だと理解した。
「一難去ってまた一難…とはまさにこういう事かよ…!」
今日の数時間前、聖刃達はやっとの思いでゴルゴーンを倒した。
ようやく平和が訪れると思った矢先にこんな事になるとは誰が予想したか。
文字通り一難去ってまた一難、だ。
「そういえば、何でみんなジューメツを撃たないんだ?…まぁ、仲間だから撃てないってのもわかるけど…」
「いいや、ゾンビみたいになってる人も、ジューメツを持ってて死なないから、撃っても意味が無いんです…」
「マジかよ…じゃあどうやって倒せっていうんだよ…あ、研究者達にワクチンを作ってもらえれば行けるんじゃないか!?」
「それが…ゾンビになってしまっている人は、みんな研究者の皆さんらしくて…全滅してるみたいです…」
撃っても、相手は死なないから意味は無く、ワクチンをと思ってもそれを作り出す研究者達がゾンビと化している…
明らかに詰んでいるが、聖刃は唯一ゾンビになっていない研究者を思い出した。
「…あ、そういえば未来ちゃんは?!」
「未来って…あぁ!さっきの人!?」
「あぁ…オレが吹っ飛ばした奴か!」
「でもあの人解剖担当でしょ?ワクチンなんて作れるのかな…」
そう、彼女の事はよく知らないが、解剖をする人ということだけは聖刃も知っている。
作れても作れなくても今この施設にゾンビになっていない研究者は未来だけなので彼女に頼むしかない。
「…作れますよ、私。」
気がつくと未来は聖刃の後ろにいた。どうやら後ろから付いて来ていたようだった。
本人から作れると言って来たのなら、頼むしかない。
「君ワクチン作れるんなら今すぐ作ってくれないか!?今のこの状況を打破する為にはそれしかないんだ!」
「良いですよ?聖刃さんの為なら…ね?」
そう言うと、未来は何処かへ歩いて行ってしまった。
恐らく研究室へだろうが、彼女がワクチンを作っている間、聖刃達が時間を稼がなくてはいけない。
「うぅ…未来さんってあんなキャラだったんだ…」
「あぁ…オレちょっとニガテかも」
「そんな事言ってる場合かよ!?とにかく何とか時間を稼ぐぞ!」
そう言うと聖刃達はゾンビ達へと向かっていった。同時期にゾンビ達も聖刃達の存在に気付き、こちらへと向かってきた。
…とはいえ、聖刃達はジューメツによる攻撃が出来ない。
なので丸腰で挑む事になる。
平気でゾンビに対し殴ったり蹴ったりする聖刃と愛に、舞は声をあげて聖刃達に言った。
「何で普通に素手で攻撃出来るの二人とも!?触れたらどーなっちゃうとか考えないの!?」
「仮に何かあっても時すでに遅しだろーが!」
「あぁ…ここまでやったら当たって砕けろだ!」
「いや砕けちゃダメだからね!?」
…同時刻、研究室にて。
「聖〜刃さ〜んのた〜め〜に〜♪」
未来は外の状況を知っているにも関わらず、呑気に鼻歌を歌いながらワクチンを作っている。
そんな時、突如研究室の扉が開いた。
「やぁ、久しぶりだな…ブレート」
そう言いながらジューメツを未来に向けたのは、リーダー…響飛香だった。
未来はワクチンを作りながらゆっくり飛香の方に顔を向ける。
「あぁ…久しぶりですね…響飛香。んん…ブレートってのは俺の名前だっけか?」
突如、未来の口調が変わり、まるで別人…あの虫のような気味の悪い生き物の人格へと入れ替わる。
「あぁそうだ。色んなヤツに寄生し過ぎて自分の名前すらも忘れたか?」
「あぁ…数年間ずっと貴様に復讐する為に数多の宇宙を巡って色んなヤツの身体に寄生して来た…道中、色んな名前で呼ばれたよ…例えば…メドゥーサとか、ゴルゴーンとか…今は未来とかなぁ…?」
「やはりメドゥーサに寄生していたか」
飛香はジューメツを未来…に寄生したブレートに向けたままで、ブレートは会話をしながらあっという間にワクチンを完成させた。
「…さて、ワクチンが完成した…この身体が好意を寄せている対象…聖刃にこれを届けなくてはいけないからな…」
「…何が目的だ?」
ブレートが飛香の横を通る際、耳元で飛香は問うた。
「んんっ…今はまだ…その時では無いので…にしても…人間不信は…未だ健在なんですね」
人格を再び入れ替え、飛香に言葉を投げた後、未来は聖刃のもとへと向かった。
「…お前のせいだろう」
飛香は、ブレートに対しそう呟いた。
その声はブレートに聞かれていたかはわからない。
「あー、そろそろ手がやばいかもな…」
「じゃあ足使えよ」
「あのなぁ…俺まだ疲れが取れてないんだぞ…」
「あ、そっか。じゃあここはオレが何とかするから、オマエはあの女の帰りを待ってろよ」
聖刃は悪いな、と言い残し、その場から退いた。
そして逃げ惑っている舞と合流し、隠れながら未来の帰りを待つ。
そのタイミングで未来がワクチンを持って戻って来た。
「聖刃さん、これを。」
「思ったより早いな…ありがとう!これで…ってどう使うんこれ?」
「あぁ…これを投げるとスチームが蔓延するんですけど、それが少女達の身体をゾンビにしている細胞を分解して…あ、その人間をゾンビにしてしまう細胞ってのがまだ解明されてないんですけど、私はこの細胞を…いや、厳密にはこの細胞は細胞では無く実はこれウイルスなんですね。で、そのウイルスの名前なんですけど、解明されてないので私が勝手にそう呼んでいるだけなんですけどその名前ってのがですね」
「…うん、とりあえず投げれば良いんだな!?」
未来の説明を払い除け、受け取ったワクチンをゾンビ達の集まる方へと投げる。
すると説明通り、スチームが辺りに広がり、先程まで騒がしかった大広間がシーンとなった。
スチームが晴れると、そこには倒れた少女達がそこにはいた。
しかし、唯一立っている少女が一人。
「オイ!何かするなら何かしら言えよ聖刃!死ぬかと思ったぞ本当に!」
「…あ。ごめん」
どうやら、愛もスチームに巻き込まれていたようだった。でも、どうやらゾンビから人間に戻す事は出来たようだ。
「良かった…。」
舞は安堵によりその場に倒れ込む。
聖刃もゴルゴーンとの戦いの際の疲れがここでどっと現れ、その場に倒れた。
その様子を見た愛が焦って聖刃の方へと駆け寄る。
「オイ!?聖刃!?しっかりしろって!」
愛は聖刃を抱き抱え、身体を揺らす。
「…いや死んでないから。疲れたんだよ。」
身体を揺らされた事により、聖刃は目を閉じたまま愛にそう言った。
そして聖刃はそのまま眠った。
「何だよ…驚かせやがって…」
「じゃあ…聖刃さんは私が部屋に運ぶので、貴女は休んでいて下さい…」
「…嫌だね、オレ、オマエの事嫌いだし」
愛は聖刃を抱き抱えたまま未来の提案を拒絶した。
「あら、そうですか…まぁ良いです。聖刃さんも、多分私に運ばれるより、貴女が運んだ方が聖刃さんも安心するでしょうし。」
そういうと、未来は何処かへと歩いていった。
愛は、自分が運んだ方が聖刃が安心する、と言われ少し動揺していた。
「そ…それって…どーゆー事だ…?んぁあもう!オレやっぱアイツ嫌いだぁぁ!!!!」
そう言いながら愛は聖刃をおんぶしてマイルームへと運んだ。
「あれ、愛ちゃん。私も運んでほしーなー?」
「オマエは意識があるだろ。自分で行け。」
「愛ちゃんって本当聖刃さんに対しては優しいよねー…好きなの?」
「すっ…!?そ、そんな訳ねーだろ!オレには兄貴っていうちょーカッコいいヤツがいるからな!こんな女みたいな見た目してるヤツの、どこが…!」
好きなの?と言われ顔を愛は赤らめ、口では全力で否定し、聖刃のマイルームへと走っていった。
「…やっぱり好きなんじゃん。」
起き上がりながら、舞は愛に聞こえないようにそう言った。
「ふう…コイツ軽いなーホント。本当に男か?」
聖刃をマイルームのベッドへと運んだ愛は、自身も疲れたので聖刃が寝ているベッドに座り込み、休憩する。
「にしても何でみんなゾンビみてーになっちまってたんだろーな?あの女が仕組んでた…なんて、あり得ねーか」
そう言い、ふと辺りを見渡す。
誰もいない事を確認し、愛は寝ている聖刃の隣に横になる。
近くに聖刃の顔がある。すごく恥ずかしくなった。誰もいない事を確認したが、本当に誰にも見られてない事を祈った。
「…お…オレらしくねーな、こんな事…へへへ…」
そう言い、愛は照れながら身体を起こす。
さて、自分もマイルームに戻ろうと聖刃のマイルームなら退室する。
「何やってたのかな愛ちゃん?」
「うわぁあ!?舞!?何でここに!?」
何故か扉の外に舞がいた。
愛は思わず声を上げて驚いてしまった。
「い…いや…?ただ聖刃をベッドに置くのが大変でよー…時間かかっちまった」
「へぇ…?そうなんだねー?」
「何だよその顔!別に何もしてねーから!」
「愛ちゃんったら…こっそりキスくらいしちゃえば良かったのにー。」
「キっ…!?ばっ…ばぁっかやろーーー!!!!」
「あはは!」
愛は悪い子な舞を本気で追いかけた。
捕まえたら殺す、そんな勢いで。
しかし舞はそんな親友、愛の様子を楽しんでいた…悪い子ですなぁ。
そんなこんなで、舞は愛にあっさりと捕まり、愛のマイルームで割と本気で長めの説教を食らったのだそうだ。
リーダーの飛香は、未来に寄生したブレートを警戒し、常に監視カメラの映像を見ていた。
そんなブレートは今、研究室にて何かをしている。カメラの画質が悪いので、何をしているかまではわからない。
「…ん?」
研究室に、突然着物を着た少女が幽霊のように現れた。
しかし、飛香はその少女を過去に見たことがあった。
「この娘は…あの時の…あぁ、そうか。彼女はブレートの味方だったな。この地にブレートが戻って来たのなら、彼女が現れるのは必然か」
…と、飛香一人だけ納得した。
その後、着物を着た少女が監視カメラに気付き、自身が持っていた刀で監視カメラを破壊した。
それにより、研究室の状況を把握出来なくなった。
「…別にカメラを壊す必要は無かったのに」
「でも、見られてるとマズイのでしょう?なら早めに破壊しておいた方が良いでしょう?」
「…君は本当に俺の味方をしてくれるな。」
「それはそうよ。あなたは知らないかも知れないけど、私はあなたと数百年も共に時を過ごしていたのよ?」
「数百年…俺がまだ呪いという概念だった時から…か。」
「そうよ。私はあなたがどんな事をしようとも、私はあなたの味方だからね…『シュメルツ』。」
「俺をそう呼ぶのはお前だけだよ、桜智夜。」
少女の名前は愚神桜智夜。
かつて、数百年前に『シュメルツ』を与えられ、現代においてとある少年に『シュメルツ』を押しつけ、復讐を果たそうとした者である。




