第七話 ソロ最強、武器を新調する。
「早く!逃げろ!」
メイナは、家の自室で眠りについていたが、その声で目を覚ます。
「ん…何……?」
重い体を起こし、窓から外を見る。
そこでメイナの目に映ったのは——
「えっ……あれって、ミノ…タウロス…?でもあの色…」
牛人。
その名の通り、牛が立ち上がったような見た目のモンスター。
しかしそんな可愛いものではなく、手には巨大な棍棒を持ち、大抵の人間が聞くだけで固まってしまうほどの大きな威嚇声を発する。
そもそもその体の大きさは軽く3mを超え、個体によっては4mから5mにまで到達するほどの大きさのものもいる。
それゆえ上位種のモンスターとされており、ダンジョンでも普通は中層から下層にかけてでしか見ることがない。
しかし、今回はイレギュラーの中でも、上層に現れたのとは訳が違った。
「なんでミノタウロスが地上に……!?」
メイナは慌てて服を着替えて、アーマーを纏い、手に大きな杖を持つと外に駆け出した。
おそらく今頃、ギルドから全冒険者に、ミノタウロス討伐の強制任務が発令されているはずだと思い、ギルドに向かった。
「あの!強制任務の詳細はありますか?Lv3ですから対象に入ると思うんですけど…」
「強制任務…ですか…?特にそのようなものは出ておりません。もしミノタウロスの件について仰っているのであれば、あれへの対応には既に十分な討伐隊……というか討伐者が向かっておりますので、ご心配いりませんよ。わざわざありがとうございます。」
胸の辺りに"サラ"と書かれた名札をつけた受付嬢は、微笑んでそう言った。
「えと…それはどこのパーティが…?」
「パーティ…といいますか、先ほども申し上げた通り討伐"者"ですので、ソロですね。ゼノ・クラウディアという冒険者が、ちょうどうちのギルド長に用があってきて、そのままこの上のフロアの部屋に泊まっていたのです。ですので彼に討伐をお願いしました。」
「ゼノくん…なるほど。それなら安心ですね。ありがとうございます。」
「ゼノくん………あ、もしかして、メイナ・フォールさんではないですか?」
「え、私のこと知ってるんですか?」
「実はわたし、ゼノ・クラウディアの元専属指導員だったんです。その縁でいつも彼には任務のこととか聞いていたんですよ。だからあなたが潜入先のパーティの有能なリーダーさんだったっていう話も、とっても優しい人だって話も、たくさん聞いていますよ?」
「え、えと…ゼノくんがそんなことを…?」
「ええ。それはもう。いい人に巡り会えた、彼女とならもう一度パーティを組んでみてもいいかもなんて不覚にも思ってしまった…そう言っていましたよ。」
「ほ、ほんとで…」
「サーラーさーん?そんなこと一度も言ってませんよね?いい"パーティ"に巡り会えた、"彼ら"とならもう一度パーティを…とは言ったけども。」
「もー、似たようなものでしょう?細かいわね。」
「全然違います!メイナ、悪いな。」
「う、ううん…それはいいんだけど……その、私たちとならパーティを組んでみても…って件、あれは本当に思っていることなの?」
「……言ったろ?不覚にも思ってしまったんだ。」
「じゃあ…」
「でも、やっぱりすぐには無理かな。もう少し一人で考えたい。それに俺には絶対にやらないといけないことがあるんだ。それにみんなを巻き込むわけにはいかない。」
「そ……っか。でも、一応考えてはくれてるんだよね?そのやらないといけないことっていうのが終わった時、私たちの仲間になってくれること。」
「まあ…な。みんなならいいかもって正直今も思ってるよ。」
「ほんと!じゃあ、待ってるから。いつかきてよ。」
「……検討しとく」
「うん!」
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「セナさん……急に呼び出されたからダンジョンに潜るのかと思えば、ここ商店街じゃないですか。何するんですか?」
ゼノは今、例の緑龍討伐の際に共に戦った、セナ・エイライトに呼び出され、街の中心部に位置する商店街の入口にきていた。
「ギルドに行ったらいきなり肩掴まれて矢継ぎ早に集合場所と時間だけ言われて去られる……怖すぎですよ。」
「ごめんてー。でも、あんな公の場で私が堂々とキミに話しかけてたら、キミが気まずい思いするかもじゃん?私がカサベルの姉だってことは知れ渡ってるし、キミの過去についてもみんな知ってるからね。」
「うっ…それは確かに……ありがとうございます。」
「よろしい。それで今日の要件だけど、キミのこの前の戦い振り返ってた時、キミの武器があからさまにオンボロだったのを思い出したの。だから武器の調達を手伝ってあげよっかなって。」
「ああ、あれですか…まああれギルドの初期の支給品引っ張り出してきたやつなんで…」
「なんでまた。キミの刀、結構いいやつじゃなかったっけ?アウヘル内でも結構話題になってたよ?すごい刀だーって。」
「そうなんですけどね。実は前に潜入捜査した時、潜入先のパーティに肩入れしちゃったんですよ。そのパーティは無実だから、逃がしてから報告しようって。それでそのパーティだけに自分の正体明かしたんすけど、それを部屋の外でハウスの他のパーティが聞いてたんですよね。」
「ははあ…それで、キミのこと倒そうとしてそのハウスから刺客が送り込まれたと?」
「刺客というか……メンバーほぼ全員ですね。その盗み聞きされてた時すぐに仕掛けてこなくて、その理由がハウス総動員で俺のことを倒そうとしたからだったっぽいんですよ。」
「なるほどねえ…え、てか武器の話どこ行った?」
「ああ、それで、そのハウスの中に腐食系の魔法持ってる奴が一人だけいたんですよ。ユニーク魔法で。ナメてた結果そいつにまんまと刀腐らされまして…」
「なにしてんの…てかトップ10に入ってたようなハウスが総動員でキミのこと倒しにきて?なんでそれでナメて戦えるの…」
「だって弱いから」
「私も言ってみたい台詞だわそれ。まあいいや。とりあえずそういうことなら、やっぱり刀買った方がいいわよ。キミのことだからどうせ鈍だろうとなんだろうと俺なら勝てるとか思ってるんでしょうけど、やっぱいい武器使うに越したことないわよ?」
「いや流石に俺もそこまで思ってませんよ。ただ、この前セナさんが全部置いて行った緑龍の戦利品、あれの中に爪があったじゃないですか?元専属指導係だった受付嬢さんに勧められて、それだけは武器にすることにしてとっておいたんです。だから、Levelをあと4さっさとあげて、鍛治スキルを手に入れようかと…」
「え…………本気…?」
「え、本気ですけど。どゆことですか?」
ゼノが真面目な顔で答えると、途端にセナは声を上げて笑い始めた。
「キミ……キミ、ほんと面白いよね……っ!武器屋さんに頼めばいいのにさあ…っ!ほんと…あっははは!」
「え、武器屋に頼めるんですか?素材持って行ってこれで武器作ってくださいって?」
「そうだよ。まあただ完全なオーダーメイドだから少し高くなるけど。でもキミならそれくらい大使的にすることでもないでしょ?どうせ収入もすごいんだろうし。」
やっと笑いが落ち着き始めたセナが答える。
「収入云々は相場を知らないのでよくわからないですけど、まあ普通の市販の武器より高くなるかなってくらいなら全然払えますよ。」
「よし。じゃあ行こうか。発注しに行こ」
「あ、えと…まさかこんなことになるとは思っていなかったので素材持ってきてなくて……とってくるのでしばらくそこのお店とかで待っていてもらえませんか?」
「わかった。じゃあ待ってるわ。」
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「ごめんなさい、お待たせしました。」
「いーえ。じゃあ、行こっか!」
「はい。」
二人はしばらく歩き、一軒の武器屋に入った。
「すみません!セナですけど。今日は後輩の武器を作ってもらいにきました」
「おお、セナちゃんとその後輩……って、き、鬼剣!?」
「ど、どうも……ゼノ・クラウディアです。」
「セナちゃん…よかったな。ちゃんと話せたのか。」
「はい。たまたまダンジョンで出会して。」
「そうかそうか、よかったな。」
ゼノは、このドワーフの鍛治師が自分たちの事情を知り、その上でセナと自分がカサベルとのことについてけじめをつけられたことを喜んでくれているんだと悟った。
「それで、武器を見にではなく、作ってもらいに、と言っていたな。何か素材があるのか?」
「あ、はい!ゼノくん、見せて。」
「はい。えと、これ……緑龍の爪なんですけど、これで刀を作って欲しくて…」
「おお……!ここまで立派な素材持ってくる冒険者も久々だな。最近はゴブリンの角で短剣を作ってくれとか意味わからんこと言ってくる奴が多いんだ。そんなもんやわすぎて一瞬で折れてしまうぞなんていつも言っている…」
「ガイラスさん、できそうですか…?」
セナが少し不安げな顔で尋ねる。
「ああ……一応作れることには作れるが、刀はこの素材なら最適な武器ではないぞ。こいつを使うならネックアーマーとかの細長い防具か、あとはそうだな…武器なら先刃刀とかの方が適してる。」
「先刃刀……それはなんでですか?」
「要は、この爪は打撃にはあまり強くないんだ。この素材の利点は、魔力を通さない…つまり魔法で壊れることがないということと、削った時の鋭さにある。代わりに強度がそこまで高いわけではない。刀の刃に使うと、どうしても薄くせざるを得ない分壊れやすいんだ。その点先刃刀なら、先端の部分に人部が集中する分、刃の切り口以外の部分を大幅に分厚くして、壊れにくくできるんだ。」
「なるほど…もしネックアーマーにした場合は魔法で壊れない防具が作れると。」
「そうなるな。まああと先刃刀を作る分には、あまり多く使わない。ネックアーマーと合わせて作ることもできるぞ。」
「本当ですか!?」
「ああ。それに先刃刀ならリーチが長い分、慣れてタイミングを掴むことさえできれば、魔法を打たれた時に刃部で薙ぎ払える。これから最深部にもっと潜るんであれば魔法を使うモンスターも急増するからな。結構役に立つとは思うぞ。」
「ここまでいいところをたくさん聞かされたら、選択肢無くなっちゃうね?」
笑いながらセナが言う。
「ほんとですね…じゃあ、先刃刀とネックアーマー、お願いしてもいいですか?」
「任せとけ!1週間くらいで出来上がると思うから、それくらいした時に取りに来てくれ。お題もその時で構わないからな。」
「はい!じゃあ、よろしくお願いします!」
「おうよ」
ゼノはガイラスに素材をわたし、セナと共に店を出た。
今回は少し長めでした!
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