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四つ


 テレビ出演も快く受け入れ、お兄ちゃんの人柄もあってか、どんどん人気は上昇していった。

 忙しくなって来るのが、嬉しくて、楽しくて。


 けれど、それに連れて、お兄ちゃんに疲れが溜まっていくのもまた、当然のことではあったろう。

 気付いているべきであった。気付いているはずであった。

 頭の中にshouldが充満していく。

 なぜ、気付いていなければならなkったのに。


 心も体も悲鳴を上げているだろうに、平気な顔をして尚もお兄ちゃんは笑う。

 それは最早、彼の才能とも呼べた。



 才能もなければ、才能がないと諦めるほどの努力も重ねていない。

 只管に、夢中になって、限界までお兄ちゃんを追い掛けていた。結局、限界までであるのが僕であるのだから、追い掛けても追い掛けても距離は縮まらない。

 それどころか、遠く離れていくのだ。

 限界を超えている人を限界で追い掛けているのだから、離れていくに決まっている。


 いつしか手を伸ばすことも叶わないところへまで、あなたは行ってしまった。

 優しく微笑むあなたの瞳は、何を語っているのだろう。

 憂いを映すその瞳の色の意味が、知りたかったし知りたくなかった。


 あなたは実力だけで全てを手に入れた。

 そんなあなただから、力だけでは手に入らないものというものを、知ってしまっているのだろう。

 本当に大切なものというものも、知ってしまっているのだろう。


 お兄ちゃんは、人間の本質を見抜く力さえ持っているようだった。

 ずっと隣で見ていた僕には、その瞳に映る色が僅かに変わっているのが、ほんの僅かに揺れているのだということが、わかってしまいそうだった。

 わかりそうで、怖かった。


 わかってしまっては、辛さを共有しなければならない。

 嬉しいことにあるに違いないのだろうが、堪らなく怖いことである。


 頂点に立てば、全てが見えてしまう。

 僕にはその状況を望むことなど不可能なのであった。


 それに、わかっていたんだ。

 努力と愛で登り詰めて来たあなたが、目指すところを越えて上った場所で、振り向いたら……だれもいなかったことに孤独を抱いたのだ。

 瞳がひどく空しくそれを訴えていた。


 守れない代われない、共有する覚悟もない。

 これが僕がお兄ちゃんに嫌われるところなのだろうか。

 好きなのに、嫌われちゃうのは、そういうわけなのだろうか。

 弱い僕で、ごめんなさい……。




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